2020年09月27日

「ゴーマニズム戦歴」小林よしのり

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1992年、「ゴーマニズム宣言」という漫画で言論界に切り込んだ小林よしのり。
皇室、差別問題、オウム真理教事件、薬害エイズ問題、従軍慰安婦問題、戦争論、天皇論・・・・。
片っ端から斬り込んでこられましたね。
漫画家という立場で、そして漫画というジャンルで、このような活動ができるのだと、ある意味新しいジャンルを開拓されました。
大学教授だの評論家だのいう人たちの書いた硬い本なんか手に取らない人たちも、漫画なら読みます。
「世界」(岩波書店)、「中央公論」(中央公論新社)、「正論」(産業経済新聞社)、「諸君!」(文藝春秋 すでに廃刊)などなど、こんな雑誌を購読している人なんて周りで見たことない。(笑)
でも「SPA」や「SAPIO」に連載されている漫画ならかなりの人が読む。
というわけで俄然注目を浴び、若い人たちをも引き寄せたんですね。
もちろん氏の意見には賛否両論あります。
あって当然です。
ただ私はかなりの部分で賛同できます。
特に日本人の自虐史観については、これはよくぞ描いてくださったと。
なんで日本人ってこんなに自分の国の歴史や文化を自虐するんでしょうか。
謙虚や謙遜は日本の美徳ですが、それと自虐はまったく違います。
国歌を否定する。
国旗を否定する。
こんなアホな国世界中探しても日本だけですよ。
国の歌、国の旗に敬意を表するどころか否定するなんて。
以前に式典で「君が代」を歌うのはけしからんと主張した団体がありまして、じゃあどうするのかといえば「ハレルヤ」にしろと。
もうアホかと。(笑)
なんで日本の式典で外国の歌を歌わにゃならん。
つーか、「君が代」の意味、「ハレルヤ」の意味を知っているなら絶対にこんなバカな発想は出てこないはずなんですが。
こういう連中はなにがなんでも否定ありきなんでしょうね。
従軍慰安婦問題にしても日本はなんら卑屈になる必要はないんです。
そういうことをきっちりと主張しておられるのは私にとっては実に心地よい。
もちろん異議も多数あるでしょうから、いつまでたっても落ち着かないでしょうけどね。
しかし著者の小林よしのり、デビュー作の「東大一直線」を描いておられた頃からは想像もつかない漫画家になられましたね。
いまや日本に物申す論客です。
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2020年09月25日

「喧嘩猿」木内一裕

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時代は幕末。
ペリーの黒船が来航した頃のこと。
といいましてもこの小説の内容にはそのような幕末感はないのですが。
主人公は森の石松。
清水の次郎長の子分として有名な人物ですが、この小説はそれ以前の少年時代の石松の物語です。
黒駒の勝蔵という人物に左目をつぶされ池田鬼神丸という名刀も持っていかれた石松は、傷も癒えぬうちに故郷を飛び出し後を追います。
旅の途中で武居の吃安というやくざと出会い、いよいよ勝蔵のもとへ・・・・。
やはり読ませてくれましたね、木内一裕。
これは作者にとって7作目の作品であり、初の時代小説。
解説によりますと昔の講談本を手本にされているとのことで、昔の字体を使った漢字が多用されており、また文体も同じく。
なので最初は見た目のページの字面にちょっと引きまして、だいじょうぶかなと読み始めたのですが。
なんのなんの。
逆にこの文字使い文体あっての作品です。
ぐいぐいと引き込まれました。
石松をはじめとして、吃安にしろ勝蔵にしろ、その他の人物にしろ、実に迫力があります。
石松の無鉄砲な魅力がいいですね。
他の登場人物にしても。
いやしかしこの作者、このようなジャンルでも存分に才能を発揮しておられます。
小説家としてまったく評価されていないのが不思議でなりません。
ラベル:時代小説
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2020年09月23日

「名画は嘘をつく」木村泰司

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名画にはどんな「嘘」が秘められているのか。
「モナリザ」は世界で一番美しい肖像画といわれているが実は・・・・。
ムンクの「叫び」は誰が何に向かって叫んでいるのか・・・・などなど。
名画に対して多くの人たちがしているであろう勘違いについて、著者が真実を明らかにします。
ってなんだかすごく大層なことのようですが、読んでみてそれほどでもなかったなと思ってしまいました。(笑)
いや、実はもっとすごい真実が隠されているのだと勝手にこちらが期待していただけなのですが。
「モナリザ」にしても、そもそも誰が世界一美しいなんて言ってんのって話です。
レンブラントの「夜警」も実は夜ではなく昼の場面だといわれても、へぇそうなのと。
ターナーの「戦艦テメレール号」は夕陽に見えるが実は朝陽だとか。
はあ、そうですかと。
えっ、と驚くほどのことではありません。
ただそうやって解説されないとわからないことではあるので、なるほどと感心はしますが。
まあ絵画版雑学の本といったところでしょうか。
当然のことながらオールカラー。
文庫本ではありますが、画集としても楽しめます。
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2020年09月19日

「製鉄天使」桜庭一樹

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東海道を西へ、西へ、中国山地を越えて、さらに下ったその先、地の果てみたいな、日本の最果て・・・・鳥取県赤珠村。
そんな村の経済を支える名家の製鉄会社赤緑豆製鉄の長女が赤緑豆小豆。
バカお嬢と呼ばれています。
ヤンチャですでに中高生にも名前を知られた小学生ですが、中学に入ってボコボコにされます。
しかしふざけて乗り回していたバイクの仲間がだんだんと集まり、やがては『製鉄天使』という暴走族を立ち上げ総長に。
小豆の中国地方制覇が始まります・・・・。
これは「赤朽葉家の伝説」のスピンオフ作品です。
赤朽葉毛毬が主人公である第二章の前半部分を深く書き込んでいるといいますか。
登場人物の名前はすべて変更されていますし、表現もかなりマンガっぽくなってはいますが。
まあそれがド田舎のヤンキー女を描くのに効果を発揮しています。
で、この作品にはちょっとした仕掛けがありまして、それがエピローグ以降で明かされるわけですが、これって必要だったのかな。
私は蛇足だと思いましたし、なのでこの仕掛け自体も必要ないと思ったんですけどね。
ところで鳥取県てそんなに最果て?(笑)
そういう設定だからこそ登場人物たちにとっては中国地方制圧という目標が世界制圧ほどのレベルとして描けたんでしょうけど。
さすがに日本制圧となるとこれはもう「男一匹ガキ大将」の世界になってしまい、いくらなんでも風呂敷広げすぎになってしまいますもんね。
ラベル:小説
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2020年09月14日

「磁極反転の日」伊与原新

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東京の夜空に真っ赤なオーロラが。
いったいなにが起こっているのか。
なんと地球のN極とS極が反転し始めているのです。
日々磁気が弱まっていくため遮られることのない宇宙線が降り注ぎ、人々は体にどのような影響があるのかと不安を募らせます。
携帯電話もつながらない事態が増え、電車の交通システムなどにも不具合が発生し始めます。
そして10月の東京に雪が降るような寒冷化。
そんな中、都内の病院から次々と妊婦が失踪しているという話も出始めて・・・・。
地球のN極とS極がひっくり返るという荒唐無稽な設定のSF小説です。
と思ったら荒唐無稽でもなんでもなく、実際過去に何度も磁極反転という現象は起こっているのですね。
初めて知りました。
そのようなことになったとき、我々人類はどのように反応し、対応するのか。
そして自然や人間の体にどのような影響を与えるのか。
この小説はもちろんフィクションですが、書かれていることについては実際に起きる可能性が指摘されていることと専門家でもある作者はあとがきに書いておられます。
磁気というのは空気と同じように普段意識することはないのですが、この地球上で生物が生きていくためには必須であるということも解説に書かれています
浅田柊という女性ライターを主人公にし、地磁気問題を追う中で妊婦失踪という事件にも出くわす。
SF小説パニック小説にミステリーの要素も加えられて、読者の興味を引っ張ります。
個人的には恋愛の要素を盛り込まなかったこともよかったですね。
こういうのって主人公の言動に最初は反発していた人物が登場して、しかし徐々にお互い理解して惹かれあってみたいな設定を盛り込みがちです。
そんなクサイ話がなかったのがいい。
パニック小説としてもこのような状況で怪しげな団体が登場するのはパターンではありますが、変なリーダーに洗脳される人たちがいたり妊婦を絡ませているのが庶民の弱みを上手く突いています。
妊婦はお腹の赤ちゃんのことを考えると理性よりも感情に走るかもしれない。
まあそんなこんなで、なるほどと思えるシミュレーション小説でもありますね。
ラベル:小説
posted by たろちゃん at 09:00| Comment(0) | 『い』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする