2012年06月10日

「絲的炊事記 豚キムチにジンクスはあるのか」絲山秋子

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絲山秋子。

芥川賞作家です。

私の好きな作家の一人であります。

そんな絲山氏の食エッセイ。

でもあちこちの食べ歩き自慢ではありません。

独身で一人暮らしのようでいらっしゃいますので(?)、せっせとご自分で料理して食べた結果をエッセイで報告するという内容。

「Hanako」に連載されていたようです。

毎回添えられているイラストは絲山氏によるもの。

骨太で味わいがあり、いいじゃないですか。

サブタイトルに「豚キムチにジンクスはあるのか」とあります。

同タイトルの章があるわけで、つまりこの章を氏はメインに選ばれたということですが。

その章でこういうことを書いておられます。

豚キムチには欠点があると。

『彼氏とかに「今度豚キムチを作ってあげるねっ」とか言えないところです。得意料理はと聞かれて「ぶ、ぶ、豚キムチ」というのもちょっとオマエ程があるだろって目で見られます。』

いやいやいやぁ、私なんかそんなこと言われれば思いっきり期待しますけどね。

豚キムチ作ってくれる女性大歓迎ですが。

まあそれは置いときまして。

ファンとしては絲山氏の食に対するこだわりを楽しめる一冊だと思います。

ラベル:グルメ本
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2012年06月08日

「ピアノ・サンド」平田俊子

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二篇収録。

表題作は、女性主人公が友人から百年前のフランス製ピアノを預かってくれないかという話で始まります。

置く場所などないのですが、どうにかならないでもない。

主人公はだんだんとそのピアノを心待ちするようになります。

その時間経過を軸に、主人公の過去や現在の生活が描かれていきます。

もうひとつは「ブラック・ジャム」という作品。

意識のない寝たきりの母親を持つ女性主人公の話。

腕にある火傷のケロイドがコンプレックスです。

なぜか杖をついた男に惹かれ、振り回されます。

どちらの作品もトーンは明るくありません。

特に「ブラック・ジャム」は不穏な雰囲気が漂っています。

腕に火傷跡のある主人公と足の悪い男。

意識のない寝たきりの母親。

主人公の家の設定で、一階に仏壇がありその真上の二階には雛人形が飾ってあるというシチュエーション。

なんとも不安定な設定です。

「ピアノ・サンド」にしても百年前のピアノという道具が人間の人生の儚さや虚しさのようなものを浮き立たせているように思えます。

なんといいますか、このちょっとアンニュイで不穏な雰囲気がこの作家の持ち味なんでしょうか。

他の作品も読んでみたいですね。

ラベル:小説
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2012年06月06日

「天狗の落とし文」筒井康隆

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これはショートショートなんでしょうか、エッセイなんでしょうか。

とにかく小ネタがたっぷりと詰まっています。

裏表紙を見ましたら356篇だそうです。

全作、盗作自由で使用権フリーとのこと。

だからといってこここからアイデアをそのまんま使用する作家がどこにいますか。

意地が悪いですねぇ、筒井氏も。(笑)

パクるならパクってみろという挑発的な投げかけだと思えますし、そんな意図自体がまたネタなんですよね。

内容は全体を通じて大部分が夢からのアイデアだと思われます。

でもこれって氏にとっては篩いにかけて落とされたアイデアでしょう。

言い方は悪いですが、出がらしではないかと。

読んでいてだからなんなのと思う話も多々ありますし。

これはこれでショートショートだと思います。

しかし私はたいして面白くありませんでした。

ラベル:小説
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2012年06月04日

「蹴りたい田中」田中啓文

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第二次世界大戦下で鬱屈する少年兵たちの、複雑な心象を描破した珠玉作「蹴りたい田中」で第130回茶川賞受賞後、突如消息を絶った伝説の作家田中啓文。
以来10年、その稀有なる才能を偲んで、幼少時から出奔までの偉大なる生涯を辿る単行本未収録作8篇+αを精選、山田正紀、菅浩江、恩田陸などゆかりの作家・翻訳家・編集者らによる証言、茶川賞受賞時の貴重なインタビュウ「未到の明日に向かって」までを収録した遺稿集。
(文庫本裏表紙より)

なんとまあ馬鹿馬鹿しい本でしょうか。(笑)

茶川賞を受賞した作者の遺稿集という形式の短編集。

タイトルからして笑えますよね。

「蹴りたい田中」。

もちろん綿矢りさの「蹴りたい背中」のパロディです。

内容はといいますと、いやはやこれが・・・・。

私は「地上最大の決戦 終末怪獣エビラビラ登場」がよかったですかね。

もうめちゃくちゃです。

こんな本を出した作者と編集部の決断に拍手。(笑)

ラベル:小説
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2012年06月02日

「帝国ホテル 厨房物語 私の履歴書」村上信夫

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帝国ホテルの総料理長だった著者の自伝です。

ホテルオークラの小野正吉氏と並んでフランス料理界の重鎮でしたね。

料理人の自伝は今まで何冊も読んできましたが、どれもパターンは同じです。

どんな少年時代だったか、料理と出会ったきっかけは、なぜ料理の世界に進んだのか。

そしてどこそこのどのような店で修行してきたのか。

この本もそのパターンではあります。

しかし今まで読んできたスターシェフらの本とはひと味違います。

それはやはり時代もあるでしょうし、それに伴った経験の違いもあるでしょう。

戦場での話なんて他の料理人の本ではなかなか読めません。

東京オリンピック選手村食堂の料理長就任や、エリザベス女王をもてなした経歴などはさすがです。

そしてなにより氏のお人柄がとてもよく伝わってくるんですね。

多趣味であり、生涯現役の料理人として過ごされた著者の功績と魅力を知ることのできる一冊です。

ラベル:グルメ本
posted by たろちゃん at 04:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 『む』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする