2018年08月17日

「パイプのけむり選集 食」團伊玖磨

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本業は作曲家ですが、名エッセイストとしても知られた著者。
そんな著者が雑誌連載していた「パイプのけむり」シリーズから食に関するエッセイだけを厳選したのがこの本です。
連載のスタートが1964年とのことなので、初期の作品は今から50年以上も前になりますね。
ごく身近な料理から当時としてはまだまだ一般的になっていない料理、そして海外でなければ食べられない料理まで、幅広く取り上げて語っておられます。
今では猫も杓子も食べることに能書きを垂れているわけですが、やはり当時は事情が違う。
そのような時代の中で海外も含めて幅広くいろんな料理を食べ歩き、それについてどうこう言うなどなかなか一般的にはできることではありませんでした。
やはり本気で食に対しての興味を持ち、またそれなりの立場でありませんと。
なので連載初期にはもしかしたら当時としてはちょっとハイカラな内容であったかもしれません。
だからといってこの本の内容は決して大げさなものではなく、リラックスして楽しめる食エッセイとなっいます。
新しい記事は2000年代のようですしね。
それでもやはり流行りの店や料理を追いかけるような内容ではなく、きちんとした姿勢で食について語っておられるのは見識でしょう。
ラベル:グルメ本
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2018年08月15日

「鍵のない夢を見る」辻村深月

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地方の街で暮らす女性たちを描いた5編収録の短編集。
どれもちょっとイタイ女性が主人公です。
いや、単純にイタイと言ってしまっては身もふたもなく底が浅くなってしまうのですが。
「仁志野町の泥棒」や「芹葉大学の夢と殺人」などは主人公そのものはイタくないのですが、付き合う友達や男がどうしようもないんですよね。
でもそんな相手に振り回されてしまうというか、相手のペースに呑まれてしまうあたりが結局はイタイわけで。
「美弥谷団地の逃亡者」も同じくでしょうか。
「石蕗南地区の放火」なんてのはまさしく主人公の女性がイタ過ぎです。
勘違いしている女の徹底ぶりが実にいい。(笑)
作者もなかなかシニカルです。
最後の「君本家の誘拐」にもちょっとそんなところはあるのですが、しかし育児ノイローゼだとかこれは経験した人にしかわからないものでもあり、単純に主人公の迂闊さを責めるわけにもいきません。
どれもそれぞれ無難なレベルでまとまった短編集だとは思うのですが、作者はこれで第147回直木賞を受賞しているんですよね。
そうなると「ん?」と首をかしげたくなります。
単純にこれが直木賞にふさわしいのかという疑問がありますし、直木賞受賞作というのは作者にとって代表作として今後ずっと付いて回るわけで。
そう考えるとこの作品集を作者の代表作としていいのかと。
他の作品は読んでいませんのでなんともいえないのですが。
ちょっと弱いんじゃないですかね。
これから他の作品も読んでいきたい作家さんですので、自分なりに検証していきたいと思います。
ラベル:小説
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2018年08月13日

「解体新書ネオ」永井明

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タイトルが解体新書というくらいですから、体の各パーツについて書かれたメディカル・エッセイです。
頭髪から始まりまして、脳、頭蓋骨、目、歯、内臓、生殖器、血管、血液・・・・。
とにかく片っ端から体の各パーツを取り上げ、専門的な説明をし、しかしユーモラスな比喩を駆使して面白おかしく読ませてくれます。
こういうのを専門書で読めば素人にはちんぷんかんぷんなわけですが、楽しく勉強できるのはありがたいですね。
例えば子宮の大きさは親指ほどしかないなんて記述を読んでびっくりです。
赤ちゃんが育つ場所ですから、もっと大きなものかと思っていましたが。
まあ普段はそんな大きなスペースは必要ないですもんね。
それにしても人体の不思議といいますか、メカニズムには感心します。
よくもまあこんなに完璧なものを作り上げたものだなと。
それらを維持するためにもやはり体は労わらないとだめなんですね。(笑)
ラベル:エッセイ
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2018年08月11日

「空に唄う」白岩玄

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23歳の海生の家はお寺ということで、海生も新米のお坊さんです。
住職である祖父に付いて初めてお通夜を務めることになるのですが、遺影を見ると故人は若い女性のようです。
その女性が棺の上に腰をかけています。
びっくりする海生。
どうやら海生以外の人には見えないらしい。
その後も度々海生の前に現れる女性には行く場所がないようです。
放っておくわけにはいかず、海生は彼女(碕沢さん)に寺に住むよう提案します。
日を追うごとにだんだんと彼女に惹かれていく海生・・・・。
作者は「野ブタ。をプロデュース」でデビュー。
芥川賞候補になりテレビドラマ化もされ、話題になりました。
しかしデビュー作が大きすぎたせいか、正直その後はあまりぱっとしない印象です。
さてデビュー2作目はどんなものかと読んでみたのですが。
いいじゃないですか。
ファンタジーということになるんですかね。
幽霊と同居という非現実的な設定ではありますが、それを変におちゃらけた方向に持っていっていないのがいいですね。
同い年の彼女を「碕沢さん」とさん付けで呼び、ずっと敬語を使い続ける海生の真面目さがいい。
幽霊である碕沢さんにはこの世での生活にいろいろと不便があります。
海生の声以外の音は聞こえない。
物を動かすことができない。
ドアを通り抜けたりすることもできませんので、一人で部屋の出入りができない。
そんな不自由な碕沢さんを不器用ながらも一生懸命に支え、喜ばせようとする海生の健気さがいい。
地味ですがしみじみと感動できる恋愛小説です。
収穫でした。
ドラマにしてもいけるんじゃないでしょうか。
ラベル:小説
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2018年08月09日

「キネマの神様」原田マハ

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国内有数のデベロッパー(再開発企業)に勤める歩は39歳の独身女性。
巨大再開発プロジェクトの計画立ち上げに関わり、シネマコンプレックスを中心とした文化・娯楽施設担当課長に抜擢されます。
しかし業者と通じて職権乱用しているとの身に覚えのない噂が流れて左遷の辞令。
歩は辞職します。
同時期、映画好きでギャンブルが生きがいの父が倒れ、多額の借金も発覚。
医療費、借金の返済。
年収1000万の大手企業課長の娘に両親はそれとなく期待するのですが、いまや無職の身です。
それをなかなか言い出せなくて。
ある日、父が映画雑誌のブログに歩の文章を投稿するのですが、これがきっかけで歩は編集部に採用され、また父の文章が面白いとブログで連載することに。
ここから歩や父親の生活は想像もしなかった展開になります・・・・。
デベロッパーの女性課長という設定は以前に読んだ作品にもありましたね。
この設定がお好きなようですが、マンネリです。(笑)
さて、この小説はタイトルからもわかるように映画をモチーフとした作品です。
そこにブログというツールを取り入れて、これは今どきの設定ですかね。
ただちょっと感覚がズレているのが気になりましたが。
こういうのを取り上げるときは、ほんと最先端の感覚でないとつらい。
腐臭が鼻についてしまいます。
それはそれとして、父親の記事に対してローズ・バットという謎の人物がコメントするというやりとり。
これが話を盛り上げます。
登場人物の、そしておそらく作者の映画への思いが存分に込められています。
映画をモチーフにしつつ、家族、なにより映画好きな男同士の友情が熱く語られています。
ちょっと甘い話ではありますが、わくわく感動しつつ読みました。
ラベル:小説
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