2011年05月21日

「少年たちの終わらない夜」鷺沢萠

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4編が収められた短編集。

どれも少年というのでしょうか、二十歳前の若者を主人公に据えています。

はっきりいいまして、読んでいて非常に恥ずかしい小説です。

タイトルを見ましても表題作の他、「誰かアイダを探して」、「ユーロビートじゃ踊れない」、「ティーンエイジ・サマー」。

う~ん、時代を感じさせるタイトルですねぇ。

どの作品も具体的な地名は書かれていませんが、舞台は横浜でしょう。

そして若者たちは飲み屋に群がるんですね。

飲み屋といってももちろん赤提灯ではありません。(笑)

この時代ですからカフェバーやディスコといった類の店になりますか。

登場人物の名前にも店の常連で本名はわからず「CJ」と呼ばれてるのがいたり「ニック」と呼ばれているのがいたり。

日本人ですよ。

そんなのいないでしょ普通。(笑)

赤面する設定ですよね。

フィクションとはいえ、そういうのが違和感なく受け入れられた時代もあったのです。

それがカッコイイ、オシャレだと。

アメリカングラフィティーに憧れているような、そんなコテコテな設定の短編集であります。

どの作品にも共通しているのは、大人になる前の若者の刹那感や焦燥感です。

ほんとにどいつもこいつも将来のことなど何も考えていない。

いや、考えているんだけど頭が及ばない。

刹那的に今を生きているだけです。

だけども本能的に焦りを感じている。

そのような“瞬間”を切り取って瑞々しく(当時としては)描いてみせたのがこの作品集でしょう。

ラベル:小説
posted by たろちゃん at 20:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 『さ』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年05月19日

「焼肉のことばかり考えてる人が 考えてること」松岡大悟

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この著者の本は、以前に「焼肉の掟」というのを読みました。

その続編というわけではないでしょうが、今回は牛肉に特化して書いておられます。

いかに美味しく焼肉を食べるかというのがコンセプト。

単純に肉を網に乗せて焼くだけの料理である焼肉。

しかしそれはプロの料理人ではなく、食べ手である客に調理を委ねられているんですよね。

こんな料理は珍しいと著者は言います。

寿司屋が客に寿司を握らせるか。

ラーメン屋が客に麺を茹でさせるか。

ありえないだろうと。

しかし焼肉は店が下ごしらえした素材を、客がその場で調理するのです。

ですので美味しい焼き方というのを伝授しようと、例えば第1章は「焼き技大全」として、肉の焼き方について伝授しておられます。

なるほど、ほほうと思わせることが色々と書かれていて読んでいて楽しい。

テッチャンなどのホルモンはどちらから焼くべきか。

赤身に裏表はありませんが、ホルモン類には裏表がありますからね。

ネギ乗せの肉はどう焼くべきなのか。

なるほどふむふむと思いながら読みました。

「3:7焼き」、「片面焼き」、「片面焦がし」、「オイルドロップ」など、面白い技を披露しておられます。

肉の焼き加減については私も一家言持っておりますが(というか融通効かないだけですが 笑)、それらをひとつひとつ試してみたい気になりましたね。

私はいつも一人で訪問しますから、誰にも気兼ねなく試せますので。(笑)

ラベル:グルメ本
posted by たろちゃん at 17:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 『ま』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年05月17日

「銀齢の果て」筒井康隆

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老人が増えすぎたため、政府は七十歳以上の老人に殺し合いをさせる「老人相互処刑制度」というのを制定しました。

限られた地区内で生き残れるのはただ一人。

主人公宇谷九一郎の住む宮脇町五丁目地区でもいよいよバトルが開始されます。

対象となる老人たちは元自衛隊員や小人プロレスラー、神父、元女優やその執事など一癖ありそうな連中がうじゃうじゃ。

はたして生き残るのは誰なのか・・・・。

最近は老いをテーマにした小説をよく手がけておられる作者ですが、そのひとつの到達点ともいえますね。

増えすぎた老人が邪魔になり、自ら殺し合いをさせるなんて。

スラプスティックな描写はいまだ健在で、さすがの筒井康隆です。

きんさんぎんさんという双子老姉妹の腹をかっ捌き、はみ出た腸から大量の大便が噴出するシーンや、神父の生殖器を切断し十字架に磔るなどブラックでグロなツツイズム。

捕鯨砲をぶっ放し空中を飛んでいく夫婦の描写など、電車の中にもかかわらず笑ってしまいました。

老人社会をシニカルに哀切に描いたこの作品、傑作であります。

ラベル:小説
posted by たろちゃん at 22:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 『つ』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年05月15日

「世界一の長寿食「和食」」永山久夫

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健康食として世界中から注目を浴びている和食。

なるほど和食には科学や栄養学などなかった時代から非常に理にかなったバランスを保っているんですね。

昔から魚をよく食べていた日本人。

肉よりは魚というのは今や常識になっていますし、米を主食にした食事内容、豆腐や納豆、味噌汁といった大豆のたんぱく質。

そしてやはり野菜ですよね。

一汁三菜なんて実にバランスの取れた食事です。

著者はそういった昔ながらの食材や食事方法の素晴らしさを強調されます。

そして著者の個人的主張だけではなく、歴史も紐解いたりしてそれを裏付けることも忘れておられません。

あるいは実際に100歳以上生きておられる人(昭和七年のデータで、著者によるものではありませんが)の食生活についてのアンケートなども紹介しておられます。

それによりますと、やはり肉よりは圧倒的に魚好きな人が多い。

でもこれは時代的な背景もあるでしょう。

腹八分目やお茶をよく飲むなども条件としてあげられていますね。

食事以外には常に体を動かすとかストレスがない生活とか。

これは現代人にはちょっと厳しいかも。

長寿の秘訣として著者は「胡豆魚大参茶」というキーワードを主張されます。

胡→ごま
豆→大豆
魚→魚
大→大根
参→にんじん
茶→お茶

なるほどどれも定評のある食品です。

大根というのはちょっと意外で、青野菜が欠けているのが私は気になりますが。

お茶というのは身近なようですが、若い人など意外と摂取していないかもしれません。

代わってコーヒーや清涼飲料水などが多いのでは。

読んでいて説教じみた雰囲気もなく、読み物として楽しみつつ勉強させていただきました。

ラベル:グルメ本
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2011年05月11日

「群青の湖」芝木好子

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大学の工芸研究室に勤め、染織を勉強している瑞子。

四谷で生まれ育った瑞子は早くに両親を亡くし、現在は下宿を営んでいる叔母のたまきと暮らしています。

そこに下宿していたのが近江からシナリオ作家を目指して上京した大室潮。

二人は付き合うようになり、瑞子は妊娠してしまいます。

旧家である潮の実家に嫁入りする決心をし、瑞子は潮と近江に旅立ちます。

しかし姑には疎んじがられ、なかなか大室家に溶け込むことができません。

潮には玲という結核を患い余命いくらもない兄がいるのですが、口数少なく皮肉ばかりのそんな玲が瑞子の感性に触れるものがあったのか、家族よりも打ち解けた接し方をするのです。

瑞子もそんな玲の死を目の前にしながら毎日琵琶湖を見つめ続ける生き様に惹かれるものを感じます。

やがて玲は他界し、夫の潮とも彼の背信が原因で離婚。

瑞子は子供を道連れに自殺を図りますが一命を取り留めます。

そしてもう一度与えられた人生を仕事に打ち込む決心をします。

東京に戻ってからもつねに深い湖の底に眠る玲を意識しつつ、湖の青い美しさを染物や織物で表現したいと思い続ける瑞子。

仕事と愛娘の櫻子を支えに、そして仲間に励まされながら力強く生きていきます。

未熟ながらもひとつひとつ作品を仕上げ、展覧会での入賞も果たしていき・・・・。

最初はやや地味ですが、瑞子が近江に嫁いでから物語りは動き始めます。

やはり玲の存在が前半の大きな鍵ですね。

玲によって湖の神秘的な魅力に魅せられ、それが後半の瑞子の生きがいともなっていくのですから。

そして浜尾という理解者を得、最後は離婚や自殺未遂、玲の呪縛からも解き放たれることを示唆して物語は終ります。

やはりこのようなモチーフを扱わせるとさすが芝木好子と思わせられますね。

芝木文学をじゅうぶんに堪能できる長編作品です。

ラベル:小説
posted by たろちゃん at 11:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 『し』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする