時代は1973年です。
質屋のオヤジが殺されたのですが、犯人はわからずじまい。
そのオヤジの息子であった桐原亮司と、オヤジの愛人の娘の西本雪穂。
この二人がこのあとのストーリーの核となっていきます。
質屋のオヤジの件はまあ物語の発端であり、この事件自体はさほど重大ではありません。
といっても拠り所にはなっていますが。
メインは人並みはずれた美貌を持つ雪穂という女の生き様でしょう。
少女から大人になるまでの期間が描かれているのですが、雪穂が関わる人物には必ず不可解な不幸が訪れます。
それは偶然なのか、それともすべて雪穂が仕組んだことなのか。
自分の人生を思い通りにするために。
そこに桐原亮司がどのように関わってくるのか・・・・。
ざっとそういうところですが、しかし私には850ページも引っ張ってラストがこれかよという不満があります。
とにかく不満は多いですね。
それは作者が今回試した手法に私が馴染めなかったせいかもしれませんが。
すべてについて説明不足なんです。
主要人物の雪穂を敢えて淡々と書いておられます。
亮司にしても同じく。
なので読者としては感情移入できず、なぜそのような生き方をしているのかがわからない。
その二人がなんで絡むのか説得力がない。
質屋のオヤジが殺された理由も同じく。
雪穂や亮司の内面を描くことなく外側だけで埋めていくというのもひとつの手法ではあるでしょうが、私は納得いきませんでした。
この作品は第122回直木賞受賞作になり落選しています。
これについて書評家の豊崎由美氏や大森望氏が批判しておられるのですが。
渡辺淳一氏がむちゃむちゃな誤読だと。
たしかに渡辺氏の評価についてはどうかなと思うことも多々あるのですが、この作品については私は同意見です。
「より深く誠実に、主人公の内面に分け入り、踏みこんで書くべきではないか」
そのように書かなかったのは作者の意図です。
しかし私も渡辺氏と同じく踏みこんで書いてほしかったと思います。
これが直木賞だとしたら私は納得いきませんね。
それなりには面白かったと思いますが、絶賛するような小説ではないでしょう。
あ、もしかしたら私は東野圭吾作品とは相性悪いのかも・・・・。(笑)
posted by たろちゃん at 04:43|
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