18編収録された短編集。
「小僧の神様」は作者を“小説の神様”と呼ばしめる一因となったといわれている名作です。
秤屋に奉公している仙吉が番頭の話題にしていた鮨屋の暖簾を思い切ってくぐったものの、自分の持ち合わせでは食べることができず出ていきます。
それをたまたま見ていた貴族院議員のAが後日偶然に仙吉が奉公する店を訪れ、買い物した荷物を運ばせるついでにその鮨屋でごちそうするのです。
事情が飲み込めないものの、仙吉にとってAは神様のように思えてきます。
しかし善い行いをしたはずのAはどうにも寂しい気持ちになってしまいます・・・・。
舞台の表と裏といいますか、善と偽善の葛藤といいますか。
最後の一文は作者の冷めたリアリズムなんでしょうか。
「城崎にて」は死を間近に体験した作者の客観的な視線があります。
蜂や鼠、蠑螈の死をしっかりと凝視しています。
そして今自分が生きていることを認識します。
視線はやはり冷めていますね。
後半には自身の女性関係と妻を描いた作品が収録されています。
こういうのも小説にしてしまうのですねぇ、作家は。(笑)
ラベル:小説