短編集ですが表題作というのはありません。
タイトルは収録されている六編それぞれに対しての総称といえましょう。
最初に収められている「花映る」では主人公隼之助の友人である和久蔵が妻と歩いているところを、酔った岡部という男に冷やかされます。
穏便にやり過ごそうとしたところ岡部の連れが妻の尻を掴むのです。
それが原因で和久蔵と岡部が斬り合いとなり、和久蔵は命を落とします。
原因はあくまでも岡部。
しかしその岡部は三十日の逼塞で済まされるのです。
和久蔵の友人である隼之助は納得いかず岡部が在籍する道場に出向き、岡部をやり込めます。
町中にその評判が広まり、屈辱の岡部は隼之助に果し合いを申し込みます・・・・。
どの作品も決して明るくはありません。
そしてどれも華やかではありません。
不運に生きる武士や女たちを描いておられます。
それを滑らかな丁寧な筆で描いておられるのです。
粒揃いな短編集でした。
今後もぜひ追いかけたい時代小説作家であります。
ラベル:時代小説