2011年04月14日

「青桐」木崎さと子

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北陸の旧家に兄夫婦と住む充江のところに、東京から叔母が帰ってくるといいます。

叔母は充江と兄の浩平を母親代わりに育ててくれた人物です。

そんな叔母を連れ帰ってくるのが、充江がほのかに想いを寄せている史郎。

史郎に逢えることに心浮き立つ充江ですが、叔母が10年も前から乳癌を患っていることを知らされます。

叔母は離れで療養することになり、充江はその世話を引き受けます。

医者に診てもらうことを頑なに拒み、癌である自分をあるがままに受け入れる叔母。

充江は幼い頃に顔に火傷を負い、その痕のせいか三十を過ぎた今でも独身です。

ある日兄からその火傷の原因は叔母だと聞かされ、ショックを受ける充江。

なんで今まで隠していたのかと。

しかも火の近くにいた自分よりも、姉妹のように一緒に育った実の娘を突き飛ばして優先的に助けたらしいのです。

それを負担に思ってか、叔母は充江に火傷痕の手術を受けさせてあげたいと漏らします。

今さらそんなことしたくない、火傷の痕を背負っていきてきたからこその今の自分だと反発する充江。

充江の心が叔母や史郎から離れていきます・・・・。

叔母の世話をしながらも顔の火傷の事実を知り、叔母や史郎に寄せていた気持ちが少しずつ変化していく様が微妙な筆致で描かれます。

そして癌に冒されながらも、それさえもが自分の体であると受け入れる叔母の生き様。

やがて命を引き取る死に様。

それは決して美しい姿ではありませんが、凛としたものを感じさせます。

叔母の死後、火傷の件は兄の記憶違いが混じっていることがわかります。

そして叔母の死と同時にわだかまりも浄化され、ふと火傷痕の手術を受けてもいい・・・・という気持ちになる充江。

死んでいく人間と前向きな心で生きていく人間の心の交わりを描いた物語です。

ラベル:小説
posted by たろちゃん at 13:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 『き』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする