2012年05月10日

「羊の目」伊集院静

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浅草で侠客として売り出してきた浜嶋辰三。

内股に牡丹の刺青がある夜鷹がそんな辰三に自分の子を捨て子の形で育てさせることになります。

その子が主人公となる神埼武美です。

侠客の辰三に育てられた武美は、親である辰三のためならいつでも命を捨てる覚悟があります。

辰三の組が大きくなるにつれ、もちろんいろいろな諍いも出てきます。

武美はひたすら親である辰三のために尽くすのですが・・・・。

侠客の世界を描いた小説です。

そんな世界で辰三しか目に入らないほど純粋な心を持つ武美の生涯を描いています。

最初はなかなかの侠客だと描かれている辰三ですが、保身のため平気で子分を売り、子である武美でさえ売る俗物ぶり。

それはないやろと読みましたが、やはりそれくらいでないと生き残っていけない世界です。

そしてこれもまあ武美の純粋さを際立たせる演出となっていましょうか。

キリストの教えも武美の心に入ってきます。

辰三のため殺し屋にまでなる武美ですが、それでもひたすら心は純粋なんですね。

純粋な人間がそもそもそんなことをするかという矛盾はあるんですけども、それほど武美には辰三しか見えておらず絶対的な存在だということです。

どろどろした世界を描いているのですが、最後には清々しい印象の残る読み応えある一冊でした。

ラベル:小説
posted by たろちゃん at 04:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 『い』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする