2011年07月19日

「手塚先生、締め切り過ぎてます!」福元一義

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漫画界の巨匠・手塚治虫

漫画の神様とまでいわれましたね。

著者は担当編集者から転身し、そんな手塚氏の下で約20年ほどアシスタントを勤められました。

なので本書は外部の人間が取材で固めた内容ではなく、長年手塚氏と一緒に仕事をしてきた立場からしか書けない内容です。

何本もの連載やアニメの製作を抱え、凄まじいスケジュールをこなしていく手塚氏。

まさに超人的ですが、やはり締め切りに間に合わず落とすこともあり。

そんな神様も昭和59年に急性肝炎で入院するとき、「入院したら読者から忘れられてしまわないかね」と人気を気にされたとか。

神様だ巨匠だと決して安心などしておられなかったのですね。

シビアな世界です。

平成元年二月九日、死去。

氏は亡くなる間際まで「頼む、仕事をさせてくれ」と床から起き上がろうとされたとか。

著者はそのエピソードに、ゲーテが臨終の間際「もっと光を」といって亡くなったエピソードを重ねられます。

ちなみにこの年は昭和天皇が崩御され、松下幸之助が亡くなり、美空ひばりが亡くなり・・・・。

まさにひとつの時代が終った感がありましたね。

ラベル:漫画本
posted by たろちゃん at 05:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 『ふ』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年07月17日

「武装酒場」樋口明雄

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舞台はJRのガード下にある「善次郎」というオンボロの居酒屋です。

変わり者のオヤジがやっているそんな店に集まる常連たち。

妻を絞め殺し死刑か無期懲役か。

捕まる前に最後に飲めるだけ飲んでやろうと訪れたターさん。

三千万円の借金をこしらえヤクザに追い込みをかけられ、夜逃げする前に飲んでいこうと訪れた西ヤン。

男にフラれ、こんな日くらいはハメをはずしても許されるだろうと訪れた淳子。

売れない作家の宮津。

その他酒癖の悪い連中が数名・・・・。

そんな連中がふとしたことから店で拳銃や手榴弾を手に入れ、酔っ払っているものだからそれを武器にいつのまにやら立て籠もり状態になってしまいます。

店の前には機動隊やらマスコミやらヤジ馬やらえらい騒ぎに。

おまけに店の地下からは不発弾が・・・・。

ドタバタ小説、いわゆるスラプスティックですね。

でも・・・・なんというかもひとつ突き抜けてない気がしました。

裏表紙のあらすじに書いてあるほど抱腹絶倒感はありません。

最後はちょっとほろっとさせるようなところもあったりして。

まあそれはそれでよかったんですけども。

でもこういう作品には多少のエログロを期待してしまうのは筒井康隆の影響でしょうか。(笑)

ラベル:小説
posted by たろちゃん at 23:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 『ひ』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年07月15日

「風味絶佳」山田詠美

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6つの短編集。

タイトルや表紙からして食べ物関係の内容かなという気がしますが、当たらずしも遠からず。

食べ物の描写が多く出てきます。

しかし料理小説ではありません。

しっかりと味わいのある恋愛小説です。

かといって舞台はよくありがちな大手企業などではありません。

そこに勤めるOLが主人公で、同じ会社や取引先の男性と・・・・などとはまったくほど遠い。

それぞれ出てくる男性は肉体労働者です。

これが大きな特徴ですね。

とび職、ごみ回収作業員、ガソリンスタンド店員、引越し業者、汚水槽清掃員、火葬場職員。

小じゃれた舞台設定とは無縁な世界で仕事をする男性たちが描かれています。

男性たちはみなそれぞれの仕事に愛着を持っており、そんな男性に女性たちは静かに寄り添っているのですね。

そんな中で表題作の「風味絶佳」はちょっと違う雰囲気といえるでしょうか。

主人公の恋愛を通して、ハイカラな言動のグランマ(祖母)を描きます。

孫である主人公を突き放しているようでいて、大きく包み込むようにその恋愛を見守っているグランマ。

やはり人生の先達といったところです。

そして大学時代の同級生で片思いだった女の子が自分の父親と結婚するという主人公の複雑な気持ちを描いた「春眠」。

なんだか喉に刺さった小骨が気になるような小説です。

それぞれに生活があり人生があるのだなぁと思える作品集でした。

ラベル:小説
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2011年07月13日

「先達の御意見」酒井順子

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「負け犬の遠吠え」がベストセラーとなり、物議を醸した酒井順子氏。

そんな著者と錚々たる顔ぶれの対談集です。

阿川佐和子氏瀬戸内寂聴氏林真理子氏などなど・・・・。

先頭バッターが阿川氏というのがいかにもですね。(笑)

さすがにどのゲストも余裕を持って「負け犬の遠吠え」を評価しておられます。

そう、負け犬も勝ち犬も、得な部分もあれば損な部分もあるわけです。

負け犬を自称しつつも、著者はそれを楽しんでおられるというのは明らか。

「負け犬勝ち犬」という表現にはまだユーモアがあります。

誰が言い始めたのか、「負け組勝ち組」という言葉にはそれがありません。

それらを混同している人がいるという指摘がこの本の中にありましたけども。

おそらくそのニュアンスのわからない人たちは真剣に腹を立てたでしょうね。(笑)

posted by たろちゃん at 20:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 『さ』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年07月11日

「グラスホッパー」伊坂幸太郎

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元教師の鈴木は、ある非合法な組織の社長の馬鹿息子に轢き逃げで妻を殺されます。

しかしその馬鹿息子は父親や政治家の力で罰せられることはなかったのです。

鈴木は復讐のため、馬鹿息子のいる組織『令嬢』に契約社員として入り込みます。

ところが鈴木の目の前で馬鹿息子は何者かに車道に押し出され、車に轢かれて死んでしまうのです。

「押し屋」と呼ばれる殺し屋の仕業らしく、復讐を横取りされた形の鈴木は「押し屋」を追います。

それと同時に他の二人の殺し屋の話も進んでいきます。

ナイフの使い手である「蝉」。

ターゲットを自殺に追い込む特殊な能力を持つ「鯨」。

その二人もそれぞれの思惑から「押し屋」を追うことになるのです。

「押し屋」の名前は「槿(あさがお)」。

三人の殺し屋たちの三つ巴の戦いに鈴木も巻き込まれて・・・・。

それぞれの人物が一点に向かって収束していく展開はやはり伊坂幸太郎ですね。

ハードボイルドな内容ではありますが、それほど陰鬱感なく軽妙なセリフのやりとりやスピーディーな展開でユーモラスに読ませるあたりはこの作者の持ち味でしょう。

ラストはやや暗示的。

鈴木の行く末は決してすっきりと晴れやかなものではないですね。

ラベル:小説
posted by たろちゃん at 04:59| Comment(0) | TrackBack(1) | 『い』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする