主人公の佐知子は四十一歳。
離婚して高校生の文彦と二人暮らしです。
佐知子は十六歳年下の、教習所教官である犀田と肉体関係を続けています。
その犀田というのが別れた夫の娘である冬子と付き合っている男なのです。
ある日息子の文彦が夜にごみ出しに出たまま帰宅しません。
そして付き合っている犀田の事故死。
いろいろと佐知子の周りに事件が起こります。
なぜ文彦は失踪したのか。
犀田の事故死はそれに関係があるのか。
冬子の存在はどのように関わっているのか・・・・。
二重三重の謎が絡み合い話が進んでいきます。
途中まではわくわくと読み進めることができました。
これはなかなかすごい小説だぞと。
なんと作者は五十六歳でのデビュー作なのです。
話題になっただけはあるなと思ったのですが。
しかし後半から白けてしまいました。
息子のガールフレンドの父親である服部が大阪弁丸出しのやや下品な人物として設定されているのですが、佐知子は最初それに生理的な嫌悪感を持っています。
ところがいきなりこの男性にベラベラといろんなことを”告白”するのですね。
いくらなんでも犀田と肉体関係があったことまでは言わないでしょう普通。
息子が失踪して精神的に混乱しているにしても。
つねにおせっかいに身の回りの世話をしてくれているにしても。
極め付きはちょっとネタバレになりますが、冬子の母親である亜沙実と文彦のつながりです。
あまりにも唐突で強引過ぎます。
説得力なさすぎで、読んでいて「はあ?」と。
なんだかいきなり”神の思し召し”が舞い込んできたような唐突さです。
この作品を評価しておられる人たちは、これになんの違和感も感じなかったのでしょうか。
私は納得いきません。
カンザキミチコという文彦に想いを寄せる少女も出てくるのですが、そのキャラもなんだかなぁ。
ストーリーを成立させるための便利使いのようなキャラです。
最後は佐知子の服部に対しての心境の変化も示唆されているのですが、いやいやいや、それはないでしょ。(笑)
そのあたりの繊細さに欠けている気がします。
読み終えまして、後半に無茶苦茶詰め込んでやっつけてしまったという印象を持ちました。
評判ほどの作品ではないと思いますが、作者の実力は感じましたね。
でもぜひ次作を読みたいというほどではなかったです。