2011年12月23日

「新刊めったくたガイド大全」北上次郎

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タイトルの通り新刊の本をめったくたに取り上げた書評集です。

といっても1979年から1994年に出版された本が対象なので、今からすればぜんぜん新刊ではありませんけどね。(笑)

しかしその幅が15年というのはすごい。

著者の書評家としての年季を感じさせます。

もちろん今でも第一線でご活躍中です。

79年といえば今から30年以上前になるわけで、今ではベテランと呼ばれる作家が新人として紹介されたりしているのがなんだか新鮮です。

今では名前を聞かなくなった作家も大勢います。

ですが現在でも書き続けておられる作家というのは、やはりデビュー時から才能を発揮しておられるんですね。

それをすばり見抜いておられる著者の眼力もすごい。

たっぷり読み応えありの530ページでした。

ラベル:書評・作家
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2011年12月21日

「花散らしの雨 みをつくし料理帖」高田郁

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みをつくし料理帖シリーズ第二作。

前作にて付け火で店を焼かれた「つる家」は新しい場所で暖簾を掲げます。

「つる家」の料理人の澪は雪ノ下という野草を天ぷらにして出すのですが、なんとまた大店の料理屋である「登龍楼」に料理を真似されます。

この「登龍楼」が「つる家」に散々嫌がらせをし、付け火をしたと思われるのです。

澪は次なる料理を考えます。

三つ葉を使った三つ葉尽くし。

しかしこれもやはり「登龍楼」で同じものを出しているのです。

澪が考え付いたのとまったく同じ素材を使い、同じ料理法でしかも「つる家」よりひと足早く出すなどとはあまりにも不自然。

どうやらしばらく前に下足番として雇い入れたふきという少女に不審な行動があり・・・・。

相変わらずいいですね。

絶好調です。

上に書いた「俎橋から-ほろにが蕗ご飯」で始まりまして、表題作の「花散らしの雨-こぼれ梅」では、大坂で幼馴染みだった野江こと吉原の伝説の遊女「あさひ太夫」との距離がまた縮まります。

「一粒符-なめらか葛饅頭」では裏店の人たちの人情に涙を堪え切れません。

「銀菊-忍び瓜」では澪の小松原に対する淡い恋心が意地らしい。

料理人としての澪の成長を柱に、周りの人たちの人情、幼馴染みとの再会、そしてほのかな恋なども描かれ、読み応えじゅうぶんな一冊となっています。

巻末には作中に出てくる料理のレシピもありまして、料理好きにとっては至れり尽くせり。(笑)

文句なしにおすすめのシリーズです。

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2011年12月19日

「ビタミンF」重松清

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三十代から四十代の中年男性たちを主人公にした短編集。

もう若くはないし、かといって枯れるにはまだまだ早い。

そんな年代です。

子供はというと中学生くらいだったりして、微妙で難しい年頃。

それぞれの主人公の子供たちは、家庭内暴力や万引き、いじめなどの問題を抱えています。

子供のことだけでなく、夫婦や自分の親のことでもいろいろとあったり。

どの話も決して明るくはありませんが、しかし陰気な暗さはありません。

むしろラストにはほのぼのとした希望がありますし。

無難に上手くまとめておられますね。

ツボを心得た話作りといいますか。

そのあたりちょっとベクトルは違いますが、浅田次郎を思わせたりもします。

粒揃いといえばまあそうなんですけども、その分突出した印象がないという気もしてしまいます。

贅沢な不満ですが。

ただ作者はこの短編集にそんな突出したものは意図していないでしょうし、このレベルの作品を淡々と一冊にまとめている力量を評価すべしでしょう。

主人公と同世代の男性は一度読んでみられては。

ラベル:小説
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2011年12月17日

「九月が永遠に続けば」沼田まほかる

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主人公の佐知子は四十一歳。

離婚して高校生の文彦と二人暮らしです。

佐知子は十六歳年下の、教習所教官である犀田と肉体関係を続けています。

その犀田というのが別れた夫の娘である冬子と付き合っている男なのです。

ある日息子の文彦が夜にごみ出しに出たまま帰宅しません。

そして付き合っている犀田の事故死。

いろいろと佐知子の周りに事件が起こります。

なぜ文彦は失踪したのか。

犀田の事故死はそれに関係があるのか。

冬子の存在はどのように関わっているのか・・・・。

二重三重の謎が絡み合い話が進んでいきます。

途中まではわくわくと読み進めることができました。

これはなかなかすごい小説だぞと。

なんと作者は五十六歳でのデビュー作なのです。

話題になっただけはあるなと思ったのですが。

しかし後半から白けてしまいました。

息子のガールフレンドの父親である服部が大阪弁丸出しのやや下品な人物として設定されているのですが、佐知子は最初それに生理的な嫌悪感を持っています。

ところがいきなりこの男性にベラベラといろんなことを”告白”するのですね。

いくらなんでも犀田と肉体関係があったことまでは言わないでしょう普通。

息子が失踪して精神的に混乱しているにしても。

つねにおせっかいに身の回りの世話をしてくれているにしても。

極め付きはちょっとネタバレになりますが、冬子の母親である亜沙実と文彦のつながりです。

あまりにも唐突で強引過ぎます。

説得力なさすぎで、読んでいて「はあ?」と。

なんだかいきなり”神の思し召し”が舞い込んできたような唐突さです。

この作品を評価しておられる人たちは、これになんの違和感も感じなかったのでしょうか。

私は納得いきません。

カンザキミチコという文彦に想いを寄せる少女も出てくるのですが、そのキャラもなんだかなぁ。

ストーリーを成立させるための便利使いのようなキャラです。

最後は佐知子の服部に対しての心境の変化も示唆されているのですが、いやいやいや、それはないでしょ。(笑)

そのあたりの繊細さに欠けている気がします。

読み終えまして、後半に無茶苦茶詰め込んでやっつけてしまったという印象を持ちました。

評判ほどの作品ではないと思いますが、作者の実力は感じましたね。

でもぜひ次作を読みたいというほどではなかったです。

ラベル:小説
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2011年12月15日

「猛スピードで母は」長嶋有

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表題作の設定は母子家庭。

視点は小学校六年生の少年です。

当然父親不在の母子関係にスポットを当てた話となります。

母は結婚するかもしれないという男性を家に連れて きます。

主人公と一緒に近所の水族館に行ったりもするのですが、やがてその男性は家に遊びにこなくなります。

そしていじめに遭ったり友達と疎遠になったりまた近づいたり。

それがどうしたといった話なんですが、まあ純文学ですから山あり谷ありの展開ではありません。

母親は独身ですからもちろん恋人もできるでしょう。

その恋人と別れることもあるでしょう。

女として面があり、母親としての面もある。

そんな母親を見つつ、主人公には小学校六年生なりの毎日があります。

小学生としてはややませた感覚ではありますが、それを淡々と描いています。

併録された「サイドカーに犬」はこの逆で、娘から見た母に出ていかれた父親の話。

大人になった現在から子供の頃を振り返るという設定です。

母親がいなくなったあと通い妻のような女性が出入りするようになるのですが、その女性との交流といえばいいでしょうか。

これらの話がタイトルから推察されるように真正面からどっぷりではなく、さらりと軽い雰囲気で語られています。

どちらもあざとくはずしたタイトルだと思いますが、それも含めての作品です。

ほどよい読み心地でした。

ラベル:小説
posted by たろちゃん at 05:07| Comment(0) | TrackBack(1) | 『な』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする