2012年12月31日

12月の一冊

今年もいよいよ終わりですね。

今月は読んだのは15冊でした。

・「山猫の夏」船戸与一
・「太陽と毒ぐも」角田光代
・「暴論 これでいいのだ!」坪内祐三vs福田和也
・「となり町戦争」三崎亜紀
・「ありのすさび」佐藤正午
・「淫らな罰」岩井志麻子
・「「王様のブランチ」のブックガイド200」松田哲夫
・「風の盆恋歌」高橋治
・「八代目 坂東三津五郎の食い放題」八代目 坂東三津五郎
・「カミングアウト」高殿円
・「食いものの恨み」島田雅彦
・「黒冷水」羽田圭介
・「ほんまにオレはアホやろか」水木しげる
・「酒(しゅ)にまじわれば」なぎら健壱
・「花霞」芝木好子
    
「山猫の夏」、読み応えのある冒険小説。

ただ同じ言い回しがやたら出てくるのはちょっと気になりましたけども。

「太陽と毒ぐも」、いろんなわけありのパートナーを持つカップルを描いた短編集。

コミカルで哀愁のある内容がよかったです。

「暴論 これでいいのだ!」好き放題いろんなことについて言論しておられます。

幅広いテーマに感心。

「となり町戦争」、作者の狙い通りの仕上がりかもしれませんが、私自身はどうも肩透かしな印象でした。

ちょっと淡々としすぎかなと。

「ありのすさび」、エッセイ集。

小説と同じく佐藤正午の飄々としたキャラクターが窺えます。

「淫らな罰」、素材はいいんですけど、どうも味付けに失敗している感じ。

よけいな味付けはいらないという気がしました。

「風の盆恋歌」、ベタな話ではあります。

でも祭りを背景にした大人の恋愛といった雰囲気がいいですね。

「カミングアウト」、他人にはいえないさまざまな思いを持った主人公たち。

そんな人物の苦悩に上手くエピソードを絡めていると思います。

「食いものの恨み」、食エッセイですが島田雅彦らしいシニカルな文章。

笑ってしまいました。

「黒冷水」、中学生と高校生の兄弟の他愛ない憎しみあい。

それがエスカレートする冷ややかさや残酷さが半端ではありませんでした。

「花霞」、表題作よりも芸事に打ち込む芯の強い女を描いた他の収録作に魅力がありました。

こういうジャンルはやはりいいですねぇ、芝木好子。

さて、今月の一冊はどうしましょう。

「風の盆恋歌」や「花霞」といったベテランの味わいも実によかったのですが、予想外に楽しめたということでこれを選んでみましょうか。

「カミングアウト」高殿円。

Cimg2072

posted by たろちゃん at 00:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 今月の一冊 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年12月29日

「花霞」芝木好子

Cimg2077

短編集。

表題作は暴力的な良人に捨てられ行く当てもなく、旅館「花霞」で働くことになった久代という女の話。

幽霊のように陰気な女です。

しかし「花霞」で働いているうちにだんだんと生気を取り戻してきます。

ある仕事休みの日、久代はおめかしをして出かけていくのですが、帰ってきたときにはスカーフに血を滲ませ両手にも包帯という痛ましい姿。

貸していた金を返してもらいに別れた良人に会いにいったのですが、ビール瓶で頭を殴られたとのこと。

しかしそんなことをされてもまた男のもとへ戻っていくのです・・・・。

けっこう典型的なパターンの小説ですね。

だめな男だとわかっているのですがどうにも別れられないという。

男の私にはよくわからない心理です。

表題作よりも他の作品に私はいいものがあったように思います。

中でも舞踏の世界を描いた「舞扇」と「芸術家の扇」がよかったです。

こういう世界はまさに芝木文学の骨頂という気がします。

ラベル:小説
posted by たろちゃん at 04:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 『し』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年12月27日

「酒(しゅ)にまじわれば」なぎら健壱

Cimg2078

タイトルからわかるように酒にまつわるエッセイ集です。

ご自身のことだったり周りの人のことだったり。

やはり酒飲みというのはいろんなエピソードを抱えているものですね。

もちろん失敗もあるのですが、それでも懲りないのが酒飲みという人種です。

ジミー時田のエピソードなんかいいですね。

アメリカのカントリーソングのイベントで優勝しもらった大切な賞状を、帰国した凱旋ライブで「こんな紙切れをもらうために歌ったわけじゃない」と酔った勢いでビリビリに破ります。

まさしく「漢」だと思わず唸る著者。

後日ジミー氏の自宅を訪れると、破いた賞状はセロテープで補修され額に飾られていたといいます。(笑)

飲むと気が大きくなりますからねぇ。

著者は自分のことを「あたし」と書いておられますが、これが江戸っ子ぽくていいです。

ラベル:グルメ本
posted by たろちゃん at 04:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 『な』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年12月25日

「ほんまにオレはアホやろか」水木しげる

Cimg2079

「ゲゲゲの鬼太郎」で知られるマンガ家、水木しげるの自伝的エッセイです。

子供時代から兵隊として過ごした南方での話、そして帰国してからの終戦後の話。

戦争では左腕をなくされ、帰国してからもひたすら貧乏生活をしておられたようですが、なぜかまったく暗いトーンがないんですね。

これは水木氏の天性のお人柄でしょう。

悲惨な話のはずがどこかユーモラスにさえ感じられます。

南の島の人たちと仲良くなる件は、なんともほのぼのしたものです。

紙芝居から貸本マンガ、そして雑誌マンガの世界へ。

日本のマンガ史をたどることもできる内容です。

ラベル:漫画本
posted by たろちゃん at 03:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 『み』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年12月23日

「黒冷水」羽田圭介

Cimg2080

高校生の兄の留守中に部屋に忍び込み、あれこれと"部屋あさり"を繰り返す中学生の弟。

弟は証拠を残していないつもりですが、兄にはバレています。

やがて兄はトラップを仕掛けるようになります。

やはり兄のほうが一枚上手。

そんな兄に追い詰められていく弟は・・・・。

最初はしょーもない兄弟喧嘩なんですよね。

弟の"部屋あさり"の目的もエロ本とかエロビデオとか。

まあ中高生のレベルだとそんなもんだろうけど、このレベルで最後まで引っ張る気かよと苦笑しつつ読んでいきますと、兄の仕掛けるトラップが洒落にならない。

そして後半は弟がドツボに嵌っていきます・・・・。

作者は当時17歳とのことですが、歯切れよく読ませる文章力はなかなかのもの。

後半の弟の堕ち具合はちょっと行き過ぎかなという気がしましたが。

最後の章は違和感なきにしもあらずですが、夢だと思ってほっとして目覚めたらシビアな現実が待っていた的な展開です。

そしてラスト1行の兄の独白。

まさしく黒冷水。

ラベル:小説
posted by たろちゃん at 04:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 『は』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする