2014年12月10日

「羅生門・鼻・芋粥」芥川龍之介

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芥川、初期の短編集です。

やはり表題の3作はいいですね。

「羅生門」、生きる為に仕方ないんだと主張し、死人から髪の毛を抜く老婆。

それならばと下人も生きていく為に老婆の着物を剥ぎ取る。

エゴの正当化であり、しかしやむを得ないシビアな現実もあります。

ま、結局はどいつもこいつもということですが。

なんだか食物連鎖のようです。(笑)

「鼻」は鼻が異様に大きく顎の下まで垂れ下がっている内供の話。

鼻を小さくする方法を見つけてその通りになるのですが、やはり周りから笑われる。

他人というのは意地悪いものです。

「芋粥」は飽きるほど芋粥を食べてみたいと願う五位。

その願いを叶えてやろうと恐ろしいほど大量の芋粥を出され、見ただけで満腹になり、願いが叶ったどころではなくなります・・・・。

芥川は歴史に材を取った教訓的な話が多いですね。

それをビシッと決まった文章の短編で読ませる。

そして人間の寂しさのようなものを感じさせるあたり、芥川の味わい深さかと。

ラベル:小説
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2014年12月08日

「夜の鶴」芝木好子

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小鶴は下谷にある置屋「鶴の家」の芸者です。

竹久夢二の絵にも描かれたことのある美人。

千賀子という13歳の娘がいます。

母親は「鶴の家」の女将である関ですが、血は繋がっておらず養女です。

小鶴は千賀子を関に預け、自分は画家の朝蔭と同棲しています。

名妓とよばれる小鶴ですが、浮気がちな朝蔭にたいしては我を忘れるほど激しく嫉妬し刃物沙汰になるほど。

そんな母を見てこのようにはなるまいと思う千賀子ですが、歳を重ねていき、やがて10歳年上の叔父である宏治を愛するようになります・・・・。

関、小鶴、千賀子という花柳界に生きる3代の女を描いた作品です。

小鶴は「下谷に小鶴あり」といわれるほどの名妓で娘の千賀子もその美しさを譲り受けており芸も達者なのですが、お座敷に出るのを頑なに拒否しています。

母親に対しての反発でしょうか。

そんな千賀子が関は残念でなりません。

しかし血は争えないといいますか、小鶴が朝蔭に執着するがごとく、千賀子は宏治に激しく愛執するんですね。

下谷という土地を舞台にし、親娘3代の関係という縦軸、それぞれ男に激しく恋慕するという横軸、そして芸の世界という芝木文学の魅力を存分に味わえる設定。

そんな中で世代の違う女たちの生きかたを読ませる一冊です。

ラベル:小説
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2014年12月06日

「つい披露したくなる酒と肴の話」小泉武夫

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小泉武夫センセイといえば「味覚人飛行物体」だの「ジュラルミンの胃袋」だの「ムサボリビッチ・カニスキー」だのといった異名をとっておられるように食の追求者として有名ですが、実は農学博士であり、醸造学や発酵学についての専門家なんですね。

実家は福島県の酒造家ですし。

というわけで酒といえばまさしくその原点は農業ですし、発酵であり醸造であります。

なので酒に関しては専門ど真ん中な人です。

といっても造り手としてではなくあくまで学者としてですけど。

しかし世界中を飲んで食べて飛び周るバイタリティはすごいですね。

そんな経験と知識がこの本にはぎっしりと詰まっています。

内容は決して専門的な言葉を羅列した難しい内容ではなく、面白く興味深く読めます。

でも私はやっぱり世界の奇食珍食を紹介しておられる本のほうが好きですけどね。

ラベル:グルメ本
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2014年12月04日

「岬バーガー」本馬英治

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涼は高校2年生。

サーファーです。

親友のケンと地元の「岬下」と呼ばれるポイントでサーフィンをしています。

ある日、その岬に南雲という男が現れ、手作りで小屋を建てハンバーガースタンドをオープンさせました。

ハンバーガーは美味しくサーファー仲間のうちでも評判になり、涼、ケン、そして女の子の凛が店を手伝うことになります。

しかし岬にリゾートホテルが建つことになり、南雲の店は立ち退きを迫られます・・・・。

飾り気のない淡々とした文体で描く青春小説。

それが清々しくてよかったです。

ただ最後がねぇ。

立ち退きの噂を聞いてあちこちからサーファーが集まり、励ますために店の前にサーフボードを積み重ねていく。

感動的な展開です。

んでこの結末ですか・・・・。

膝からガクッと崩れ落ちるような結果でした。

集まったサーフボードはどうなったのよと。

そのあとに余韻的なラストを書かれてもなぁ・・・・。

ラベル:小説
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2014年12月02日

「ツクツク図書館」紺野キリフキ

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つまらない本しか置いていないというツクツク図書館。

仕事は本を読むだけという≪職員募集≫の貼り紙を見てやってきたのは着ぶくれの女。

館長を始めとして、戻し屋ちゃん、運び屋、語学屋など個性的な面々がいる中で働き始めるのですが、仕事をしている様子はさっぱりなく、わがままの言い放題です。

ある日、つまらない本ばかりのこの図書館に、ただ一冊だけ伝説の本と呼ばれる面白い本があるという話を聞きます。

着ぶくれの女は戻し屋ちゃんと図書館に泊り込み、伝説の本を探索するのですが・・・・。

う~ん、このシュールでユーモアのあるセンス。

以前に読みましたデビュー作の「キリハラキリコ」でそのセンスに魅せられたわけですが、この作品でもその魅力をたっぷりと味わわせてくれます。

前作と同じく一話読みきり形式の構成ですが、これがまたなんとなく雰囲気に合っているんですね。

つかみどころのない個性的なキャラクター、不条理でほんわかした雰囲気のストーリーですが実はシビアだったり。

本や図書館というモチーフを扱っていますので、本好きな人はいちだんと楽しめるんじゃないでしょうか。

ラベル:小説 本・書店
posted by たろちゃん at 03:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 『こ』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする