2011年04月30日

4月の一冊

今月は11冊でした。

まあ理想のペースですね。

読みましたのは以下の作品。

「闇の子供たち」梁石日
「食の極道 喋るも食うも命がけ」勝谷誠彦
「居場所もなかった」笙野頼子
「イン・ザ・プール」奥田英朗
「青桐」木崎さと子
「かつどん協議会」原宏一
「食に知恵あり」小泉武夫
「カフーを待ちわびて」原田マハ
「藁の楯」木内一裕
「家族の標本」柳美里
「シェ松尾物語」松尾幸造

「闇の子供たち」、ディープなテーマはさすがの梁石日なのですが、氏の作品はどうも構成にまとまりがないのが多いのではないでしょうか。

なので着地点の足元がゆるい気がします。

「居場所もなかった」、この作品は、というよりこの作者の作品は、じっくり硬いスルメを味わうように読むべしなのかなと思います。

笙野頼子、かなり読者を選ぶ作家ではありますよね。

「イン・ザ・プール」、リラックスして読める小説で面白かったです。

「青桐」、じんわりと染み入る小説です。

人の死を扱いながらも読後に清々しさを感じさせる作品でした。

「かつどん協議会」、最初に読んだ「床下仙人」もそうなのですが、そこそこ面白いんです。

でも新人文学賞でいえば、最終候補には残るけど受賞には至らないといったレベルなんですよね。

もひとつもどかしい。

「カフーを待ちわびて」、これはよかったですよ。

南の島を舞台にした内容も背景もピュアな小説。

癒し系です。

「藁の楯」、漫画家から小説家に転向しての第一作。

漫画家から小説家に転向した例としては山上龍彦(山上たつひこ)氏がいらっしゃいますが、成功したとはいいがたい。

事実また漫画に戻られましたしね。

木内氏もそれほど話題にはなっていませんし、発表も数年に一冊のペース。

それはともかくとしまして、肩に力の入り過ぎな感はありましたがなかなかエンターテイメントとして楽しめました。

「家族の標本」、柳氏初のエッセイ集。

私はエッセイというよりショートショートとして読みましたが。

さて今月の一冊。

意気込みを買って「藁の楯」木内一裕ですかね。

この後の作品はどうなのか、また他のも読んでみたいと思います。

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posted by たろちゃん at 18:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 今月の一冊 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年04月29日

「シェ松尾物語」松尾幸造

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著者は東京渋谷区松涛にある高級レストランのオーナーシェフです。

パリの「ラセール」や「トワグロ」(トロワグロ)などで修行し、帰国して自身の店をオープン。

フレンチレストランといえばホテル、それでもまだまだ本格的な素材を使っての料理を出すような時代ではありませんでした。

そんな中で閑静な住宅街に一軒家のレストランを構えたのです。

最初はお客さんが入らず店でスタッフとマージャンをやっていたといいますが、やがて口コミで噂が広がり、つねにコンプレな状態が続くようになりました。

のちに「クイーン・アリス」の石鍋裕氏や、「オテル・ド・ミクニ」の三國清三氏なども自身の店のオープン前に参考に訪れ、松尾氏からアドバイスをいただいたそうです。

やがてのちの皇太子殿下が訪れ、ご結婚前の雅子様も訪れ・・・・と、皇族や各界の一流人に愛される店となりました。

料理人を志したきっかけや修行時代のエピソード、自分の店を持つまでの苦労話、現在の成功までと、料理人本としてはまったく目新しい内容ではありません。

しかし小説ではなく実話ですから、やはりその内容には重みがあります。

ラベル:グルメ本
posted by たろちゃん at 16:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 『ま』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年04月27日

「家族の標本」柳美里

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柳美里初のエッセイ集。

ですが身辺の出来事や時事に関して書かれているわけではありません。

身辺の出来事といえばそうなのですが、ご自分の周りのさまざまな家族に絞って書かれています。

そのどれもが不幸を抱えてたりするんですね。

さすがは柳美里。

この人の書く小説の家族はすべて崩壊していますから。(笑)

読んでいて思いましたのが、これはすべて実話なんだろうかと。

ショートショートな純文学のフィクションとも思えます。

しかし最後の章に「この連載は実在する家族をモデルにしている」とあります。

私はそんな言葉を真に受けませんが。(笑)

