2011年10月09日

「私の男」桜庭一樹

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腐野花は二十四歳。

父親は腐野淳悟、四十歳。

実父ではなく養父です。

十歳のとき震災で家族を亡くした花は、遠縁である淳悟に引き取られます。

この父から離れ結婚する第1章から、第6章の十歳の過去に遡って物語が展開されます。

なにという大きな展開はないように話は進む(遡る)のですが、書かれていることといえばけっこうディープ。

被災、殺人、近親相姦、血のつながり、ファザコン、マザコン。

視点を変えながら、淡々とした筆致でそれらが明らかにされていきます。

しかし過去に遡るという構成のせいでしょうか、かなりエグイことを書いているのに読み手としてはわりと平静に受け入れていくんですよね。

それは私だけかもしれませんけど。

エログロな要素を詰め込みながらもさらりとしているんです。

花の淳悟に対する気持ちはまだわからないでもないですけど、淳悟の花に対しての心情が私の理解の範囲を超えていましたが。

「私の男」というのはもちろん花にとって父親のこと。

作中では花の視点の地の文で、「男」だったり、「淳悟」だったり、「おとうさん」だったり、「養父」だったり、呼び方が統一されていないのはもちろん演出でしょう。

そんな揺れ動く娘とつかみどころのない父親の禁忌をこのように仕上げたセンスと筆力はなかなかのもの。

読み応えありました。

評価が大きく分かれる作品だと思いますけど。

ラベル:小説
posted by たろちゃん at 04:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 『さ』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする