2014年07月11日

「力道山の真実」大下英治

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終戦後、日本人に希望をもたらしたプロレスラー力道山。

空手チョップを得意技とし、外人レスラーをことごとくマットに沈め、日本人の鬱憤を晴らせて一躍スーパースターに。

そんな力道山の半生をルポタージュ作家の第一人者が緻密に描いておられます。

力道山といえば元相撲取りであったのは有名ですが、相撲からプロレスに転向する際は決してスムーズにいったわけではないのですね。

いろんな苦労がありいろんな人に世話になった様子が詳しく書かれています。

しかし人気が出るにつれ、世話になった人たちを反故にするような言動が目立ち始めます。

スターではありましたが、自分の地位や名誉を保つためには相当汚い部分もあったようです。

そして力道山といえばやはり木村政彦戦でしょう。

そのあたりの裏話もしっかりと取り上げられています。

最後は暴力団の組員に刺されて死亡するわけですが、そのあたりのいきさつも書かれています。

力道山というヒーローの明と暗を描いた一冊です。

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2014年07月09日

「国道沿いのファミレス」畑野智美

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佐藤善幸は外食チェーン店の正社員25歳。

ネットの掲示板にバイトの女子高生に手を出したと書かれて地方の店に飛ばされました。

実際にそういう事実はなかったのですが。

飛ばされた先は生まれ育った地元の町。

幼馴染みの親友、だらしない親、職場の同僚たち、年上の彼女など、いろんな人たちの中で善幸の地元での生活が始まります・・・・。

飄々とした主人公がいいですね。

なんだかんだと目の前の現実を受け入れながら少しずつ前進していきます。

そして周りの人物たちの個性と配置がいい。

それにより話に膨らみが出ているように思えます。

仕事の舞台裏を書くという小説ではありませんが、ファミレスという舞台もなんだか新鮮味がありましたし。

爽やかで味わいのある青春小説(?)でした。

ラベル:小説
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2014年07月07日

「「ワタクシハ」」羽田圭介

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高校生で数千人のオーディションを勝ち抜き、プロのヘヴィーメタルギタリストとしてデビューした太郎。

CDを30万枚売り上げた実績があります。

しかしバンドはすぐに解散。

大学生の今は売れないギタリストと成り下がりました。

このままでは食べていけません。

他の大学生と同じく就職活動を始めます。

しかし元有名人だからといって面接で有利になるわけでもなく。

太郎は厳しい現実に突き当たります・・・・。

その時代の景気にもよりますが、なかなか厳しい就職活動。

ましてや太郎はかつて栄光を掴んでいるんですね。

ですが売れている時代に出入りしていたテレビ局の面接にもことごとく落ちます。

とにかく業種を選ばず片っ端から受けていき、すべて玉砕。

就職活動をしながらその合間に見つけた作曲のオーディションに姉の名前で応募するのですが、それさえも落ちてしまいます。

しかし面接で受かる基準てなんなんでしょうね。

普段他人に挨拶もしないような連中が面接会場の社員には「こんにちは」と元気よく挨拶する。

「わたくしは」なんて言葉を使って自分をアピールしてる。

そんな言動に胡散臭さを感じますが、やはり太郎もそのように振舞ってしまいます。

ただの学生ではなく、過去に有名人だった人物を主人公に据えるというのがいいですね。

そんな主人公に現実の厳しさをぶつける。

就活に忙しい太郎ですが毎日のギターの練習は欠かしません。

そしてギタリストとしてもう一度復活する希望も持っています。

就職という現実とギタリストという夢。

それを大げさではなくリアリティのある話運びで読ませてくれます。

なんだかんだいいつつも、主人公の生真面目さがいい。

ラベル:小説
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2014年07月05日

「憂鬱なハスビーン」朝比奈あすか

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東大を卒業し米国資本のパソコンメーカーでキャリアウーマンをしていた凛子。

現在は30歳手前でハローワーク通いをしています。

夫は弁護士、子供はいません。

経済的にも不自由なく、夫や姑も優しい。

いわゆる『勝ち組』に属するわけですが、決して現状に満足しているわけではありません。

なにか納得できない苛立ちがあります。

ハローワークに通っているのも別に再就職したいわけではありません。

リストラされたわけでもなく生活に困っているわけでもなく、ただ単に払い続けた保険料を合法的に回収しているのだと自分に言い聞かせています。

そんなある日、再就職セミナーで再会したのが進学塾で一緒だった熊沢くん。

つねにトップの成績だった彼なら一流の大学を卒業し、一流の企業で活躍しているはず。

なぜこんなところにいるのか。

そんな彼の口から発せられた言葉が「Has been」。

一発屋、かつては何者かだったヤツ、もう終ってしまったヤツ。

東大卒で一流企業に就職、花形分野に配属されプロジェクトのサブリーダーまで任された凛子にその言葉が引っかかります・・・・。

華麗な経歴の凛子ですが、決していい家庭のお嬢さんじゃないんですね。

それに比べて夫はまさしく『ええとこのボンボン』です。

自分の実家と夫の実家、お互いの両親の“格”の違いが、プライドが高く勝気な凛子には耐え難い。

そんなイライラをつい外に向けて発散してしまいます。

自分が今までやってきたことはなんだったんだろう。

はたして自分は“何者だった”んだろう。

これからなにができるのだろう。

固定化されている世間の価値観と自分自身に葛藤する主人公の姿が描かれています。

ラベル:小説
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2014年07月03日

「悪果」黒川博行

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主人公の堀内は大阪府警今里署のマル暴担当刑事です。

給料だけではやっていけず、関わった事件の情報を業界紙編集長の坂辺に流し、坂辺はその人物から広告料という名目で金を出させる。

そして堀内は坂辺から金を受取るというシノギで小遣いを稼いでいます。

暴力団の淇道会が賭場を開くという情報を掴んだ堀内は、ガサ入れで27人を逮捕します。

逮捕された客の中から金になりそうな人物の情報をいつものように坂辺に流し、坂辺はそれをネタに強請りをかけるのですが、車にはねられて死亡。

そして堀内の周りにヤクザがうろつき始めます・・・・。

警察小説というのは初めて読んだんじゃないですかね。

なかなか面白かったです。

600ページを超える長編ですが、まったく退屈を感じることなく読めました。

私の地元の大阪を舞台にしているということで身近に感じたせいもあるかもしれません。

もちろん登場人物はすべてリアルな大阪弁。

堀内と相棒の伊達のやりとりも面白い。

“業界”のシステムや用語も解説されており、勉強になりました。(笑)

前半はそのように堀内の“仕事”と“シノギ”で読ませていきまして、後半は堀内がそのシノギのせいで追い詰められていく。

調子よくいわせている堀内が逆の立場になっていくのもまたハラハラとさせられます。

楽しめました。

また他の作品も読んでみたいと思います。

ラベル:小説
posted by たろちゃん at 04:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 『く』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする