2011年10月23日

「八日目の蝉」角田光代

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不倫相手の男の子供をひと目見るだけでよかった。

しかし夫婦が子供を部屋に残し外出したあいだに忍び込んだ希和子は、まだ赤ん坊であるその子供を連れ去ってしまうのです。

子供は女の子。

薫と名付けたその子を連れての希和子の逃亡が始まります。

まずは友人の家へ。

そして見ず知らずの立ち退き間近の家へ。

女性だけの団体生活をしているエンジェルホームという新興宗教っぽい施設へ。

最後は小豆島に・・・・。

0章のプロローグの後、1章では希和子の逃亡生活が描かれています。

2章では大人になったその子供の視線で。

1章で描かれているのは希和子のひたすら薫に対しての愛なんですね。

もちろんそれだけではありませんけども。

自分と血が繋がっているわけでもない薫をひたすら想い続ける希和子のけなげさ。

なんとか逃げ延びて二人の生活を守ろうとする希和子の必死さが痛々しい。

2章になりまして薫こと恵理菜の一人称となります。

1章と違ってその視線はひたすら冷めています。

物心つくまで育てられた誘拐犯の母と引き離され、しかし実の家族のもとに戻っても違和感がある。

そんなジレンマを抱えながら過ごしてきた恵理菜の前に現れたのが、エンジェルホームで一緒だった千草。

まるで希和子と同じような生き方を選ぼうとしている恵理菜の支えともなります。

二人は恵理菜の過去にさかのぼるわけですが・・・・。

1章でしっかりと薫に対しての希和子の想いを提示しておき、2章ではそんな希和子の気持ちなど知ることもない恵理菜(薫)を描く。

読者としては「それはないやろ」と思ったりするのですが、しかし当然のことでしょう。

でも少しずつ近寄っていったりするんですね。

2章でもやはり希和子の薫(恵理菜)に対する想いが貫かれています。

捕まるときのセリフなんて涙ものです。

赤ん坊を誘拐するなんて確かに悪い。

言い逃れできない重大な犯罪です。

でも読者は誘拐犯の希和子に感情移入してしまいます。

生みの親より育ての親なんていいますが、まさしくそんな感情を持ってしまうのですね。

そんな母子の愛を感じるかたわら、出てくる男どものなんとなさけないことよ。

エンジェルホームでもそうですが、この小説において男は完全に役立たずとして除外されています。

いやまったくと汗を拭いました。(笑)

ラスト、自分が物語の中へ入っていけたら。

母について恵理菜(薫)に声をかけることができたら。

大きなお世話でしょうか・・・・。

ラベル:小説
posted by たろちゃん at 05:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 『か』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする