東大を卒業し米国資本のパソコンメーカーでキャリアウーマンをしていた凛子。
現在は30歳手前でハローワーク通いをしています。
夫は弁護士、子供はいません。
経済的にも不自由なく、夫や姑も優しい。
いわゆる『勝ち組』に属するわけですが、決して現状に満足しているわけではありません。
なにか納得できない苛立ちがあります。
ハローワークに通っているのも別に再就職したいわけではありません。
リストラされたわけでもなく生活に困っているわけでもなく、ただ単に払い続けた保険料を合法的に回収しているのだと自分に言い聞かせています。
そんなある日、再就職セミナーで再会したのが進学塾で一緒だった熊沢くん。
つねにトップの成績だった彼なら一流の大学を卒業し、一流の企業で活躍しているはず。
なぜこんなところにいるのか。
そんな彼の口から発せられた言葉が「Has been」。
一発屋、かつては何者かだったヤツ、もう終ってしまったヤツ。
東大卒で一流企業に就職、花形分野に配属されプロジェクトのサブリーダーまで任された凛子にその言葉が引っかかります・・・・。
華麗な経歴の凛子ですが、決していい家庭のお嬢さんじゃないんですね。
それに比べて夫はまさしく『ええとこのボンボン』です。
自分の実家と夫の実家、お互いの両親の“格”の違いが、プライドが高く勝気な凛子には耐え難い。
そんなイライラをつい外に向けて発散してしまいます。
自分が今までやってきたことはなんだったんだろう。
はたして自分は“何者だった”んだろう。
これからなにができるのだろう。
固定化されている世間の価値観と自分自身に葛藤する主人公の姿が描かれています。
ラベル:小説