2020年11月29日

11月の一冊

今月の読書は10冊。
かなり少ないひと月となりました。
なんでかなぁ。
分厚い本があったせいですかね。

・「活字たんけん隊 めざせ、面白本の大海」椎名誠
・「黄色い皇帝」芝木好子
・「お家賃ですけど」能町みね子
・「時計台の文字盤」源氏鶏太
・「カモイクッキング くらしと料理を10倍楽しむ」鴨居羊子
・「誰もいない夜に咲く」桜木紫乃
・「日本の食材 おいしい旅」向笠千恵子
・「だいこん」山本一力
・「K氏の大阪弁ブンガク論」江弘毅
・「あの日のあなた」遠田潤子

「活字たんけん隊 めざせ、面白本の大海」、いろんな本の紹介です。
私とはまったく嗜好が違うので、それがかえって新しい世界に目を向けさせてくれます。
「黄色い皇帝」、蝶の収集という私にとっても未知なジャンルですし、小説としてもなかなかないんじゃないですかね。
その世界に賭ける一途さの描写はやはり芝木好子です。
「お家賃ですけど」、このようなアパートや生活がいまだあるんだと。
著者にとってはいい経験であり思い出でしょうね。
「時計台の文字盤」、結婚相手が処女ではなかったということで巻き起こる騒動。
今では考えれませんね。
「カモイクッキング くらしと料理を10倍楽しむ」、タイトルと内容がいまいち一致していない気もしますが。
でも食についてはたしかに小難しい理屈ではなく好きに楽しみたいですよね。
「誰もいない夜に咲く」、どの短編も地味で暗い話ではあります。
が、誰にでも人生はあるんだという当たり前のことを認識させられます。
「日本の食材 おいしい旅」、食の安全はどこにあるのか。
著者のような人がいろんな生産者を紹介してくださるのはありがたい。
「だいこん」、一膳飯屋を商う娘の物語。
歯切れのいい文章で人情を描くのはさすがの山本一力。
「K氏の大阪弁ブンガク論」、キャラ的にイタイ部分もある著者ですが、しかし大阪に対しての愛情はひしひしと感じられます。
ただもうちょっとテンション下げてほしいなと。
「あの日のあなた」、父と息子の物語であり、父もひとりの男なんだなと。
息子がちょっといい子過ぎかな。

では今月の一冊ですが、やはり芝木好子、山本一力は常連で候補に挙がってきますね。
ほんとに味わえる作家さんです。
ですが今回、どちらもやや難ありな読後感でした。
そんな中、桜木紫乃「誰もいない夜に咲く」が地味ではありますが、じんわりときましたね。
今月はこれを選びましょう。

CIMG3729.JPG
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | 今月の一冊 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年11月27日

「あの日のあなた」遠田潤子

CIMG3734.JPG

大学生の片瀬在は2年前に母を亡くしてから父と二人暮らし。
他に肉親はいません。
そんな唯一の肉親である父が突如交通事故で亡くなってしまいます。
生前に弁護士が預かっていた遺言書には「葬式不要、戒名不要、弔いごと一切不要」とあり、戸惑う在。
そして子供のころから立ち入り禁止だった父の書斎で遺品の整理をしていると、母ではない女性の名前と自分の名前が書かれた母子手帳を見つけてしまいます。
この女性は誰なのか。
なぜ知らない女性の母子手帳に自分の名前が書かれているのか。
しかも日付は自分が生まれる6年前。
混乱する在。
父は“聖域”だった書斎にいったい何を隠していたのか・・・・。
この作者は以前に「雪の鉄樹」という作品を読みまして、ぜひ他の作品も読みたいと思っていました。
本作を読みまして、ちょっとパターンがダブっているなと。
どちらも父と子の話でもありますし、主人公や登場人物たちが背負っている「過去」がなんであるのかという謎を引っぱるというのも同じくです。
言い訳もせず黙って業を背負いながら生きていく男。
そしてそれらの謎が明らかにされたとき、それまでの曇天の毎日に陽が差すような再生のラスト。
どちらも単独で読めば非常に読みごたえがありカタルシスもあるのですが、ちょっと似通ってしまいましたね。
これがこの作者のテーマといわれればまあそうなんでしょうけど。
それはそれとしまして、父の行動は賛否両論あるでしょうね。
ひたすら一途とは言えますが、取りようによっては虫が良すぎる。
女性読者の感想も知りたいと思いました。
ラベル:小説
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | 『と』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年11月24日

「K氏の大阪弁ブンガク論」江弘毅

CIMG3733.JPG

著者は関西のローカル情報誌「ミーツ・リージョナル」創刊から携わり、12年間編集長を務めた人です。
関西で「ミーツ」といえば特にグルメ情報には定評があり、他のミーハーな情報誌では取り上げないような店なんかもよく紹介しておられました。
そしてなんといっても「街」をテーマにしておられたので、飲食店に限らずきっちりと地元の愛されている店なんかを紹介しておられるあたりに足場の確かさを感じました。
私も著者が編集長をしておられた時代には購読してましたね。
最近はまったくですが。(笑)
で、本書はそんな著者が大阪弁とブンガクについて語った本です。
大阪を舞台に大阪弁で書かれた小説を取り上げて、著者があれこれと解説しておられます・・・・。
なるほど、ちょっとなかったかな、こういうの、と。
ただ私の感想では、「大阪弁ブンガク論」というよりも「文学に見る大阪弁論」だと思いましたが。
だって文学について語っているのではなく、あくまで大阪弁の使い方や表現について語っておられるわけで。
あるいは風俗とか。
まあそのあたり「文学」ではなく「ブンガク」と上手くかわしておられますけども。
で、K氏という人物の言動を紹介しつつという構成なのですが、イタイですね。(笑)
もちろんK氏というのは著者です。
なんで一人称にせず三人称なのか。
その理由についてはあとがきに書いておられますけども。
ですが自分のことをK氏と書くイタさを思います。
で、これは著者のインテリジェンスによるものなのでしょう、やたら表現がまわりくどくよくわからん言葉や言い回しが出てきます。
カタカナ言葉なんかも。
「エクリチュール」がどうこうなんて、なんで普通に日本語で書けないのか。
その割には自分は岸和田バリバリだと主張しておられる。
大阪弁、岸和田弁を語るのなら、「エクリチュール」なんて言葉は使わないでほしい。
世間の風潮でもそうなんですけど、最近こういうカタカナでやっつけてやろうという風潮ないですか?
「コンプライアンス」とか「リスペクト」とか、なんでそれらを普通に日本語で表現できないの、と。
こだわるのならとことんこだわってほしい。
とても面白く読みましたが、著者の他の著作にも感じたように、キャラがイタイですね。
「おまえ、なんもわかっとらんな!」と言われそうですけど。(笑)
ラベル:書評・作家
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | 『こ』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年11月18日

「だいこん」山本一力

CIMG3732.JPG

つばきは三人娘の長女です。
父親の安治は腕のいい大工ですが博打好き。
それが原因で莫大な借金を拵え、利子の支払いだけで精いっぱいの貧しい暮らしです。
母のみのぶは家計を支えるために蕎麦屋で働きます。
そんなみのぶを見て自分も将来このような仕事がしたいと思うつばき。
ある日江戸の大半を焼き尽くす大火事があり、つばきはみのぶと一緒に炊き出しの手伝いをします。
そのときに教えられた飯炊きでとんでもない才能を開花させます。
こんなに美味い飯が炊けるのならとつばきは火の見番小屋の賄いを任され、飯にうるさい荒くれ男どもをも黙らせました。
月日が流れ、やがて「だいこん」という一膳飯屋を浅草に開業することになります。
みのぶや二人の妹にも手伝ってもらい、飯の美味さや安さで店は大繁盛。
ですがいろんな困難も待ち構えています・・・・。
主人公つばきの成長の物語ですね。
負けん気が強く毅然としたつばきのキャラがいい。
ただそれ以外の登場人物の描かれ方がちょっと中途半端な気がしました。
父親の安治はつばきが店を始めてからはあまり出てきません。
最初に散々出てきただけに今は何をしてるんだろうと。(笑)
ま、要所要所で出てきてつばきに助言したりはするのですが。
この話は最初に現在が語られ、その後過去に戻って徐々に語られていくという構成なのですが、最初に芳三郎という貸元とつばきのあいだでやり取りがあったと語られています。
しかしその後そのような場面は出てきません。
最初に名前を出してほったらかしです。
やはりこれは重要なエピソードなのできっちりと書いておくべきでしょう。
辰吉とのことも未消化のまま終わってますしね。
ただこの作品、このあとも続編が出ています。
シリーズ化することも含んでの構成かもしれませんが。
また楽しみに読ませていただきましょう。
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | 『や』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年11月15日

「日本の食材 おいしい旅」向笠千恵子

CIMG3731.JPG

おいしくて安全な食材や商品を作る生産者たちを追い求め、日本全国を旅してきた著者。
今回もやはり北海道から沖縄まで、全国の生産者を紹介しておられます。
といってもルポタージュ的な堅苦しさはなく、食エッセイとして気軽に読める内容です。
食の安全ということが言われだして久しいわけですが、言うのは簡単実行は難しです。
やはり生産者もできればラクしたいわけですし、少しでも儲けたい。
となるとどうしても安易な生産方法を選んでしまいますよね。
しかし頑なに昔ながらのやり方で手間がかかっても安全な商品を客に届けたいと頑張っている人たちがいます。
著者はあとがきでこのように書いておられます。
「お客がいないと、品物が売れないと、・・・・つまり店がとりあえずもうからないと、おいしいものづくりの蝋燭は一瞬のうちに消えてしまうのです。ギブ・アンド・テイクではありますが、まずはわたしたちが品物を買うことが先なのではないでしょうか。」
まったくその通りですね。
良心的な生産者を支えるのは我々消費者です。
ラベル:グルメ本
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | 『む』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする