2012年04月20日

「塩の街」有川浩

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巨大な白い結晶が東京湾を始めとして全国に落下。

結晶の正体は塩です。

理由はわかりませんが、その影響で人々が塩になってしまうのです。

次々と人が塩になって死んでいき、人口が3分の1になり、世の中は崩壊に向かっています。

そんな世界で暮らす元自衛官の秋葉と女子高生の真奈。

二人はどのように事態を乗り越えていくのか・・・・。

今や人気作家である有川浩のデビュー作です。

ライトノベルとして応募された作品ですが、なかなかしっかりと読ませますね。

自衛隊関連の記述については感心するほど。

世紀末的な設定の舞台で描かれているのは愛です。

かなりベタ甘な部分もありますが、これはまあしょうがないか。(笑)

ラストにちょっと肩透かしされた気がしました。

クライマックスの描写がないじゃないですか。

出撃した秋葉が目的を果たすのを緊迫感のある文章で読みたかった。

敢えてそれを省いたのかもしれませんけども。

挿入されたイラストはいいですね、これはいい。

絶妙です。

電撃文庫版では「塩の街」だけなのですが、この角川文庫版では「塩の街、その後」も収録されています。

まあお得といえばお得なのですが、蛇足な気もします。

いろんな視点が出てくるので一冊の作品としては散漫な印象を持ちました。

補足と読むか蛇足と読むかですが。

これに続く「空の中」、書評家の大森望氏も絶賛しておられます。

ぜひ読んでみたいですね。

ラベル:小説
posted by たろちゃん at 19:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 『あ』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年04月18日

「味な旅 舌の旅」宇能鴻一郎

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官能小説の大家、宇能鴻一郎センセイは美食家であります。

この本では北は北海道から南は奄美大島まで美味しいものを求めて旅をしておられます。

さすがに食べ物だけではなくその土地の文化に触れることも忘れてはおられません。

この本が書かれたのは昭和43年です。

だんだんと食べ物事情もよくなってきた時代ではありますが、食べ歩きのために全国を旅するというのはよほどの思い入れがないとできることではないでしょう。

作家という特殊なお仕事をしておられるせいもあったでしょうが。

私には到底できることではありませんので、このような本を読んで気分だけでも浸っています。(笑)

ラベル:グルメ本
posted by たろちゃん at 03:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 『う』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年04月15日

「四畳半神話大系」森見登美彦

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主人公はオンボロの四畳半に暮らす大学3回生。

2年前に薔薇色のキャンパスライフを夢見て入学したものの、女性や勉強その他もろもろ、さっぱりな生活を送っています。

小津という悪友や樋口という仙人の様な師匠(先輩)に引きずり回され、黒髪の乙女・明石さんとの仲も思うようになりません。

これもやはり映画サークル「みそぎ」に入ったせいなのか。

もし入学時に他のサークルに入っていれば薔薇色のキャンパスライフを謳歌できたのではないか。

主人公は苦悩(けっこう刺激的で楽しそうですが 笑)の大学生活を過ごすわけですが・・・・。

デビュー作「太陽の塔」に続いての第2作目ですが、やはり京都を舞台として大学生を描いています。

昔の書生さんのような研究者のようなやや大上段に構えたような文体、そんな文体で馬鹿馬鹿しいことをまじめに書くおかしさ。

そしてどうも二枚目になれない冴えない主人公。

そういったものがこの作者の持ち味ですね。

この作品は4つの章に分かれているのですが、それぞれ大学入学時に別の道を選択したらどうなったかというのが描かれています。

第一話なら主人公は「みそぎ」という映画サークルを選びます。

第二話では「弟子求ム」というようわからんビラに惹かれ、第三話では「ほんわか」という脱力系のソフトボールサークルに入り、最終話では「福猫飯店」という秘密機関に入ります。

大まかな流れは共通なのですが、当然それぞれ違うキャンパスライフが展開されるわけです。

特に最終話は四畳半の部屋から出られないという完全なSFです。

玄関から外に出ればそこにも同じ部屋が。

では窓から外に出てみるとやはりそこにも同じ部屋が。

「八十日間四畳半一周」というタイトルも馬鹿らしいやらなるほどやら。

真面目なようなふざけているような、どうも憎めない登場人物たちが織り成す青春物語。

まさしく「森見ワールド」と呼ぶべき独特の世界を読ませてくださる作家です。

ラベル:小説
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2012年04月13日

「グルメの嘘」友里征耶

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飲食店を評価するライターはたくさんいますけども、どうもいいことしか書かない人が多い。

そのいいことというのもまるで店の回し者かという内容だったりします。

ほとんど宣伝マンのようなものですね。

店や飲食業界と癒着してメシを食っているライターが多いということです。

そんな人たちの情報を真に受けて店に行くとえらい目にあったりします。

著者はそのような現状に憤慨し、あくまで一般客としての立場で飲食店を覆面評価しようとデビュー。

なかなか辛口で痛快な評価をしておられます。

それゆえに敵も多いわけですが。(笑)

しかし書いておられることは真っ当です。

なので痛いところを突かれた業界の人たちは目の敵にするわけですね。

また素人からの反発も多々あるようです。

物言いが偉そうに感じるのでしょうか。

「おまえごときがなにを」といったところでしょう。

一種の近親憎悪ですかね。

もちろん的外れな評価もあるでしょうし、好みの違いや見解の違いというのもありましょう。

お気に入りの店を批判されたらいい気持ちはしないでしょうし。

私は「もっとやれやれ!」なんて楽しみながら氏の言動を見ていますけども。

某料理評論家と店の癒着批判や、某料理学校家元の経歴詐称問題、某女性フードライターの訪問件数自慢などへの噛みつきはなかなか楽しいものがありました。(笑)

ま、そんなことでいちいち大騒ぎしなくてもな感はありますが、こういう人もいなくてはだめでしょう。

ラベル:グルメ本
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2012年04月11日

「息がとまるほど」唯川恵

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八つの短編が収められています。

もちろん主人公はすべて女性。

最初の「無邪気な悪魔」はオフィス用品を扱う会社に入社してから5年目のOLが主人公。

50代の上司と不倫しています。

そして同僚の男性とも付き合っています。

先のない不倫よりもプロポーズしてくれた同僚を選ぼうと決意し、上司といつものバーで最後のデートをするのですが。

それを後輩の女子に目撃されます。

取りあえずは上手くその場をしのいだつもりですが、会社で言いふらされるのではないかと気が気ではありません。

やがてその後輩が結婚することになり、主人公や不倫相手の上司、付き合っている同僚なども披露宴に招待されます。

そこで後輩がとんでもないスピーチをします。

あるバーにて「思いがけないカップルを見てしまいました」。

焦りまくる主人公と上司。

彼女たちがとったリアクション、そしてスピーチの内容とは・・・・。

最後にちょっとひとひねりありまして、それがまたピリッと辛いといいますか、ドツボといいますか。

その他「雨に惑う」なんかも女性のプライドや嫉妬といいますか男性にはないようなドロドロ感が描かれていて、女性という生き物の気持ち悪さがありました。

こういう嫉妬とか優越感、プライド、打算といったものを扱う場合、やはり男性よりも女性ですね。

作者にしても作中人物にしても。

もちろん現実においても。(笑)

ラベル:小説
posted by たろちゃん at 04:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 『ゆ』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする