東京の大学に入学することになり田舎から上京してきた横道世之介。
素朴な人間です。
なんだか成り行きでいろいろと友達もでき、サンバサークルにも入会し、高級ホテルで夜間のルームサービスのバイトをすることにもなり。
祥子という彼女もでき。
そんな世之介の青春物語です。
なんといいますか、ちょっと不思議な読み心地の小説です。
主人公の世之介は特に個性が際立っているというわけではありません。
カッコイイわけでもなく、優れた才能を持っているわけでもなく。
大きなドラマがあるわけでもありません。
でも読まされてしまうのはなんなんでしょう。
なんだかやんわりと磁気を放出するような存在なんですね。
知らず知らず魅力に引き込まれてしまう。
それは作中の登場人物にしろ読み手にしろ。
世之介の大学生生活を現在にして、いくつか突然に十数年後の話が挿入されます。
最初はなんなんだろうこの構成はと思ったのですが、なるほどこういうことかと納得。
ネタバレになるので書けませんが、こういう話もありなんだなぁと。
そのために作者はこのような構成にされたのだなぁと。
派手さはありませんが、じわじわっと染み入るようないい小説です。
ラベル:小説