2012年11月09日

「野ブタ。をプロデュース」白岩玄

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高校生の桐谷修二はクラスの人気者です。

誰に対してもそつなく対応し、場を盛り上げます。

しかし修二にとってはそれは本当の自分ではなく、あくまでそんな"桐谷修二"を演じているのです。

ある日、修二のクラスに転校生がやってきます。

名前は小谷信太。

どうしようもなくダサくてデブでブ男です。

信太はクラスの人気者である修二に憧れ、弟子入りを志願します。

修二は野ブタと名付け、信太を人気者にすべくプロデュースを始めます・・・・。

かなり軽いノリで書かれており、読み始めはこの調子で最後まで付き合うのかよとちょっとうんざりしたのですが、慣れてくるとこれがなかなか面白い。

けっこう笑えます。

さて野ブタは果たして人気者になることができるのか・・・・。

芸能界にはプロデューサーなんて肩書きの人がいまして、若い女の子なんかを国民的アイドルに仕立て上げています。

それの縮図のようなのがこの小説にはありまして、プロデュースするほうもされるほうも虚像だなぁと思えるのですね。

今はいいけど明日はどうなの、と。

私はラストに虚しさを感じましたけどね。

ところでこの小説は芥川賞の候補にもなりました。

どう考えても方向は直木賞だと思いますが。

ラベル:小説
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2012年11月07日

「もっと塩味を!」林真理子

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美佐子は食べることが好きで優れた味覚を持っています。

そんな美佐子が生まれて初めてフランス料理を食べたのは昭和40年代。

今ほどあちこちにフランス料理の店などなかった時代です。

初めて食べたフランス料理に美佐子は感動します。

いずれは自分でフランス料理の店を持ちたいと思い、知り合ったフランス料理の料理人大久保を追いかけ、家も子供も捨てて和歌山から東京に出ます。

しかし大久保は美佐子と一緒になる気はなく、美佐子は次に知り合った料理人安川直人と再婚します。

そして大久保との共同経営ですが、いよいよ東京から1時間半ほどの場所にある三浦半島に店を持つことになります。

最初はわざわざそんなところまで食べに来る客などいなかったのですが、やがてマスコミにも取り上げられ人気店に。

その後パリの「ルドワイヤン」が売りに出され、その店を買い取るというデパートから直人にシェフへの誘いがあります。

話に乗ってパリに渡ったのはいいものの、デパートの倒産でその話はつぶれてしまい、2人は宙ぶらりんに。

しかし契約違反としてデパートから受取ったお金を資金にして、2人はパリに店をオープンするのです。

店は評価され、ついにミシュランの1ツ星を獲得するのですが・・・・。

小田原にあった「ステラマリス」の吉野シェフやニースの「ケイズ・パッション」の松嶋シェフをモデルにしておられるような設定。

現在と過去が交互に語られていく構成です。

あこがれの店を持ち、日本で成功し、やがてはパリでミシュランの星を。

これを大きな流れとし、そこに主人公の夢やら恋愛やら欲やら現実的な問題が関わってくる。

さすがに女の欲や嫉妬を書かせるとこの作者は実に下品な(笑)本領を発揮されます。

でも読み終わってあまり満足感はなかったですね。

最後の主人公のセリフもいまいち理解できませんでしたし。

そしてタイトルもなんだか。

小説としての出来はともかく、フランス料理に興味のある人ならそれなりに楽しめるんじゃないでしょうか。

ラベル:グルメ本 小説
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2012年11月05日

「匂い立つ美味 もうひとつ」勝見洋一

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前作「匂い立つ美味」の第2弾です。

タイトルからもわかるように匂いをテーマにした食エッセイです。

でも本文中では匂いではなく臭いと表記されていますが。

なのでいいニオイというよりも、むしろクサイという意味で取り上げておられます。

癖のあるものほど病み付きになるというあの類の意味合いですね。

といっても別にクサイ食べ物ばかりを取り上げておられるわけではありませんが。

いろんな食材や料理に自身の思い出やエピソード、フィクションを絡ませて。

そんな内容です。

ラベル:グルメ本
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2012年11月03日

「生きる」乙川優三郎

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藩主を亡くした又右衛門。

藩主にかわいがられ現在の地位を築いた又右衛門にとって、忠誠を示すための追腹は当然との認識があります。

しかし家老から追腹を禁じられます。

本来なら藩主を追って腹を切り忠誠を示すべきところ、又右衛門は生きざるを得ないのです。

当然周りの目は白くなります。

なんでいまだに腹を切らずに生きておるのかと。

そんな中、娘の婿が腹を切ります。

なんとかそれを阻止してほしいと娘に懇願されていたにもかかわらず。

娘は又右衛門に言います。

「ちくしょう」

そしてそんな又右衛門を不甲斐なく思っていた息子の五百次もやはり腹を切ります・・・・。

なんともやるせない話ですね。

武士の矜持と上からの禁令による葛藤。

そして個人的な思い。

それらが錯綜するわけですが、結果的にはなにもできなかった無力感が残るわけです。

その他の二編もやはり明るい話ではありません。

でもラストに微かな光がありますけども。

この作者の作品は初めて読みましたが、藤沢周平をもっと凛々しくシビアにした感じでしょうか。

他の作品もぜひ読んでいきたいです。

ラベル:時代小説
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2012年11月01日

「内面のノンフィクション」山田詠美

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対談集です。

顔ぶれが顔ぶれだけに、やはりその内容は文学や創作についてということになります。

それを通して恋愛感や国民性といったものが語られていきます。

山田詠美というと私にとってはなんだかアナーキーなイメージがあり、いまだにほとんど小説は読んでいません。

ですけどこうやって対談を読みますと決してそんなことはなく、けっこう肩の力の抜けた感じの人なんですね。

ちなみに対談に登場する人物を列記しておきましょう。

野坂昭如、小島信夫、大島渚、井上ひさし、島田雅彦、谷川俊太郎、佐伯一麦、吉田ルイ子、瀬戸内寂聴

錚々たるメンバーです。

posted by たろちゃん at 18:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 『や』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする