2011年12月13日

「花宵道中」宮木あや子

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吉原を舞台にした連作短編集です。

遊女たちの切ない生き様が描かれています。

六編収められており主人公はそれぞれ違うのですが、同じエピソードであっても作品によって違う視点で書かれていますので、その多重な視点がこの連作に厚みをもたらしているのですね。

もちろん各主人公たちにはそれぞれの物語があります。

どの物語にも共通しているのは、遊女たちの一途な想いです。

自分ではどうにもならない境遇に生まれ、吉原という地で生きていかなければならない運命。

そんな中でも遊女たちは男に恋をします。

そして一生懸命に生き抜きます。

その生き様はあまりにも切な過ぎます・・・・。

作者は表題作の「花宵道中」で、R-18文学賞の大賞と読者賞のダブル受賞でデビュー。

やや粗い部分はありますが、デビュー作でこの筆力はなかなかのもの。

他の作品も読んでいきたいと思います。

ラベル:小説
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2011年12月11日

「陽気なギャングが地球を回す」伊坂幸太郎

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それぞれ特技を持つ4人の人物たち。

嘘を見抜くことができる成瀬。

演説が得意で口を開けば嘘ばっかりの響野。

スリの達人である久遠。

体内に精密な時計を持つ雪子。

この4人は銀行強盗です。

綿密な計画の下四千万円の強盗に成功しますが、逃走中に現金輸送車強盗に車をぶつけられその金を奪われます。

さてそれは偶然だったのか、それとも仲間の裏切りか。

手掛かりを追う成瀬と雪子は死体を発見します。

一方、雪子の息子がやっかいな事件に関わりそうになり、それの救出に向かう響野と久遠。

それぞれのエピソードがどのように結びつくのか・・・・。

まず銀行強盗という犯罪を飄々とコミカルに描いているのはさすがの伊坂節。

その飄々さは全編に渡っているんですけどね。

前半のさりげない描写や言動がラストに伏線として効いてくるあたりはやっぱり巧いなぁと思います。

ラストにはちょっとしたどんでん返しも用意されています。

まったく退屈させることなく最後まで引っ張る筆力。

現在第一線のエンターテイメント作家ですね。

読書の面白さというものを堪能させてくれた作品でした。

ラベル:小説
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2011年12月06日

「喰いたい放題」色川武大

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作家による食エッセイ集です。

阿佐田哲也として麻雀放浪記などで知られる作家ですが、開高健などのように食通として名を馳せておられた作家ではなかったように思います。

ご本人もあとがきで「だから私は、いわゆる食通でもなんでもないし、食通になろうとしているわけでもない。この本は、喰べ物をテーマにはしているけれど、豚のようになんでもガツガツ喰う男の話で、食通の美学をふりかざす向きからは顰蹙を買うだろう」と書いておられます。

グルメというよりはグルマンなんですね。

しかしやはりこだわりはお持ちです。

引越し先ではいい豆腐屋、ソバ屋、八百屋、魚屋などを検討されます。

同じくあとがきでこう書いておられます。

「喰べ物に関してもし凝るならば、たまに外出して喰べる贅沢な喰い物よりも、米とか、味噌とか、豆腐とか、日常茶飯の喰べ物を吟味したい」

ですよねぇ。

高級店で高いお金出せばそりゃいいものが出てきます。

そんなのは品のない贅沢であって、それよりも日常でごく普通に食べる物が本物であるということのほうがどれだけ贅沢なことであるか。

いや、本来なら贅沢ではなくそれが当たり前でなければならないのですが。

食通ではなく喰いしんぼうな著者の滋味あふれるエッセイです。

ラベル:グルメ本
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2011年12月04日

「ときめき時代1 つまさきだちの季節」折原みと

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マコこと山咲真琴は、昨日入学したばかりのピカピカの中学1年生。

みずがめ座のB型。

というような自己紹介の出だしで始まるジュニア小説です。

ジュニア小説なんて言い方は古いですか。(笑)

ティーンズ小説か、今はもっと大きな括りでライトノベルというべきなんでしょうか。

この本は93年の発行。

富島健夫らの「小説ジュニア」時代は存在を知りつつも読んでいませんが、「コバルト」が全盛の頃はこの類の小説はけっこう読みました。

というか、定期的に購入していましたし。(笑)

なので唯川恵山本文緒角田光代彩河杏)らのコバルト時代の作品なんかはけっこう読んでたんですよね。

それはともかくとしましてこの作品。

冒頭でいきなり星座だの血液型だの自己紹介するなど、今からすればかなりベタなパターンです。

そして二人の親友の紹介が同じく続きます。

もちろん親友二人のキャラは主人公を挟んで振り分けられています。

気が強いタイプのかに座AB型の池辺正美、お嬢様タイプのおとめ座A型の保坂麻巳子。

主人公のマコはプロポーションが太目で足も太く、顔は美人ではないというコンプレックスを持っています。

そんな主人公が教育実習生の恭介先生に恋をして・・・・という話なのですが。

作者の折原みと氏は漫画家です。

小説家としてはデビュー作となります。

表紙や挿絵はもちろん作者自身が描いておられるのですが、絵を見ますと太目で美人でもないはずの主人公がぜんぜん太くなく美少女なんですよね。(笑)

まあこれは少女漫画の伝統的パターンといえましょうか。

当然先生との恋は成就することなく終るのですが、それで一歩大人になったといったところ。

読者の年代や書かれた時代を考慮しましても、もうちょっと深みが欲しかったですね。

ラベル:小説
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2011年12月02日

「漫画の時間」いしかわじゅん

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漫画家いしかわじゅんによる漫画評論集です。

約100本(100人)ほどの漫画が取り上げられています。

漫画誌の掲載作だけではなく車雑誌やパソコン雑誌などの掲載作も取り上げておられ、筆者が幅広く漫画に目を通されているのがわかります。

そして普通の評論家とは違い、漫画家同士の付き合いも広い筆者ですから、業界裏話的な話題もあって楽しめます。

漫画家としての立場から書かれる漫画評論集というのは、やはりひと味違って面白いですね。

というか、これはいしかわじゅん氏ならではの面白さか。

自身が描かれる漫画はあまり面白くありませんけど。(笑)

ラベル:漫画本
posted by たろちゃん at 03:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 『い』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする