2012年06月18日

「帽子」吉村昭

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短編九編収録です。

どれも非常に地味な話なのですが、ふっと心の琴線に触れるのですね。

表題作の「帽子」は癌に冒された妻を持つ男性が主人公。

病院からの帰り道、車から見えたビルの二階にある帽子屋に妻が興味を持ちます。

ベッドで寝たきりになっている妻に、夫はその帽子屋でさまざまな帽子を買ってきて与えてやります。

「買い物籠」では医者である主人公とその家に昔家事手伝いとして働いていた女性との話。

ある飲み屋で客とホステスとして再会します。

それをきっかけに主人公が過去を振り返り、境遇が語られます。

それだけの話です。

再会して男と女の仲になってどうのこうのとはなりません。

その他の作品も同じくでして、人生のささいな日常の中のちょっとイレギュラーな出来事を切り抜いたような話です。

地味ながら味わい深い。

はっきりとストーリーのあるエンターテイメントも読み応えあっていいですが、こういうのもまたしみじみいいいですね。

posted by たろちゃん at 04:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 『よ』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする