2014年06月29日

6月の一冊

今月読みましたのは以下の14冊です。
 
・「横道世之介」吉田修一
・「ホットドッグの丸かじり」東海林さだお
・「魚神」千早茜
・「剣客商売 勝負」池波正太郎
・「セブン-イレブンおでん部会 ヒット商品開発の裏側」吉岡秀子
・「Chef's special」檜原まり子
・「パパは牛乳屋」弘兼憲史
・「杉浦日向子の食・道・楽」杉浦日向子
・「灘の男」車谷長吉
・「料理の仕事がしたい」辻芳樹 編
・「アイルトン・セナ 日本伝説」松本洋二
・「葡萄が目にしみる」林真理子
・「アウト&アウト」木内一裕
・「ノンセクシュアル」森奈津子

「横道世之介」、これといった強いドラマがあるわけではないんですけどね。

じんわりと心に滲みるのは世之介の憎めないキャラか。

「ホットドッグの丸かじり」、よくもまあネタが尽きないなと。

ネタというよりもこれほど長く面白く読ませ続けるのは天性の才能ですね。

「魚神」、しっかりと世界を創っておられます。

デビュー作でこのレベルはなかなかのもの。

「剣客商売 勝負」、いよいよ小兵衛にも孫ができて。

シリーズの中でのちょっと変換期な一冊でしょうか。

「セブン-イレブンおでん部会 ヒット商品開発の裏側」、たかがコンビニなどといってはいけませんね。

どんな会社もそうでしょうけど、舞台裏は壮絶です。

「Chef's special」、グルメを取り入れたBL小説。

それありきなキャラ設定に安直さを感じました。

「パパは牛乳屋」、とにかく頭を使わず楽しめます。

ひまつぶしにちょうどいい。

「杉浦日向子の食・道・楽」、粋人による食エッセイ。

もうちょっと肩の力を抜いてもいいのでは。

「灘の男」、聞き書き小説。

新境地を開いたとありますが、はて。

「料理の仕事がしたい」、いろんな料理人のエピソードが読める一冊。

料理人を目差す人たちの参考になるでしょう。

「アイルトン・セナ 日本伝説」、新聞記者が綴った天才F1ドライバーの記録。

でもタイトルの「日本伝説」って言葉はちょっとセンスがダサ・・・・。

「葡萄が目にしみる」、昔のコバルトや小説ジュニアを思わせる清々しい青春小説。

でも最後のほうはしっかりと林真理子味のスパイスがふりかけられています。(笑)

「アウト&アウト」、緊迫感ある話運びはさすが。

きっちりツボを抑えた良質のエンターテイメント小説でした。

「ノンセクシュアル」、女の嫉妬と独占欲の怖さがわかる小説です。

これって男で同じ話は成り立たないでしょう。

さてさて今月の一冊。

どれも満足感をもって読了しました。

その中でも抜きん出ていたのが「アウト&アウト」木内一裕です。

今後もぜひ追い続けたい作家ですね。

ということで6月の一冊はこれ。

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2014年06月27日

「ノンセクシュアル」森奈津子

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小説家の詠子はバイセクシュアルです。

男性も女性もいけるというやつですね。

透と秀美という恋人がいたのですが、どちらとも別れることになります。

しかし透は詠子に未練があり、自宅の前で待ち伏せして無理やり車に押し込もうとします。

それを救ったのが通りすがりの絵里花。

お嬢様風の美しい外見に詠子は惹かれ、友達としての付き合いが始まります。

詠子はもちろん体のお付き合いもOKなのですが、絵里花はそのようなものを異様に嫌う潔癖なノンセクシュアル。

男にも女にも興味がなく、恋愛感情を持たない人物なのです。

詠子にもそのような潔癖さを求め、だんだんと関わりが常軌を逸してきます・・・・。

ホラーにも心霊現象やらゾンビやらスプラッタやらいろいろとありますが、これはルナティックホラーです。

日常生活が精神異常者によって侵されていくという類ですね。

リアリティということではこれがいちばんでしょう。

ゾンビなんてのは完全にフィクションとしてうっちゃれますからね。

ちょっとアブナイ人物というのは現実に存在しますし、ストーカーなんてまさにその類です。

最近はそれがエスカレートした殺人事件なんてのもしょっちゅうです。

この作品も怖い話ではあるのですが、主人公のキャラが非常に軽い。

これがなんとも緊迫感の中に脱力系な味を効かせています。

なので詠子がかなりのところまで追い込まれるのですが、読後感はさほど重くありません。

夕子という詠子の友人がとぼけた味わいでその手伝いをしています。

しかしこのようなルナティックホラー、相手は男性よりも女性のほうが恐怖感が増します。

やはり女は怖いということでよろしいでしょうか。(笑)

ラベル:小説
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2014年06月25日

「アウト&アウト」木内一裕

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元ヤクザで現在は探偵の矢能。

仕事の依頼で呼び出され、出向いた廃墟ビルの部屋には依頼主の死体。

覆面を被った男に背後から襲われ命は奪われなかったものの、依頼主を殺した犯人になるよう細工されます。

矢能を殺さずに開放したのが犯人の誤算でした。

矢能の反撃が始まります・・・・。

前作「水の中の犬」の続編です。

脇役だった矢能が今回は主役となっています。

ですが前作を読んでいなくともこれ自体独立した作品として読めます。

これが作者の第3作目となるわけですが、やはりすごい。

中だるみすることなくぐいぐい読ませます。

昔の勝目梓を思い出したりもしました。

エロはありませんけどね。(笑)

矢能のキャラは当然として、その他配置されているキャラがいい。

話もラストのどんでん返しは笑わせてもらいましたし、結末やエピローグについてはほろりとしました。

上手いですねぇ。

前作を読み終えて「もっと評価されるべき作家」と感想を書きましたが、ますますその思いを強くしました。

この作者、漫画家から小説家に転向したのは安易な気まぐれなんかではありません。

本気です。

本物です。

木内一裕、すごいわ。

ラベル:小説
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2014年06月23日

「葡萄が目にしみる」林真理子

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東京から急行で2時間ほどの山々に囲まれた町。

家が葡萄畑を営んでいる乃里子は高校受験を控えた中学生。

時代はグループサウンズの頃です。

見た目があまりパッとしない乃里子はクラスでも地味な存在。

ですがクラスメートの女子たちが当たり前のように女子高に進学する中、乃里子は共学の高校に進みます。

嫉妬されつつも晴れて高校生に。

生徒会役員の保坂に想いを寄せ、ラグビー部スターの岩永とはいろいろと葛藤があり。

恋愛や友情の高校生活を過ごします・・・・。

非常にピュアな青春小説です。

コバルトというか時代的にはその前の小説ジュニアを思わせる内容ですね。

誰それがすでに“経験”したという話を聞くだけでドキドキするような。

乃里子のモデルはもちろん作者自身でしょう。

この作者のすごい(というほどでもないのですが)ところは、自分が女として魅力がないということをきっちりと自覚しておられる(おられた)ということ。

しかしそれでも自惚れともいえる自意識を持っておられるということ。

客観的に自分を見つめ、赤裸々にその心理を描写する開き直りがあるということ。

そして相当な成り上がり志向と有名人やギョーカイへの憧れを包み隠さず小説に昇華しておられます。

この作品でも前半は小説ジュニアなわけですが、大学卒業後はやはりギョーカイです。(笑)

まあこれは業種は違えども作者の実際の経歴でもあるわけですが。

しかしラストに“青春時代の復讐”みたいなのがなかったのは、作者の青春時代への淡い思い入れか。

成り上がって勝ち誇ったラストにもできたわけですが、そうはしなかった。

それでいいと思います。

ラベル:小説
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2014年06月21日

「アイルトン・セナ 日本伝説」松本洋二

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天才F1ドライバー、アイルトン・セナ。

故人です。

1994年5月1日、サンマリノGPで事故死。

日本でも相当な人気があり、地元のブラジルに次いでファンが多かったのではないかと思います。

そんな天才ドライバーを365日追いかけた新聞記者の著書です。

日本では“音速の貴公子”などと呼ばれ華やかなイメージがありますが、決してそんな陽の部分だけではありません。

当たり前のことですが。

ブラジル人ということでヨーロッパではずいぶんと蔑んだ扱いも受けたようです。

89年の鈴鹿GPでもアラン・プロストとシケインで接触した件で、プロストと同じフランス人のバレストルFISA会長はセナに厳しい罰則を与えました。

このバレストル会長はエンジン供給メーカーであるホンダに対しても「F1はイエローのためにやっているのではない」などと差別発言をするようなろくでもない人物ですが。

ヨーロッパ人から差別的な目で見られていたセナとホンダ。

その両者が結びつき築いた絆は決してビジネスライクなものだけではありませんでした。

セナはホンダの創始者である本田宗一郎氏を尊敬していました。

本田氏に「これからもお前のためにいいエンジンを作るからな。これからも頑張れよ、セナ」と声をかけられたとき、セナは大粒の涙を流したといいます。

91年8月10日のハンガリーGP決勝戦。

その5日前に本田氏が死去。

ホンダチームのリーダーは喪章をつけてレースに臨むべきかどうか迷います。

本田氏の遺言に「特別なことは何もしてほしくない」というのがあったこと。

そして「日本以外の国でも喪章をつけるという慣習があるのか」ということ。

しかしそれは杞憂でした。

セナが当然のように喪章をつけて現れ、「ミスター・ホンダのためにも今日は負けられない」と。

セナだけではありません。

チームメイトのゲルハルト・ベルガー、そしてすべてのマクラーレンスタッフが喪章をつけ、決勝に望んだのです。

レースの結果はセナのポール・トゥ・フィニッシュ。

まあそんないろんなエピソードが書かれており、人間アイルトン・セナの魅力、悲哀などを知ることができる一冊です。

posted by たろちゃん at 03:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 『ま』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする