長編だと思っていたら連作短編集でした。
三十歳手前の庄野知鶴はインテリアコーディネーター。
鉄鋼会社に勤めていましたが、女性はみんな三十歳になるまでには結婚退職していきます。
いつの間にか最年長になってしまった知鶴は居づらくなり、インテリアコーディネーターとして再就職するわけですが。
しかしやらされる仕事といえば雑用ばかり。
特に毎日ランチタイムの弁当を手配するのが面倒で憂鬱です。
表題作はそんなところからタイトルが付けられています。
注文表に印を付けていないにもかかわらず、自分の弁当を会議室に持ってこいという部長。
もちろんあるわけないのですが、正直にそれを言えば気を効かせて手配しておけと言われるのがオチ。
どうしようかと迷っていると、たまたま冷蔵庫に昨日の残りの弁当が入っていました。
冷蔵庫に入っていたから大丈夫だろうと、知鶴はそれを部長のところに持っていきます。
しかしそれを食べた部長は具合が悪くなり、救急車で運ばれることに。
知鶴は青ざめるのですが・・・・。
次の「カラフル」では友人が殺されます。
八編収録されていますが、もしかして残りもすべて主人公がこのような事件に巻き込まれるのかと思いましたが、さすがにそうではなかったですね。
刑事や弁護士じゃあるまいし、普通のOLがそうそうそのような事件に巻き込まれるのは作り過ぎですもんね。
インテリアコーディネーターという職業柄いろんな家庭の事情を見ることになるわけですが、それに関わる形で話が作られています。
自身も下着泥棒にあったりして。
裏表紙には新感覚ミステリーと書かれていますが、あまりミステリーという感じはないですね。
全体を見渡すと殺人事件の編が浮いて感じられます。
真相に気付くネタも薄っぺらく弱い。
むしろ家族のさまざまな形態を描いた小説として通したほうがよかったと思います。
なにも殺人事件なんて入れなくていいではないですか。
殺人事件の小説がお好きな人が多いですけども。
家政婦は見たではありませんが、インテリアコーディネーターから見たさまざまな家庭の事情。
それでじゅうぶんドラマになっています。
ミステリーにこだわらずもう少しすっきりと筋の通った構成であれば、もっと満足感のある連作短編集になったと思います。