2020年04月03日

「人もいない春」西村賢太

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短編集です。
6編収録。
主人公はおなじみ北町貫多。
名前からもわかるように作者の分身ですね。
表題作では貫多は製本所に勤めています。
中学を出て2年ほど。
日払い週払いの仕事で凌ぐその日暮らし。
ろくでもないくせにプライドだけは高い貫多は、仕事でミスを注意された職工に恨みを持ちます。
ある日の昼休みに気の短い貫多は、その職工に「能なし」などの啖呵を切ります。
その結果はもちろん仕事の契約打ち切りで。
こんな調子で、しかし自分を正当化して日々暮らしていく貫多です・・・・。
いつものごとく作者をモデルとした北町貫多のシリーズです。
小心者のくせにプライドだけは高くキレやすい。
なのでモテないくせに奇蹟的に同棲してくれている秋恵にはボロクソです。
毎度同じパターンなんですけどね。
マンネリといえばそうなんですけど、でも読ませられてしまいます。
今回、「悪夢 ― 或いは「閉鎖されたレストランの話」」というのがありまして、これは擬人化したネズミを主人公とした話です。
いつもの私小説とは違い、なんでこんなのを書かれたのかわかりませんけど。
寓話的な雰囲気の話ですね。
まあいつまでも北町貫多というわけにはいかないでしょうから、このような試みもいいかと思います。
あまりらしくないですけどね。(笑)
ラベル:小説
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2020年04月01日

「食堂つばめ4 冷めない味噌汁」矢崎存美

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シリーズ第4弾です。
連作短編5編収録。
表題作は「冷めない味噌汁」です。
俊太郎はサラリーマン。
サービス残業、休日や夜中の呼び出しは当たり前。
何日休んでいるんだか何日寝ていないんだかの日々です。
いわゆるブラック企業ですね。
過労が原因で倒れ、生と死の中間にある町の道端で目覚めたのですが。
そばにいたのがノエという女性。
朝食の用意をしています。
いただいたのが白飯、アジの開き、だし巻き玉子、納豆、海苔、青菜のおひたし、味噌汁。
この味噌汁の味が俊太郎の好みにぴったりで、いつまでたっても冷めません。
どの料理も懐かしい味で美味しい。
もしかしてこのノエという女性は自分の母親ではないのか。
そんな思いまで抱かせます・・・・。
うん、まあ。
シリーズとして話全体が前に進んでいないのがなんともダレた気分になります。
毎回あの世とこの世のあいだの町に人がやってくる。
食堂つばめでメシを食べる。
もとの世に帰っていく。
これだけではね。
やはり物語全体が前に進んでほしい。
主人公(?)の柳井秀晴なんてもうこの町に居ついてしまっています。
それに対しての説明も、もはやなんらありません。
おいおい、現世での生活は大丈夫なのかよと。
ただ背景が「あの世とこの世のあいだの町」という設定だけで、ちょっとぬるま湯に浸かり過ぎではないでしょうか。
それぞれの話は決して悪いものではないんですけどね。
ラベル:グルメ本 小説
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2020年03月30日

3月の一冊

今月は14冊読みました。

・「グルメの食法」玉村豊男
・「若冲」澤田瞳子
・「化学探偵Mr.キュリー3」喜多喜久
・「“食の安全”はどこまで信用できるのか 現場から見た品質管理の真実」河岸宏和
・「本棚探偵 最後の挨拶」喜国雅彦
・「サイン会はいかが? 成風堂書店事件メモ」大崎梢
・「大衆食堂」野沢一馬
・「過剰な二人」林真理子 見城徹
・「好き好き大好き超愛してる。」舞城王太郎
・「切羽へ」井上荒野
・「知っておきたい 日本の名字 名字の歴史は日本の歴史」監修:森岡浩
・「巷の美食家」開高健
・「牛乳アンタッチャブル」戸梶圭太
・「銀座バイブル ナンバーワンホステスはどこに目をつけるのか」向谷匡史

「グルメの食法」、各国料理についての解説、著者の見解が書かれています。
なるほどと思うことも多数。
「若冲」、江戸時代の絵師、伊藤若冲の半生。
作者なりの大胆な脚色で描かれています。
「化学探偵Mr.キュリー3」、化学を題材にしたミステリー短編集です。
内容的には可もなく不可もなくといったところ。
「“食の安全”はどこまで信用できるのか 現場から見た品質管理の真実」、現場をよく知る著者が業界の実態を明かして読者を啓蒙しておられます。
こういう類の本は頻繁に刊行されていますが、だからといって業界も消費者も大きく変わる気配はなく・・・・。
「本棚探偵 最後の挨拶」、シリーズ最終(?)となりました。
しかし著者のキクニさん、本業のマンガも面白いがエッセイもなかなか。
「サイン会はいかが? 成風堂書店事件メモ」、書店を舞台としたミステリー。
ミステリーとしてはちょっとどうかなという部分があるのですが、書店小説としては「書店ガール」よりもこちらのほうが先なんですよね。
「大衆食堂」、ファーストフードやファミリーレストラン、牛丼チェーンなどに押され、どんどん姿を消していく大衆食堂。
その魅力を伝える貴重な一冊です。
「過剰な二人」、個性も我もキツイ(笑)お二人の往復書簡的エッセイ。
作家の考え編集者の考えが共鳴します。
「好き好き大好き超愛してる。」、純愛の恋愛短編集(?)なんですかね。
読み終えてトータルでどう受け止めればいいのかよくわかりませんでした。
「切羽へ」、都会ではなく出来事がすぐに全体に伝わるような小さな島での話。
そんなシチュエーションでのちょっと危なく静かな男と女の機微。
「知っておきたい 日本の名字 名字の歴史は日本の歴史」、日本にはたくさんの名字がありますが、その由来はなんなのか。
誰もが考えたことのあるそんな疑問を解説した一冊です。
「巷の美食家」、美食家で大食家でもあった行動する作家の食エッセイ。
グルメを気取ったチャラい若造とは造詣が違います。
「牛乳アンタッチャブル」、雪印食中毒事件の対応を茶化した小説として途中までは面白く読んだんですけど。
でもそこから逸脱できなかったですね。
「銀座バイブル ナンバーワンホステスはどこに目をつけるのか」、内容が本当かどうか私にはわかりませんが。
でも自分の知らない世界の裏事情を知る楽しさがありました。

それでは今月の一冊の決定を。
「若冲」は読んでいて結構手応えありました。
でもあとになって印象が薄れてきたのは若冲のキャラの弱さか、物語のピントの弱さか。
「切羽へ」は染み入るものがありましたが、強く推すに至らず。
ということで、単純に読み物として楽しめた「銀座バイブル ナンバーワンホステスはどこに目をつけるのか」を今月の一冊に選びたいと思います。

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ラベル:今月の一冊
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2020年03月28日

「銀座バイブル ナンバーワンホステスはどこに目をつけるのか」向谷匡史

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夜の銀座は成功者の街だといわれています。
実業家、政治家、芸能人、文化人、それぞれの世界で名を成した人たちが集まる世界です。
なにしろ高級店になりますと座っただけで4~5万円ですから。
一時期ほどではないにせよ、そのステイタスはいまも変わらないでしょう。
そんな銀座の一流店のホステスたちは、どのように客をもてなし、稼いでいるのか。
ホステスとしてどのような振る舞いがいいのか悪いのか。
裏を知る著者がノウハウを語ります・・・・。
まず銀座なんて街は大阪在住の私にとりましてまったく縁がありません。
大阪の北新地にさえ縁がないのですから。
当然、夜のクラブ活動なんてまったくもう。
地元の駅前さえ出かけるのも億劫な出不精です。(笑)
それはともかく、読み物としてはとても楽しめました。
ホステスの実態、う~ん、なるほど、客の相手して酒飲んで店での実働は4~5時間。
そりゃラクだわな、なんて思ってはいけません。
お気楽なサラリーマン、OLなど、及びもつかない苦労があります。
一流店のトップになりますと年収1億はあるようですが、しかしそんなのは一握り。
それでなくとも出費はひと月にサラリーマンの月収くらいはあるようですし。
私にはまったく縁のない世界なので、他人事のように(他人事ですが)楽しく読ませていただきました。
ちなみにネットでもそういう世界を取り上げた動画がいくつか紹介されています。
TVの取材で放映されたらしい六本木から銀座に進出したママの動画なんてのもありましたが、調べてみましたらどうやら撤退したようで。
オーナーとして銀座に店を出す、客として店に通う、どちらもステイタスですが、なかなか難しいようですね。
会社の経費も使えなくなりましたし、成金も減りましたし、そうなると店も維持できない。
若い連中もいまさらそういう場所を有り難がらなくなってきたというのもあるんじゃないでしょうか。
厳しい時代です。
でも私には縁がないながらも、こういう店はぜひ続いていただきたいと思います。
これもまた文化でしょう。
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2020年03月26日

「牛乳アンタッチャブル」戸梶圭太

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雲印乳業西日本支社お客様相談センターの電話があちこちのデスクで鳴り始めます。
低脂肪乳を飲んだ人たちが食中毒をおこしたのです。
相談センターはパニックに陥りますが、上層部は暢気に構えています。
やがてただ事ではないとなり、ようやく社長をはじめとした幹部たちが記者会見を開くのですが、のらりくらりと言い訳ばかり。
しかし役員の中にはまともな人物もいて、このままでは会社がつぶれてしまうと立ち上がります。
現在のろくでもない幹部連中や食中毒事件に関わった連中の首を片っ端から切るための特別調査チームを作ったのです。
まずチームは食中毒を出した大阪工場に乗り込むのですが・・・・。
元ネタは平成12年の雪印集団食中毒事件です。
社長の迷セリフ「私は寝てないんですよ!」もきっちりと挿入されています。(笑)
笑える箇所もいろいろありそれなりに楽しめましたが、話自体は別にどうということもなく。
大まかな筋はオリジナルじゃありませんしね。
そして登場人物が多すぎ。
話の筋にあまり関係のない人物やら、特別調査チームにしても米倉や萩尾なんてキャラ的にたいして仕事をしていません。
まあチームというからにはある程度人物を用意する必要があったのでしょうけど。
役員たちのキャラはまずまず面白かったですけどね。
最後もなんだか拡げた風呂敷をむりやり畳んだような印象。
カタルシスがありませんでした。
ちょっと散漫すぎましたかね。
ラベル:小説
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