前作の「枯木灘」で腹違いの弟の秀雄を殺した秋幸が3年の服役を終えて帰ってきます。
しかしそこにはもう路地はありませんでした。
蝿の糞の王こと父親の浜村龍造が消滅させてしまったのです。
秋幸は以前のように養父の竹原建設で土方をすることを選ばず、浜村龍造の経営する浜村木材で木を伐る仕事に就きます・・・・。
この作品は「岬」、「枯木灘」に続く秋幸3部作の最終巻にあたります。
心の拠り所である路地を失くした秋幸。
親子でありながら宿敵ともいえる龍造の下で仕事をしながらの日々を、複雑な人間関係を絡めて丹念にみっちりと描いています。
ただ「枯木灘」や番外編ともいえる「鳳仙花」などに比べると、まとまりのない感がぬぐえません。
読みにくい文章は相変わらずなのですが、本作ではそれがかなり行き過ぎている気がします。
作者自身気持ちが先走りしすぎて手綱を捌き切れていないような。
唐突な心理描写やセリフにはかなり戸惑いましたし。
しかし重量感のある小説でした。
作者は晩年「秋幸がまた自分の中で動きはじめている」みたいなことを言っていたようですが、もし作者が生きていれば路地と浜村龍造を失くした秋幸がこの後どのようになっていったのでしょうか。
ラベル:小説