中編4編を収録。
表題作は建築設計の会社を青柳という男と共同経営している咲子が主人公。
この夏で40歳になります。
夫が居ますが冷めた関係。
大物建築家の渡良瀬と不倫の関係を続けているのですが、情事のあとで渡良瀬が言います。
「なんだか、硬いね」
左の胸にしこりがあるというのです。
病院で検査してもらうとそれは乳癌でした。
乳房を切除しなくてはならないという深刻な問題を抱え、そこに冷めている夫との心のすれ違い、愛人の渡良瀬との関係、そして会社を共同経営する青柳の体の異変など、さまざまな問題を抱えることになります・・・・。
デビュー作の「カフーを待ちわびて」は癒し系の青春ラブストーリーでしたが、本作は中年女性を主人公にしたちょっとやりきれないような話です。
体の異変、夫や愛人との関係、仕事のパートナーのこと。
それら『暗』な内容を夏の沖縄という『明』なシチュエーションを背景にし、40歳という一区切り的な年齢を迎えた女性を描いています。
設定はビシッときてますよね。(笑)
他の収録作も同様にあまり明るい話ではありません。
ですがこういう人生の襞を分け入って描いたような小説が私はいいですね。
デビューが「ラブストーリー大賞」だけに軽く見られがちかもしれませんが、幅広く書かれる実力派の作家だと思います。
ラベル:小説