また、編集者から「短編小説にできる素材を原稿用紙四枚のエッセイに毎週出してしまってもったいないといわれた」とあります。

たしかにそれぞれを膨らませれば、柳氏独特の小説に仕上がるでしょうね。

私がショートショートな純文学と感じたのはまさにそれです。

他人の家族を観察し書くことにより、柳氏の文学に対するテーマが鮮やかに浮かび上がっているエッセイではないでしょうか。

ラベル:エッセイ
posted by たろちゃん at 17:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 『ゆ』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年04月25日

「藁の楯」木内一裕

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作者の名前は木内一裕。

ひらがなで書くと「きうちかずひろ」。

そう、大ヒット漫画「BE-BOP-HIGHSCHOOL」の作者です。

漫画家から小説家への転向第一作がこの作品です。

来月から小学二年生になる少女が暴行され惨殺されます。

その少女は某巨大企業創始者、蜷川隆興の孫です。

逃亡して行方の掴めない犯人を許せない蜷川は有り余る資産にものをいわせ、三大全国紙に犯人の清丸国秀殺人依頼の広告を掲載します。

清丸を殺した者には賞金十億円。

はした金で殺人をする人間などいくらでもいます。

ましてや十億円となると。

数年服役して出所すれば、悠々自適の生活が待っているのです。

借金を抱えて自殺を考えているような人物などにとっては、願ってもないチャンスです。

暴力団も動くことでしょう。

警察だけではなく、そのような人間たちから逃げられるすべはありません。

福岡県に潜伏していた清丸はたまらず自首してきます。

そんな清丸を警視庁に移送するため、五人の人物が選ばれます。

その中の一人が主人公である警視庁の機動警備隊に所属するSPの銘苅一基です。

賞金狙いたちの手から無事清丸を福岡から東京まで移送できるのか。

ところが清丸の命を狙うのは一般人だけではなく、留置所や機動隊の警官の中にもいたのです。

近づいてくる者はすべて敵!?

そんな中で銘苅は任務を遂行できるのか・・・・。

なかなか大胆な設定の小説です。

福岡から東京までのサバイバルゲームといった趣ですね。

かなり取材や下調べもされたでしょう、小説第一作ということで力の入った雰囲気が伺えます。

ちょっと入り過ぎな感がなくもないですが。(笑)

しかし最後の最後まで緊張感を保ちつつ読ませる展開はなかなかのもの。

面白く読めました。

ラベル:小説
posted by たろちゃん at 09:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 『き』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年04月22日

「カフーを待ちわびて」原田マハ

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第1回日本ラブストーリー大賞受賞作。

大賞賞金はなんと500万円。

「群像」や「文学界」の賞金は50万円だというのに・・・・。(笑)

さて内容です。

友寄明青は沖縄の与那喜島に住む一人暮らしの青年。

そんな明青のもとに幸という女性から一通の手紙が届きます。

「私をあなたのお嫁さんにしてくださいますか」

四ヶ月前、北陸の遠久島に島民一行と訪れたとき、そこの神社で冗談半分に「嫁に来ないか。幸せにします」と絵馬に書いたのです。

それを見て幸という女性は手紙を送ってきたのでした。

そして実際に訪れた幸はえらい美人で・・・・。

明青、飼い犬のカフー、幸、明青の家の裏に住み食事の世話をしてくれている巫女のおばあ。

三人と一匹の生活が始まります。

お嫁にしてくださいとやってきた幸に対して、その真意を問いただせないまま夫婦でも恋人でもない関係で暮らしていく明青。

そこにリゾート開発による立ち退き問題も絡んできて・・・・。

パターンとしては昔の少年マンガのような設定。

とくに取り柄のない男の子の主人公に、なぜかとびっきりかわいい女の子が幼馴染みとかの設定でいつもそばにいてくれてるみたいな。

少女マンガにもそのような逆の設定がありました。

現実にはそんなことあるわけない。(笑)

絵馬を見てお嫁さんにしてくださいとやってくる女性。

どう考えてもヤバイ人です。

ま、そんなこといってたら話になりませんのでその設定を受け入れまして。

でもなかなかいいんですよこれが。

なにがいいのかなと考えましたら、主人公はほとんどこの島から出たことないような人物です。

ですから話の内容もほとんどこの島の中だけで進行します。

俗な物が出てこないのがいいんですよね。

南国的開放感な舞台設定に癒されるんです。

そしてやはりピュアな展開でしょうか。

明青がついに幸と体を重ねて・・・・なんてありませんから。(笑)

幸の素性が明かされないことにちょっとミステリアスな要素もありますしね。

昔のコバルト小説を思わせる雰囲気のある作品です。

ちなみに作者の原田マハ氏は、原田宗典氏の妹さんとのことです。

ラベル:小説
posted by たろちゃん at 19:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 『は』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする