2013年10月10日

「理由」宮部みゆき

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高級高層マンションで殺人事件が起きます。

部屋には中年の男女と老女。

そしてその部屋から転落したと思われる若い男。

最初は当然その部屋に住む家族だと思われたのですが、実はまったく住人とは無関係な人たちでした。

ではその部屋に住んでいた家族はどこに行ったのか。

なぜ無関係な人たちがそこにいたのか。

その人たちはなぜ殺され、犯人はいったい誰なのか・・・・。

以前に読みました「火車」ではカードローンによる自己破産を扱っていましたが、この作品では住宅の購入という問題を扱っています。

クレジットカードにしろ住宅にしろ、かなり身近でリアルなテーマです。

この作品ではそんな内容をルポタージュといいますか、ドキュメンタリー番組のような手法で読ませます。

非常に込み入った内容を事件の経過と関係者の証言で追っていくのですが、じわじわと真実が明らかにされていく過程の読み応えといったら。

社会的なテーマを扱いつつ見事にエンターテイメントな読み物になっていますね。

700ページ近いボリュームにどっぷりと浸りました。

ラベル:小説
posted by たろちゃん at 10:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 『み』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年10月08日

「神楽坂ホン書き旅館」黒川鍾信

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ホン書き旅館。

このホンというのは映画の脚本のことでして、脚本家や映画監督がカン詰めになってホンを書くための旅館のことをいいます。

神楽坂の路地の奥にひっそりと佇む「若可菜」。

いろんな映画関係者がここでホンを書き、出世し、名作を生み出しました。

今井正、内田吐夢、山田洋次、深作欣二・・・・。

後には野坂昭如色川武大中上健次高橋三千綱などの作家にも利用されたようです。

女将の名は和田敏子。

女優・木暮美千代の妹さんです。

姉の付き人のようなこともやっておられまして、そういう関係もあり「若可菜」は映画関係者によるホン書き旅館となっていったのですね。

ここでホンを書くと出世することから「出世旅館」なんて呼ばれたりもしたそうです。

ここにカン詰めされるようになると一流と認められたことになり、涙した人もいたとか。

山田洋次監督が「日本アカデミー賞特別功労賞を差し上げようではないか!」と著書に書いておられるそうですが、それだけ日本映画界に関わってこられた旅館なんですね。

でも今はこのような旅館が利用される時代でもなくなってきました。

寂しい話ではあります。

なので本書は貴重な記録だといえるでしょう。

posted by たろちゃん at 12:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 『く』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年10月06日

「桐島、部活やめるってよ」朝井リョウ

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舞台は地方の高校です。

バレー部の部長である桐島が部活を辞めるとのこと。

さて、それがいったい誰にどのような影響を与えていくのか・・・・。

作者のデビュー作。

タイトルに桐島なんてあるくらいですから桐島がどのように登場するのかと思っていたら、いっさい登場しません。(笑)

じゃあ他の人物から散々語られるのかというとほとんど語られません。(笑)

たまにちらっと名前が出てくる程度で、桐島がどのような人物であるのかさっぱりわからないのです。

こんな切り口もあるのだなぁと思いました。

同じような手法に朝倉かすみの「田村はまだか」がありますけども、まだこの作品は田村の存在感がありました。

本人が出てこないまでも、同窓会に集まった連中の求心力にはなっていました。

しかし本作は桐嶋の存在感が非常に薄い。

料理でいえばひとつまみや一滴の調味料といったところ。

ですがそれが隠し味となって効いているんですね。

タイトルが心憎い。

内容は章により視点を変えた一人称ですが、女子の視点で語られる文章が上手いですねぇ。

読んでいて作者が男性であることを忘れてしまったほど。

今後の作品に注目したい作家さんです。

って、すでに第148回直木賞を受賞しておられますけど。

せっせと追いかけねば。(笑)

ラベル:小説
posted by たろちゃん at 06:30| Comment(1) | TrackBack(0) | 『あ』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年10月04日

「許されざるプロポーズ」水島忍

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父が経営していた会社を乗っ取られ、家も職も失ってしまった篠原莉奈。

時給のいいキャバクラで働くことにします。

面接の帰りに会ったのが藤代高史。

以前の恋人であり、父の会社を乗っ取った人物でした。

莉奈の父と高史の父は経営上のライバルでした。

そして莉奈の父が高史の父の婚約者を奪ったのです。

つまりそれが莉奈の母です。

高史の父はそれをいまだ忘れておらず、復讐のため高史を莉奈に近づけたというのです。

事実二人は付き合い始めたにもかかわらず、高史には婚約者がいたのです。

一方的に高史に別れを告げた莉奈。

その怨みもあり、父亡きあと社長を継いだ高史はいよいよ莉奈の父の会社を乗っ取ったのです。

それどころか家を出なくてはならない莉奈の家族の弱みに付け込み、強引に莉奈の処女を奪い、自分の子供を産ませるとまで言ってのけます・・・・。

お互いの誤解とプライドが重なって素直になれないラブストーリーといったところ。

もちろんハッピーエンドになるという結末はお約束であり、書いたところでネタバレにはならないでしょう。

なんだかんだ言いつつ、社長夫人に納まってめでたしめでたし。

単純明快ではありますが、まあ色々とドラマを作りエッチな描写も散りばめておられます。

頭を使うこともなく楽しめました。

ちなみにこのアルファポリスが出版している「エタニティブックス」シリーズは和製ハーレクインといったところでして、中でもロゴマークが赤いのは「一定以上の性描写あり」という区分けになっています。

私はストーリー以外にこの性描写にも注目しておりまして、「甘いな」なんてほくそ笑んでいるのですね。

そりゃポルノ小説ではありませんのでディープでないのはごもっともなんですが。(笑)

posted by たろちゃん at 02:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 『み』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年10月02日

「ぼくの美味求新」三國清三

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著者はフランス料理店「オテル・ドゥ・ミクニ」のオーナーシェフ。

マスコミにもよく出ておられる有名なシェフなのでご存知の人も多いはず。

この本では素材をテーマとして書かれています。

紹介されている項目は60編。

素材ではなくデグラッセやリエゾンといった技術的な項目もありますけども。

料理人の本というと自伝みたいなのが多いですが、この著者の場合それは後に「ミクニの奇跡」で書かれています。

この「ぼくの美味求新」が書かれたのは1986年。

今から30年近く前なのですが、内容がぜんぜん古くないんです。

すでにこの時代から現在の日本のフランス料理界を読んでおられます。

すごいセンスですね。

時代を先取りする感覚が素晴らしい。

やっぱり一流の料理人は違うなぁと感心したのでした。

ラベル:グルメ本
posted by たろちゃん at 17:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 『み』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする