2014年01月20日

「殺人鬼フジコの衝動」真梨幸子

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「わたし」は小学5年生。

父、母、妹と暮らす4人家族です。

父も母も自分のことにはお金を使いますが、子供には給食費さえ出しません。

体操服は妹と共用です。

そんなろくでもない両親の家庭ですが、ある日フジコ以外の家族が惨殺されます。

ひとり生き残ったフジコは叔母に引き取られ、今までとは違った幸せな生活を送るはずだったのですが・・・・。

この作家の本はデビュー作の「孤虫症」以来2冊目ですが、相変らず暴走してますね。(笑)

なりふり構わない強引な話作りは計算づくなんでしょうか、それとも天然なんでしょうか。

計算づくならよくもまあと思いますし、天然ならいやはやです。

最後のほうなんかほとんどスプラッタギャグですもんね。

リアリティなど力でねじ伏せ、ひたすらまっしぐらにゴールに向かって暴走する作風がこの作家の持ち味なのかもしれませんが。

まあこれはこれでありなのかもしれません。(笑)

ラベル:小説
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2014年01月18日

「麦屋町昼下がり」藤沢周平

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短編集です。

表題作他3編。

片桐敬助は藩主の前で行う“秋の試合”で無敗の成績を収めた不伝流の使い手です。

しかし本人は今まで一度も勝ったことがない弓削新次郎がいなかったからだと思っています。

ある日の夜、敬助は夜道で男に追いかけられた女に助けを求められます。

女を背にかばったところ、男は斬りかかってきます。

その太刀捌きは鋭く、敬助は受けることもかわすこともできず相手を斬るしかありませんでした。

女に事情を訊けば、男は舅とのこと。

無体を言いかけられ、拒むと怒ってこのようなことになったと。

実はその女は弓削新次郎の妻であり、斬った舅というのは弓削新次郎の父ということになります。

弓削新次郎というのは聞こえた奇人です。

父を殺され何を仕掛けてくるかわかりません。

もし弓削と斬り合うことになれば、今まで一度も勝ったことがない敬助に勝ち目はありません。

噂は拡がり、縁談相手からも話はなかったことにしてほしいと依頼があります。

この後、敬助と弓削は・・・・。(表題作)

他の作品も主人公が思わぬトラブルに巻き込まれ、というような設定です。

しかしラストには救いがあります。

と書いてもネタバレにはならないでしょう。

最後の「榎屋敷宵の春月」は武士の妻が主人公。

事なかれ主義の気弱な夫と対照的に気丈な妻がいいですね。

久しぶりに藤沢周平を読みましたが、やはり味わい深い。

じっくりと楽しみました。

ラベル:時代小説
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2014年01月16日

「ワンちゃん」楊逸

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2編収録。

表題作のワンちゃんは日本に嫁いだ中国人。

中国の女性に日本の男性を紹介する「お見合いツアー」を仕事にしています。

男性は田舎の嫁の来てのないような連中ですが、女性は若く美人です。

ワンちゃんも過去に同じような形で結婚しています。

ですが愛のある結婚ではありません。

以前のろくでもない夫から逃れるための結婚でした。

しかし現在の夫はテレビばっかり見て無口な男です。

年老いた姑の面倒も見なくてはなりません。

そんな中で企画したお見合いツアーにいた、土村という男性が気になるワンちゃん。

土村がツアーで知り合った女性と結婚することになり、ワンちゃんは涙を流します・・・・。

祖国の中国で男に苦労し、日本に来てもやはり満たされないワンちゃんの女心が切ない。

「老処女」もやはり中国人女性が主人公。

学問に没頭してきた日々でしたが、40代になってようやく現れた王子様のような男性に恋をします。

しかし・・・・。

どちらも主人公の女性は幸せに手が届きません。

最後にため息が出てしまうような話です。

この作家の作品は以前に芥川賞を受賞した「時が滲む朝」を読みましたが、私はこちらのほうがよかったですね。

ラベル:小説
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2014年01月14日

「雪沼とその周辺」堀江敏幸

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雪沼という寒い地方にある小さな町。

そんな町で暮らす人たちの様々な人生を切り取った短編集です。

それぞれの話に繋がりはありませんが、舞台が小さな町ですので他の作品で取り上げた話題がさりげなく出てきたりはします。

主人公は手に職を持つ人たち。

「スタンス・ドット」では一人でボーリング場を経営し、メンテナンスも自らやっている年老いた男性の話。

「河岸段丘」は紙の裁断をする主人公とその機械をメンテナンスする友人の話。

「レンガを積む」は昔ながらのステレオを置くレコード店主の話。

仕事を書くのが上手い作家さんだなぁと感心しました。

どの登場人物も“さん付け”で書かれています。

そのせいでどの作品も柔らかくほんわかして雰囲気があるんですね。

エンターテイメント小説ではないので山あり谷ありの内容ではありませんし、ラストも誰もが納得するオチはありません。

地味ですが実に味わい深い。

人物がいい。

他の作品もぜひ読んでみたい作家さんです。

ラベル:小説
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2014年01月12日

「不恰好な朝の馬」井上荒野

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連作短編集です。

表題作は、劇団を主宰する演出家を夫に持つ菊絵が主人公。

団地に住み、中学生になる娘がいます。

夫は劇団に所属する21歳の女に手を出しているのですが、もうこれで何人目の女になるのでしょう。

うんざりした菊絵は夫に離婚を切り出します・・・・。

この表題作を始めとして、少しずつスポットをずらせて話は進んでいきます。

次の「クリームソーダ」では娘の友達であるルイが美術教師と不倫交際している話。

「額縁の犬」ではそのルイや美術教師が利用している喫茶店の女性経営者の話。

次の「鹿田温泉」は菊絵の夫である哲雄と21歳の愛人の話。

「スケッチ」では美術教師の妻の視線で・・・・。

非常に狭い範囲でそれぞれの登場人物が関わっており、出来過ぎな話ではあります。

でも実際はこんなものかもなんて思ったりもしますが。

いつもながら井上荒野らしいなんとも不安定な雰囲気の設定です。

それぞれの話の結末はどうも収まりが悪い。

着地点の居心地がしっくりこないといいますか。

でもそれがこの作家の持ち味なんですね。

ラベル:小説
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