舞台は東北のとある村。
心平は小学二年生。
魚捕りと絵を描くことが大好きな少年です。
同い年の小百合は耳の不自由な少女。
しかし心平とは心が通じ合っており、まったく不自由はありません。
心平が魚を捕るのを、絵を描くのを、いつもそばで嬉しそうに眺めています。
小百合は将来、心平のお嫁さんになると約束しているのです。
ある日いつもの川で心平は雨鱒と出会います。
なぜかその雨鱒は心平を恐れもせず、むしろ親しげに寄ってくるのです。
そんな雨鱒を捕まえることなどできず、心平は雨鱒と友達になります。
なぜか雨鱒の言いたいことが理解できるのです。
小百合と二人、雨鱒と仲良くなり、嫁まで紹介してもらいます。
そんな自然と戯れて過ごす少年時代が第一章。
大好きな絵でパリの絵画展で特賞に入選するエピソードもあります。
第二章はそれから十年後。
だんだんと村の自然は破壊され、以前のように魚は捕れません。
心平を取り巻く状況も変わってきますが、相変わらず絵を描くことには熱心で、小百合はそんな心平をいまだにそばで嬉しそうに眺めています。
しかし小百合に縁談話が持ち上がり・・・・。
非常に清々しい青春(少年)小説です。
ピュアですねぇ。
耳の不自由な小百合や魚とまでも意思を通じ合うことができる主人公の心平。
それに寄り添う健気な小百合。
自然の中で生きる二人が瑞々しい。
ある意味ファンタジーですよね。
十年後の第二章でも二人のピュアなつながりは変わりません。
ただ周りが二人をそのままでは放っておかないのです。
自然にしても人間関係にしても。
小百合の縁談話が二人の仲を引き裂こうとします。
抵抗する二人。
もうベタベタな展開です。(笑)
それでも読めるのは方言を使った泥臭さのせいもあるでしょうし、内容に合ったぎこちない文体のせいもあるとおもいます。
それらがベタな展開を上手く緩和しているのですね。
そしてラスト。
予想通りの展開ですが、これをハッピーエンドといっていいのかどうか。
この後二人はどうするのだろうという大きな疑問が残るのですけども。
タイトルもどうでしょうか。
第二章も含めてのこのタイトルはどうかなぁ。
この作者の作品を読むのは私は二冊目です。
前回は「ららのいた夏」。
キャラがすごくいいんですよね。
ピカピカに光っています。
このキャラのよさとベタですがストレートな展開がこの作者の持ち味でしょうか。
他の作品もすでに購入済み。
今さらですが追いかけてみたいと思います。