二篇収録。
表題作は、女性主人公が友人から百年前のフランス製ピアノを預かってくれないかという話で始まります。
置く場所などないのですが、どうにかならないでもない。
主人公はだんだんとそのピアノを心待ちするようになります。
その時間経過を軸に、主人公の過去や現在の生活が描かれていきます。
もうひとつは「ブラック・ジャム」という作品。
意識のない寝たきりの母親を持つ女性主人公の話。
腕にある火傷のケロイドがコンプレックスです。
なぜか杖をついた男に惹かれ、振り回されます。
どちらの作品もトーンは明るくありません。
特に「ブラック・ジャム」は不穏な雰囲気が漂っています。
腕に火傷跡のある主人公と足の悪い男。
意識のない寝たきりの母親。
主人公の家の設定で、一階に仏壇がありその真上の二階には雛人形が飾ってあるというシチュエーション。
なんとも不安定な設定です。
「ピアノ・サンド」にしても百年前のピアノという道具が人間の人生の儚さや虚しさのようなものを浮き立たせているように思えます。
なんといいますか、このちょっとアンニュイで不穏な雰囲気がこの作家の持ち味なんでしょうか。
他の作品も読んでみたいですね。
ラベル:小説