2013年05月20日

「絶対音感」最相葉月

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『それは天才音楽家へのパスポートなのか!?』

私が読んだのは文庫本ですけども、単行本の帯にはそのようなコピーが書かれていたようですね。

『絶対音感』。

どんな音を聴いてもそれが「ドレミ」で聴こえてくるような音感です。

店に流れているBGMもすべてドレミでわかり、すぐに楽譜に書くことができる。

音楽だけではなく、小鳥のさえずりも救急車のサイレンも。

ワイングラスが触れ合う音でさえも。

逆に言えばそれに縛られてしまうというリスクもあるわけです。

音楽を音楽として楽しめない。

自分の持つ絶対音感からはずれた音に関しては違和感を感じ、それに合せることができない・・・・など。

『絶対音感』というインパクトのある言葉を始めて耳にした著者はその正体を探るべく、音楽家だけではなく科学者など数百名の人たちに証言を求めます。

はたして『絶対音感』とはなんなのか。

それは先天的なものなのか後天的なものなのか。

音楽家にとってそれは必要なものなのか・・・・。

正直言いましてけっこう音楽の専門用語が出てきますのでちんぷんかんぷんな部分が多々ありました。

それでも『絶対音感』という世界があるのを知ることができたのは収穫でした。

著者の取材にも圧倒されます。

第4回小学館ノンフィクション大賞を受賞し、ベストセラーになりました。

posted by たろちゃん at 04:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 『さ』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年05月18日

「勝手にふるえてろ」綿矢りさ

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主人公のヨシカ26歳は男と付き合ったことがなく、もちろん処女です。

そしてオタク。

中学生時代の理想の彼(イチ)を思い続けつつ、しかし彼女に告白する同じ会社の男(ニ)が現れます。

二人の間で揺れ動くヨシカですが・・・・。

タイプの違う2人の男、理想と現実、そういった狭間で揺れ動く主人公の心理を描いているわけですが。

正直言いまして主人公にはイラつきました。

目の前にいたら張り倒したい。(笑)

読者(あくまで私のことですが)にそう思わせるのは、作者のキャラ作りが成功しているということでしょう。

感情移入するからそう感じるのです。

この作家の作品を読んだのはこれで3冊めです。

作風は違いますけども、なんだか第2の絲山秋子のような・・・・。

ただどれもちょっとこじんまりとしすぎな気もします。

今後はもうちょっと世界を拡げた作品を読みたいです。

ラベル:小説
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2013年05月16日

「戻り川心中」連城三紀彦

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表題作他4編収録。

すべて花にまつわるミステリーです。

表題作の「戻り川心中」は大正時代の歌人、苑田岳葉が主人公。

心中未遂事件を二度起こし、二度とも女を死なせ自分が生き残ります。

それらの事件を歌にして二大傑作歌集を発表した岳葉。

その後岳葉は自害します。

岳葉は死なせた女たちに何を求めていたのか・・・・。

苑田岳葉というのは作者が創った架空の人物ですが、この設定に誰しも思い浮かべるのが太宰治ですよね。

あとがきには何も触れられていませんけども、モデルは明らかに太宰でしょう。

しかし苑田岳葉という歌人が実在したかのようなリアリティがあります。

作中で紹介されている歌はもちろん作者の手によるものでしょうが、これもお見事です。

恋愛小説としても実に巧みだと思いますが、もちろんこれはミステリーなので悲哀の恋愛物というだけではなく、主人公の意図が解き明かされていくところに面白さがあるんですよね。

他の作品もそうなのですが、事件の真相が2転3転するところが作品に奥深さをもたらし、読み手を唸らせるのです。

そして流麗で繊細な文章。

この作家の持ち味でしょうか。

ラベル:小説
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2013年05月14日

「料理人」ハリー・クレッシング

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コブという田舎町にやってきたコンラッドという料理人。

この町はヒル家とヴェイル家が土地を二分しています。

以前は仲が悪かった両家も現在は互いの家に食事にでかけるような良好な関係です。

コンラッドはヒル家の料理人としてこの家に住み込むことになり、毎日素晴らしい料理を作り続けます。

ヒル家はもちろんのことヴェイル家にも料理を振舞うのですが、だんだんと両家の家族に変化が訪れます。

太っていた人たちは痩せ始め、痩せていた人たちは太り始めるのです。

そしてコンラッドは料理だけでなくヒル家のいろいろなことに采配を振るい始め、町の人たちにも影響を与え始めます。

コンラッドがただヒル家に仕えるだけの料理人ではなく、野望を持っているのは明らかです。

料理によって体だけではなく精神をもコントロールしているかのようです。

ヒル家の息子ハロルドとヴェイル家の娘ダフネが結婚することになるのですが、コンラッドはその一切を仕切ります。

そして同時にコンラッドは唐突にヒル家の娘であるエスターと結婚することを宣言します・・・・。

なんともブラックでシニカルでシュールな内容ですね。

物語の終わりのほうになりますとその展開は不気味とさえ言えます。

もはやコンラッドさえも何かに取り憑かれてコントロールされているかのような。

これが彼の望んだ世界だったのでしょうか。

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2013年05月12日

「腦病院へまゐります。」若合春侑

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時代は昭和初期です。

カフェーで女給をしている人妻と帝大生が出会います。

帝大生は谷崎潤一郎を敬愛しており、男女の仲になった人妻をサディスティックに辱めるのです。

人妻は乳首を煙草の火で焼かれ、うんこまみれにされ・・・・。

身も心もボロボロになるような扱いを受け、しかしそれでも人妻は帝大生と離れることができません・・・・。

どうしようもない男にひたすら尽くす女というのはよくあるパターンです。

現実にしてもフィクションにしても、ひとつのジャンルといってもいいでしょうね。

この作品ではそれを昭和初期に時代を置き、谷崎を絡め、旧字旧仮名を用いて独特の世界を創ることに成功しています。

今回この作品を読んでみてわかったのは、やはり字面で感情移入が左右されるのだなということ。

正直、内容は把握できるものの、旧字旧仮名使いのせいでいまいち感情移入できなかったのです。

まあこれは私の修行不足。

この文字使いあっての作品ですからね。

併録されている「カタカナ三十九字の遺書」もよかったです。

ひたすら主人に尽くした女中の話。

口をきけず理不尽な扱いを受け、贖罪する姿が切なすぎます。

ラベル:小説
posted by たろちゃん at 01:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 『わ』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする