2011年04月20日

「食に知恵あり」小泉武夫

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ご存知「味覚人飛行物体」小泉武夫氏の食エッセイです。

とにかく知識が豊富で、食に対しての好奇心が旺盛。

美味はもちろん珍味やら日本人には馴染めないようなものまで、なんでも取りあえずは召し上がられます。

どこの何が美味しいとかいった食べ歩き自慢ではなく、食文化の根本から食べ尽くそうとしておられるかのようです。

そしてタイトルの通り、食文化に込められた知恵を幅広く紹介しておられます。

昔の人の知恵というのはすごいですね。

科学なんてなかった時代にどうやってそのような保存法や調理法を考え付いたのか、まったく恐れ入ります。

そういうことを面白楽しく読むことができます。

ラベル:グルメ本
posted by たろちゃん at 10:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 『こ』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年04月18日

「かつどん協議会」原宏一

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かつ丼好きの主人公。

行きつけの大衆食堂のオヤジさんがぎっくり腰になったとかで、一週間かつ丼をタダで食べさせてもらえることに釣られ、かわりに同業者が集まる会議に出席することになります。

全国食堂中央連盟という集まりの会議の内容は、かつ丼について。

ファミリーレストランなどに押されて寂れていく一方の大衆食堂業界が、起死回生策としてかつ丼推進キャンペーンを企画したのです。

当然各業界が売り込みにかかります。

日農連は米を、養豚協は豚肉を、鶏卵連は卵を。

他にも醤油メーカーやパン粉メーカー、砂糖メーカーなど。

自分たちが扱う商品こそがかつ丼の主役であると、一歩も譲りません。

会議におけるバトルの行く末は・・・・。

くだらないことを真剣に論じる(演じる)というのは笑いのひとつのパターンですが、これはまさしくそれですね。

その他、政治はくじ引きで決めろと主張する老人の話「くじびき翁」、謝罪することを専門とする職業『謝罪士』を描いた「メンツ立てケーム」。

どれもちょっと変わった切り口で楽しく読めました。

こじんまりとまとまった短編集という印象です。

ラベル:小説
posted by たろちゃん at 14:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 『は』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年04月14日

「青桐」木崎さと子

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北陸の旧家に兄夫婦と住む充江のところに、東京から叔母が帰ってくるといいます。

叔母は充江と兄の浩平を母親代わりに育ててくれた人物です。

そんな叔母を連れ帰ってくるのが、充江がほのかに想いを寄せている史郎。

史郎に逢えることに心浮き立つ充江ですが、叔母が10年も前から乳癌を患っていることを知らされます。

叔母は離れで療養することになり、充江はその世話を引き受けます。

医者に診てもらうことを頑なに拒み、癌である自分をあるがままに受け入れる叔母。

充江は幼い頃に顔に火傷を負い、その痕のせいか三十を過ぎた今でも独身です。

ある日兄からその火傷の原因は叔母だと聞かされ、ショックを受ける充江。

なんで今まで隠していたのかと。

しかも火の近くにいた自分よりも、姉妹のように一緒に育った実の娘を突き飛ばして優先的に助けたらしいのです。

それを負担に思ってか、叔母は充江に火傷痕の手術を受けさせてあげたいと漏らします。

今さらそんなことしたくない、火傷の痕を背負っていきてきたからこその今の自分だと反発する充江。

充江の心が叔母や史郎から離れていきます・・・・。

叔母の世話をしながらも顔の火傷の事実を知り、叔母や史郎に寄せていた気持ちが少しずつ変化していく様が微妙な筆致で描かれます。

そして癌に冒されながらも、それさえもが自分の体であると受け入れる叔母の生き様。

やがて命を引き取る死に様。

それは決して美しい姿ではありませんが、凛としたものを感じさせます。

叔母の死後、火傷の件は兄の記憶違いが混じっていることがわかります。

そして叔母の死と同時にわだかまりも浄化され、ふと火傷痕の手術を受けてもいい・・・・という気持ちになる充江。

死んでいく人間と前向きな心で生きていく人間の心の交わりを描いた物語です。

ラベル:小説
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2011年04月12日

「イン・ザ・プール」奥田英朗

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連作短編集。

主人公はその都度変わるのですが、伊良部一郎という精神科医が共通して登場します。

その伊良部一郎のもとにいろんな悩みを抱えた患者(主人公)が訪ねてくるという形で話が始まります。

水泳依存症の男、勃起しっぱなしの男、自意識過剰で被害妄想な女、携帯電話依存症な男子高校生、タバコの火が気になってすぐに家に戻ってしまう男・・・・。

どう見てもまともな医者とは思えない伊良部一郎ですが、ふとしたことに思わず信頼を置いてしまう患者たち。

しかし言動はやはりまともではないわけで・・・・。

軽いノリで面白く読めました。

伊良部一郎のキャラがいい。

ちょい役の看護婦マユミちゃんも。

現代人の抱える心の問題を鋭く風刺・・・・というような分析もできるでしょうし、そのような意図も作者にはあるでしょう。

でも単純に主人公の悩みに「そんなことあるある」と思いつつ、伊良部一郎の天然か計算し尽されてかの言動を楽しむのがいいかと思います。

なかなか楽しめる一冊でした。

これはぜひ続編の「空中ブランコ」も読んでみたいですね。

ラベル:小説
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2011年04月10日

「居場所もなかった」笙野頼子

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主人公は女性作家。

現在住んでいるマンションを出るはめになり、新しい住居を探し始めるのですがなかなか見つかりません。

絶対の条件がオートロック。

もちろん家賃の制限もあります。

不動産屋めぐりをする主人公ですが、そんなやりとりがなんやら現実なんだか妄想なんだかわけがわからなくなってきます・・・・。

いつもながら現実に虚構が流れ込んでくるようなシュールな内容です。

笙野流マジックリアリズムの世界。

ただはっきりとわかるのは、物語の構造がすべて二重になっているということ。

裏表というのとはちょっと違う気がするんですけどね。

居場所がないというのは文字通り住む部屋が見つからないということと同時に、彼女の存在自体がこの世に居場所を見つけられないということ。

主人公は夢のような世界を彷徨っていますが、もちろんそこには作者の冷めて計算された視線があるということ。

部屋を借りる際の大手企業のサラリーマン(編集者)と売れない自営業(作家)との対応の違いなど・・・・。

大手出版社の編集者を登場させることにより、そして作中で作品を批評させることにより、ますます主人公のヘンコな部分や焦燥感が強調されます。

併録されている「背中の穴」は表題作の続編となります。

文庫版あとがきのやや過激な内容は必読の価値あり。(笑)

ラベル:小説
posted by たろちゃん at 17:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 『し』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする