短編集。
梁石日には作家として二つのルーツがあります。
まず大きなのは在日韓国人だということ。
これはもう作家梁石日のアイデンティティといえるでしょう。
そしてもうひとつはタクシードライバー。
作家になる前はタクシーの運転手をやっておられ、その経験を元に書かれた「タクシー狂躁曲」で作家デビューしておられます。
この短編集はそのどちらのテーマにも跨いでいるのですが、初期の習作集といったレベルでしょうか。
前半の「夢の回廊」から「さかしま」にかけては連作といえますが、取り上げられたテーマはいいものの物足りません。
これらは長編のためのプロローグにするべきではないかと思いました。
後半のタクシー運転手ものもまだ梁氏が作家としてなにを書くべきかの本領に目覚めておられないのでは。
梁氏にとってルーツではありましょうが、小手先の短編という感があります。
やはりこの作者、長編でガツンと読ませるタイプでしょうね。
構成の難はありますが(笑)、ディープなテーマでどっぷりと長編を読みたい。
ラベル:小説