2014年07月21日

「きことわ」朝吹真理子

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貴子は別荘の持ち主の娘。

永遠子の母親がその別荘の管理人をしているということで、貴子とは姉妹のように付き合ってきました。

2人が最後に逢ったのは25年前の夏。

貴子が8歳、永遠子が15歳でした。

貴子の母親が亡くなり別荘を解体することになり、2人は25年ぶりに再会します・・・・。

設定自体は地味ですが、構成に技ありですね。

過去と現在、夢と現実、記憶のくい違い、幻覚のような体験。

現実なのか夢なのか。

自分は夢の中の登場人物なのか・・・・。

ちょっとシュールな話がアンニュイな文体で語られます。

貴子と永遠子の友情やそれぞれの親子関係が描かれていますが、ストーリーがどうこうよりもこの世界観を味わうべき作品なんでしょうね。

ラベル:小説
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2014年07月19日

「剣聖一心斎」高橋三千綱

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連作短編形式です。

主人公は中村一心斎という剣豪。

武田信玄の埋蔵金を捜し求めつつ、いろんな人物たちと接し、痛快なエピソードを残しつつ風のように去っていきます・・・・。

千葉周作、鼠小僧次郎吉、葛飾北斎、二宮尊徳、遠山金四郎などなど、豪華キャストが出演するすごい作品です。(笑)

ただ肝心の一心斎のキャラがちょっと読者視点からすると浅いんですよね。

飄々としていかにも高橋作品の主人公的なのは魅力なのですが、それぞれの話のメインはあくまでも他の登場人物であり、一心斎はそれに絡む設定です。

物語の中で登場人物にさらっと絡むのはいいのですが、読者に対してもさらっとし過ぎなんです。

もっと深く描いてほしかった。

アメリカにいたこともあるようですが、そのあたりの詳細は書かれていません。

これは「暗闇一心斎」に引き継がれていくのかな。

「お江戸の若様」シリーズも主人公に平成の記憶がある設定ですが、まだそのあたり明らかにならず。

どちらも主人公に謎があるという点では共通しています。

そして未来や外国を知っているという点で主人公の考えも先進的です。

正統派な時代小説ではないと思いますが、高橋氏ならではの作風が楽しめます。

ですがやはり私はもっと主人公に近寄って書いていただきたかった。

ラベル:時代小説
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2014年07月17日

「銀座のすし」山田五郎

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銀座という街は一流・高級店が軒を連ねますが、中でも寿司屋というのはおいそれと近づけないイメージがあります。

敷居が高い。

フランス料理もそうなのですが、まだ誰に対してもオープンなところがあります。

それに比べると寿司屋というのは閉鎖的で、一見で入るには勇気が要ります。

そんな銀座の寿司屋を取材した一冊。

といってもガイドブックの類ではありません。

寿司屋にとってなぜ銀座なのか。

なぜ寿司職人たちは銀座に店を出したがるのか。

そのようなあたりを各店の経歴を紹介しつつ浮き上がらせていきます。

巻末には銀座の寿司屋の系譜や年表も添えられており、資料としての価値もあります。

そしてイラストはすべて著者自身によるもの。

なかなかお上手ですね。

ラベル:グルメ本
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2014年07月15日

「思い出のとき修理します2 明日を動かす歯車」谷瑞恵

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シリーズ第2弾です。

前作を読んでシリーズにするつもりかなという感想を書いたのですが、しっかりとシリーズ化されていたのですね。

知りませんでした。(笑)

寂れた商店街にある『ヘアーサロン由井』の跡に越してきた主人公の明里。

その斜め向かいにあるのが「おもいでの時 修理します」というプレートをショーウィンドウに飾ってある『飯田時計店』。

この店の店主である秀司と明里は前作で恋人の関係になりました。

そんな二人のもとにいろんな事情を抱えた人たちが訪れます・・・・。

連作短編形式で4編収録。

どれもほのぼのほんわかした読み心地ではありますが、やはり粗い印象ですね。

問題を解決するときのエピソードが幼稚といいますか。

第1章の「きみのために鐘は鳴る」のように幻想やファンタジー頼るのはやめていただきたい。

第2章の「赤いベリーの約束」ではネームプレートやら葉子さんの独り言やらお笑いです。

第3章「夢の化石」、石に時計をねぇ・・・・。

第4章「未来を開く鍵」、犬にねぇ・・・・。

2作目ですし、さすがにもうちょっと練ってよと思ってしまいます。

「思い出のとき修理します」というテーマに作者の力が及んでいないのでは。

細かいところに目くじら立てなければそこそこはいけてると思うんですけどね。

なので私のような小姑はともかく、若い女性にはロマンチックで好まれるのだろうなとは思います。

ラベル:小説
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2014年07月13日

「取り扱い注意」佐藤正午

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鮎川英雄は元県庁の職員。

広報課に勤務していました。

現在はあるコネで入社した缶詰会社の社員で『缶詰新聞』を発行するのが仕事ですが、ほとんど仕事らしいことはしていません。

英雄の特技というのが『ベッドの上で飴細工の飴みたいに女のからだをぐにゃぐにゃに蕩かしてしまう』こと。

そのような匂いを女は嗅ぎ付け、また噂にもなり、女が寄ってきます。

ですがそれが災いして県庁を辞めることにもなるのですが。

そして英雄の未来を予言する専務秘書の三ッ森小夜子、ロリータ好きな叔父の酔助などの存在が英雄の人生を思わぬほうに引っ張っていきます・・・・。

出だしからいかにも佐藤正午なやりとりです。

ストーリーは・・・・けっこう入り組んでいます。

というか構成に一癖あるんですね。

登場人物もしっかりと主人公に絡み合ってきますし。

そしてだんだんと話に加速度がついていく。

その挙句ストンと読者が納得いく着地点に落としてくれるのかといえば、そのような親切心はこの作者にはありません。(笑)

含みというのではありませんが、この物語世界は今後どのように展開していくのだろうと思わせるラストです。

ラベル:小説
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