2012年05月31日

5月の一冊

今月読みましたのは以下の14冊です。

・「東京・食のお作法」マッキー牧元
・「虹と修羅」円地文子
・「放送禁止映像大全」天野ミチヒロ
・「超有名料理店 オーナー11人の店づくり」東京美食マガジン編集部編
・「羊の目」伊集院静
・「作家ってどうよ?」鈴木光司 馳星周 花村満月 姫野カオルコ
・「タイムスリップコンビナート」笙野頼子
・「文学賞メッタ斬り!リターンズ」大森望 豊崎由美
・「おいしい おいしい」大橋歩
・「クラッシュ」楡周平
・「いつかパラソルの下で」森絵都
・「蘆屋家の崩壊」津原泰水
・「トイレは小説より奇なり」酒井順子
・「時が滲む朝」楊逸
   
「虹と修羅」、円地文子を知る上で貴重な3部作の最終巻。

まさに修羅な人生でした。

「羊の目」、侠客の世界を描いた小説。

でもちょっと浄化させ過ぎという気がしましたが。

「タイムスリップコンビナート」、現実と虚構が混乱する笙野頼子のマジックリアリズム。

読む人を選びますね。

「文学賞メッタ斬り!リターンズ」、やはり面白い。

文壇に興味ある方はぜひご一読を。

「クラッシュ」、優等生的で破綻のない文章は魅力でもあり物足りなさでもあります。

でもここまで読ませる筆力は素晴らしい。

「いつかパラソルの下で」、家族を描いた小説です。

角田光代、絲山秋子、平安寿子らの系統を感じました。

「蘆屋家の崩壊」、興味をそそられて読んでみたのですが。

期待はずれでした。

「時が滲む朝」、この作品に関してはおとなしい梁石日といった印象。

芥川賞の授賞はちょっと甘い気がします。

今月の一冊ですが、「クラッシュ」楡周平を推します。

久しぶりにワクワクとページをめくる楽しみを味わえました。

楡氏のこのシリーズは西村寿行なんかと比べるとどうもかっちりと型にはまっておりもっとヤンチャに暴れてもいいように思うのですが、比べること自体間違っているかもしれません。

しかし堪能した一冊でした。

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posted by たろちゃん at 18:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 今月の一冊 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年05月29日

「時が滲む朝」楊逸

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中国の小さな村から大学に進学した二人の青年。

中国の民主化を目差すため運動に参加するのですが、待っていたのは天安門事件。

しばらくして二人は飲み屋で暴れ、退学処分となります。

その後主人公は日本に渡り結婚し子供もでき、かつての仲間は理想を追う運動から金儲けのビジネスに移行するわけですが、主人公はずるずると過去を引きずります・・・・。

作者は中国人。

「日本語を母国語としない作家として初めて芥川賞を受賞」したと話題になりました。

それはたしかにすごいことだと思います。

でもそのプロフィールがちょっと先走りしすぎてませんかね。

たしかに悪くない小説ですし、ある意味王道の純文学という匂いもあります。

しかし私が感じたのは、このようなテーマなら梁石日氏が散々書いておられるではないかと。

もちろん中国人と朝鮮人という違いはありますけども。

主人公が祖国を想い、運動し、もどかしさを感じ、にもかかわらず報われない。

読者の視点からすれば青すぎる思想であったりします。

梁石日氏はこれを読み応えあるエンターテイメントに仕上げてこられました。

この作者の楊逸氏は純文学に仕上げられましたが、さて小説としての出来はどうでしょうか。

むしろ私は楊逸氏が今後どのような作品を書いていかれるのかに興味があります。

ラベル:小説
posted by たろちゃん at 04:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 『や』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年05月27日

「トイレは小説より奇なり」酒井順子

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表題章を始め、3章からなるエッセイ集。

「トイレは小説より奇なり」では、女性の立場からトイレについてのさまざまな見解を述べておられます。

なぜ女性は水を二度流しするのか。

もちろん音を消すためなのですが、こんなことをするのは日本人だけ。

その心理について分析されます。

その他トイレットペーパーや公衆トイレでの行列について。

「青年の単語帳」では普段皆が使う言葉についてのこだわりを見せられます。

「ダサい」とか「すごい」といった言葉、そして「・・・・みたいな」といった中途半端な言葉について。

なぜ女性の悲鳴は「キャーッ」なのか、など。

「春夏秋冬いとをかし」では各月のイベントについて。

どれもさすがに著者ならではの視線と語り口だなと感心させられます。

ラベル:エッセイ
posted by たろちゃん at 07:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 『さ』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年05月25日

「蘆屋家の崩壊」津原泰水

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定職に就かずふらふらしている主人公と怪奇小説を書く小説家のコンビがいろんな事件に遭遇する短編集。

表題作の「蘆屋家の崩壊」は蘆屋道満や安部晴明といった名前が出てくる陰陽師系なお話。

といってもそれらの人物が出てきてどうこうというわけではないのですが。

こういう類は好きではないせいか話自体どうとも思わず、私には魅力のない作品です。

解説で皆川博子氏が高く評価しておられるのが「水牛群」という作品。

というかそれ以外には触れておられない。(笑)

私もこの中ではこれくらいかなぁという印象です。

あとは「超鼠記」、「猫背の女」か。

主人公と作家のコンビはいいのですが、どちらもいまいち魅力に乏しい。

それぞれの話もどうもぱっとしない。

むしろ主人公たちを共通にした連作にせず、単独の作品として練ったほうがよかったのではと思えました。

ラベル:小説
posted by たろちゃん at 19:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 『つ』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年05月23日

「いつかパラソルの下で」森絵都

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主人公の柏原野々は厳しすぎる父と馬が合わず5年前に家を飛び出し、彼氏の家に転がり込んで同棲中の25歳。

天然石を扱うショップで働いています。

そんな神経質なほどに厳格だった父も亡くなったのですが、実は愛人がいたことが判明。

そのせいか母の様子もおかしくなってしまいました。

愛人と会った野々は父のことをいろいろと聞くのですが、「自分には暗い血が流れている」と漏らしたことがあったそうです。

「暗い血」とはどういう意味なのか。

野々は兄や妹と一緒に父の故郷である佐渡へ行き、父のルーツを探ります・・・・。

児童文学で数々の賞を受賞してこられた作者が書いた、大人の小説です。

そのあたり意識しておられるのでしょうか、いきなり性描写で始まります。

そして父の愛人問題にしても主人公の不感症問題にしても、扱っておられるのは性的なことなんですね。

しかしそれがテーマだというわけではありません。

厳格すぎた父が子供たちに与えた影響。

そうせざるを得なかった父のそれまでの人生。

父のルーツを探ることにより、今さらながらに父を知り、自分を知ることになります。

バラバラになっていた家族が父の死という出来事をきっかけに、あらためてしっかりと家族というものを認識するあたりが温かく爽やか。

微笑ましい小説でした。

ラベル:小説
posted by たろちゃん at 12:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 『も』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする