雪沼という寒い地方にある小さな町。
そんな町で暮らす人たちの様々な人生を切り取った短編集です。
それぞれの話に繋がりはありませんが、舞台が小さな町ですので他の作品で取り上げた話題がさりげなく出てきたりはします。
主人公は手に職を持つ人たち。
「スタンス・ドット」では一人でボーリング場を経営し、メンテナンスも自らやっている年老いた男性の話。
「河岸段丘」は紙の裁断をする主人公とその機械をメンテナンスする友人の話。
「レンガを積む」は昔ながらのステレオを置くレコード店主の話。
仕事を書くのが上手い作家さんだなぁと感心しました。
どの登場人物も“さん付け”で書かれています。
そのせいでどの作品も柔らかくほんわかして雰囲気があるんですね。
エンターテイメント小説ではないので山あり谷ありの内容ではありませんし、ラストも誰もが納得するオチはありません。
地味ですが実に味わい深い。
人物がいい。
他の作品もぜひ読んでみたい作家さんです。
ラベル:小説