2013年04月10日

「包帯をまいたイブ」冨士本由紀

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主人公のケイはレズビアンバーに勤めています。

二流クラスですが美人のモデル、冴子と付き合っています。

ですが本気でのめり込んでいるわけではありません。

ケイの勤める店の雇われ店長は麻生。

加賀という不動産会社の女社長がパトロンです。

ある日麻生が病気で倒れてしまいます。

それをきっかけに麻生と加賀の関係が冷えてしまいます。

入院中の麻生に変わって店を切り盛りするケイですが、そんな忙しさもあり冴子とは自然消滅。

そして実は麻生に思いを寄せていたことに気付きます。

麻生も同じ気持ちだったようで、二人は親密になるのですが。

ただどちらもブッチ(男役)であり、肝心のベッドインではセックスが成り立たないのです。

思いはありながら体でコミュニケーションできず、ぎこちない関係を続けるケイと麻生・・・・。

出だしからケイの冷めた恋愛観があり、そんなケイが後半に麻生に対しての熱い思いに翻弄されるというのが大まかなストーリーです。

レズビアンの世界を扱っているのですが、ケイは女性ですが「僕」という1人称で書かれています。

なので私としてはどうしても主人公は男のイメージなんですよね。

それが同じような立場の麻生と関係するというのですから、小説中の二人だけでなく私の感覚の中でもこのベッドシーンは成り立ちません。(笑)

いつどうなるかわからない病気を抱えた麻生。

そんな麻生に惹かれ、しかし思うように体も心もコミュニケーションができず思い悩むケイ。

お互い傷付き合いながら、まさに触れれば壊れそうな関係です。

愛し合う二人はその不具合をどう乗り越えていくのでしょう・・・・。

最後の1行。

これ、さりげないけど実にいい描写だと思います。

ラベル:小説
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2013年04月08日

「読者は踊る」斎藤美奈子

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書評家の斎藤美奈子氏が流行りの本を片っ端からチェック。

さてさてその内容と評価はどうなのか。

氏の書評の面白いところは切り口にいろんなテーマを設定し、それに基づいて分析するところなんですね。

「カラオケ化する文学」の章では真正面から(?)現在の文学界を切り、「文化遺産のなれのはて」の章では聖書にまで言及しておられます。

「おんな子どもの昨日今日」の章はまさしく氏の本領発揮でしょう。

「歴史はこうしてつくられる」の章では、全共闘、ひめゆりの塔、薬害エイズ、在日、教科書問題といったテーマにも踏みこんでおられます。

相変わらず痛快で面白い。

お仕事とはいえよくもまあ色々とあらゆるジャンルの本を読んでおられるなぁと。

私は必ずしも氏の考えに賛同するものではありませんが、読み物としては実に楽しめます。

ラベル:書評・作家
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2013年04月06日

「ベルカ、吠えないのか?」古川日出男

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1943年、日本軍が引き上げた後のキスカ島に残された4頭の軍用犬、北、正勇、勝、エクスプロージョン。

その4頭を始祖とした犬たちの物語です。

物語といいましても説明の仕様がないですね。

血統を縦軸に、世界各地に拡がっていったそれぞれの犬の生き様を横軸に、壮大に風呂敷を拡げておられます。

タイトルになっているベルカというのはもちろん犬の名前ですが、ではその犬を主人公に据えているのかというとまったくそんなことはない。

登場するのはほんのわずかで名前貸しのようなもの。(笑)

主人公といえる人物、いや、犬物が誰というわけでもない。

4頭を始祖としてあちこちに散らばり繁殖した犬たちそれぞれにスポットを当てつつ、当時の世界情勢を描写しています。

世界情勢といいましても、あくまでも犬たちにとってどうであったかという視線なんですね。

それが犬に語りかけるような文章でずっと綴られています。

読みましてこういう形式の小説もありなんだなぁと勉強になりました。

私には絶対に書けないと思いましたね。

といっても普通の小説も書けませんけどね。(笑)

んでプロの読み手の方々はどう読んだのだろうと気になり、手元にある資料をいろいろと調べてみましたら。

やはり皆さん高く評価しておられます。

中でも高橋源一郎氏斎藤美奈子氏との書評対談で発言しておられたのを読みまして、やはりプロにしてもそうなのかと思いました。

『※※※※※※はアイデアがあれば書ける。でもこれはアイデアがいくらあっても書けんがなっていう感じだな』

ちなみに※※※※※※は映画にもなった某小説です。

この作者はそれほど特異な才能を持っておられる作家さんだということなんでしょうね。

ラベル:小説
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2013年04月04日

「出版界の仕掛人 編集者の素顔」創編集部

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24人もの編集者たちが紹介されています。

それぞれの雑誌を創ったり育てたりした、個性的な名物編集者ですね。

マンガ誌、週刊誌、文芸誌、スワッピング誌に至るまで紹介されています。

昭和57年の本ですから内容はかなり古い。

30年以上前になりますか。

しかしいまだ一線で活躍しておられる方もいらっしゃいます。

内容的には一般人向けではないですよね。

読んで楽しめるのは出版業界人かマニアだけでは。

そんな本を読んでいる私もたいがいですが・・・・。(笑)

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2013年04月02日

「人情屋横丁」山本一力

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人気時代小説作家による食エッセイ集。

少年時代の思い出のおかずなどを紹介しておられ、けっして食通ぶっておられないのがいい。

よく「わたしは決して食通やグルメなどではない」といいつつ、思いっきりウンチク垂れている人もいらっしゃいますけども。

この著者の場合は内容もそうですしお人柄なんでしょうか、まったくそのようなものが感じられません。

逆にそれが味わい深いんですよね。

このあたりの味わい深さは氏の書く小説にも通じるように思います。

ラベル:グルメ本
posted by たろちゃん at 03:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 『や』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする