2014年01月30日

1月の一冊

今月は上下巻も含めて15冊読むことができました。
    
・「職業外伝 白の巻」秋山真志 
・「ラーメンの真髄」石神秀幸
・「貝紫幻想」芝木好子
・「部屋いっぱいのワイン」細川布久子
・「都立水商!」室積光
・「不恰好な朝の馬」井上荒野
・「雪沼とその周辺」堀江敏幸
・「ワンちゃん」楊逸
・「麦屋町昼下がり」藤沢周平
・「殺人鬼フジコの衝動」真梨幸子
・「王様は裸だと言った子供はその後どうなったか」森達也
・「星新一 一〇〇一話を作った人(上・下)」最相葉月
・「庖丁一本がんばったンねん!」橋本憲一
・「真珠夫人」菊池寛

「職業外伝 白の巻」、チンドン屋や映画看板絵師など、時代とともに無くなってしまいそうな職業の人たちを紹介した本。

懐かしような廃れていくのが寂しいような思いで読みました。

「ラーメンの真髄」、ラーメン評論の第一人者による著作です。

真剣にラーメンに取り組んでおられる姿勢が伝わります。

「貝紫幻想」幻の染料に魅せられた男との禁断の愛を貫く女。

ロマンがあり耽美的でもある作品です。

「部屋いっぱいのワイン」、ただワインが好きでひたすらワインを追いかけてきた著者。

難しいウンチクなどなく楽しめる一冊でした。

「都立水商!」、水商売教育専門の高校という奇抜なアイデアがいい。

笑いも感動もある優れたエンターテイメント小説でした。

「不恰好な朝の馬」、不穏な雰囲気といえば井上荒野の持ち味。

この作品集でもそんな世界を味わえます。

「雪沼とその周辺」、地味ではありますが温かく味わい深い短編集。

優れた小説を読む楽しさをじんわりと感じることができます。

「ワンちゃん」、中国人作家のデビュー作。

目新しいわけではないのですが、初々しさのようなものを感じました。

「麦屋町昼下がり」、それぞれの武士の身に起こる出来事を描いた短編集。

やっぱり藤沢周平はいいなぁ。

「殺人鬼フジコの衝動」、小説としての出来は決してよくないと思うのですが、カルトな持ち味のある作家さんですよね。

ハマるか苦笑するか大きく分かれると思いますが。

「王様は裸だと言った子供はその後どうなったか」、ちょっと著者の狙いが私とは合いませんでした。

いちびりすぎな印象です。

「星新一 一〇〇一話を作った人(上・下)」、著者の取材力に感心です。

大昔の人物に比べると資料は揃いやすいでしょうが、それでも力作だと思います。

「庖丁一本がんばったンねん!」、よくある料理人の自伝です。

しかし語り口のユーモアで読み物として成り立っています。

「真珠夫人」、昼ドラマ化されたようですが、まさしくメロドラマの王道のような内容。

思いのほか面白く読めました。

今月はけっこうどれも読み応えを感じたように思います。

ちょっと迷いますね。

絞るとすれば「都立水商!」、「真珠夫人」でしょうか。

前者はエンターテイメント小説の醍醐味、後者は予想外の面白さの発見。

う~ん、誰もが明るく楽しめるということで「都立水商!」。

今月はこれに決定です。

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2014年01月28日

「真珠夫人」菊池寛

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唐沢男爵の娘・瑠璃子は真珠のように美しい二十歳前の処女です。

杉野子爵の息子・直也と潔い交際をしています。

成金の荘田勝平の園遊会に招かれた二人は勝平がそばにいることに気付かず、成金の趣味の悪さを批判します。

二人の前に姿を現した勝平を前にしても、純粋で若い二人は金の力で事を運ぶような生き方を批判するのです。

侮辱された勝平は批判されたその金の力で瑠璃子の父を陥れ、直也との仲を引き裂き、瑠璃子を自分の妻にしてしまいます。

しかし瑠璃子はなんだかんだと理由を付け操を守ります。

勝平が事件に巻き込まれて死亡し、処女のまま未亡人となった瑠璃子。

サロンにいろんな男性を招き、女王のように振る舞い、男を弄ぶのですが・・・・。

この作品が書かれたのは大正9年。

読んでいて古臭く辛気臭く退屈するのではないかなどと思っていたのですが、なんのなんの、実に面白かった。

570ページほどをまったく中弛みすることなく読めました。

処女がどうのとか操を貫くとか今の時代からするとちょっと当てはまらない設定ではありますが、だからこそ逆に純粋で高貴に感じたりもします。

成金に初恋の男との仲を引き裂かれ、父が辱めを受け、その復讐のために敢えて結婚する瑠璃子。

そこまでは物語としてわからなくもないですが、他の男たち全てを敵と見做し、結果的に死に至らしめるほどの執念深さにはちょっと違和感がありました。

一人の男から受けた屈辱のためにそこまでするというのはちょっと強引ではないかと。

ですが瑠璃子というキャラがこの設定によって強烈に立っているのですね。

そんな瑠璃子はどのような結末を迎えるのか・・・・。

純愛小説であり、ミステリーでもあり、ひとりの女の生き様の小説でもありますね。

ラベル:小説
posted by たろちゃん at 04:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 『き』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年01月26日

「庖丁一本がんばったンねん!」橋本憲一

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料理の経験も資金もないのに料理屋を始めることを思いついた著者。

その奮闘記が面白おかしく書かれています。

会話が京都弁なので、それがまたユーモラスな雰囲気を醸しています。

少しずつ料理を覚え、機材も導入し、陶芸にも打ち込み・・・・。

しかし読んでいて思ったのは、やはり人だなと。

友人たち、お客さんたち、そしてなにより側で支えてくれた奥さんの力ですね。

この本によると最初はおでんしかできなかった店だったようですが、いまや夜のコースがン万円の高級店です。

まさしく包丁一本がんばられました。

ラベル:グルメ本
posted by たろちゃん at 04:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 『は』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年01月24日

「星新一 一〇〇一話を作った人(上・下)」最相葉月

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小説にはいろんなジャンルがあり、形式があります。

ジャンルでいえば純文学、ミステリー、SF、恋愛小説、時代小説・・・・。

形式でいえば長編、中編、短編、そしてショートショート。

星新一といえばSF作家であり、ショートショートの名手として知られた作家でした。

生涯に書いたその数は1001編。(実際にはもう少し多いのですが)

世界でも他に例のない圧倒的な作品数です。

そんな星新一の生涯をみっちりと描いたノンフィクション。

星製薬の御曹司という生い立ちは意外と知られていないかもしれません。

父の後を継いだものの経営の才能の無さや他の理由から多額の負債や問題を抱えます。

それは売れっ子の作家になってからも続くのですね。

ずっと苦労のしっぱなしでした。

作家としてはどうなのか。

日本のSFの入門編として、そして小説の入門編としても実に入りやすい星作品。

なので子供から大人まで幅広い人気があります。

しかしそれだけに文学としては軽く見られていたという事実があります。

直木賞の候補にはなったものの、文学賞にも縁のない作家でした。

しかし本書を読めば、星新一がどれだけSFやショートショートの普及に尽力したか。

どれだけ偉大な功績を残したか。

ひしひしと感じ取ることができます。

私も星作品はほとんど読んだと思いますが、また改めて読み返したい気持ちになりました。

それにしても著者の圧倒的な取材には恐れ入りましたね。

素晴らしい。

惜しみない拍手を送りたいです。

posted by たろちゃん at 04:28| Comment(1) | TrackBack(0) | 『さ』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年01月22日

「王様は裸だと言った子供はその後どうなったか」森達也

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世界中で知られている物語を著者がパロディーにして現代社会の風刺とした物語15話。

表題作の「裸の王様」を始めとして、「桃太郎」や「泣いた赤鬼」といった日本の話、「赤ずきんちゃん」、「みにくいあひるのこ」といったグリムやアンデルセンの話もあります。

それぞれの話を紹介しつつ、途中で著者が話を現代風に改ざんして現代社会を皮肉っているのですが・・・・。

う~ん、試みは面白いと思うんですけどね。

でも私は著者(文中ではすべてご自身のことを作者と名乗っておられます。でもこれは“作者”というのとはちょっと違うんじゃないですかね。紹介している作品の作者とまぎらわしく混乱しました)の悪ノリが鼻につきました。

なにを狙ってんだか、という気がしまして。

パロディならパロディでそれぞれをベースにしたオリジナルな話を作ればいい。

物語を分析するならするで、いちびらずにしっかりと現代社会に照らし合わせればいい。

話のあげ足を取っていちびりながら著者の思想を介入させるというのがどうも馴染めませんでした。

posted by たろちゃん at 04:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 『も』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする