真衣が通う学園の高等部には『赤い手紙』という伝説があります。
選ばれた人間にだけ届く『赤い手紙』。
受け取ると学園生活がばら色になるとかの曖昧な伝説です。
そんな噂に乗じて真衣や木綿子に赤い手紙でラブレターを出す岩崎恭。
ファンクラブもあるほどモテる転校してきた男子生徒です。
一方、病に倒れた学園長の死期がどうやら近いらしいという雰囲気が学園に広まります。
生徒や教師たちは宗教の教祖のごとく異様に学園長を崇拝しており、その雰囲気はちょっと不気味です。
なんとも不穏な空気の中、真衣や木綿子、恭たちの関係はどのようになっていくのか・・・・。
今まで何冊か井上荒野の作品を読んできましたが、これは珍しく学園小説。
ですがもちろん爽やかさはありません。
真衣は美術教師の磯貝と、恭は保健室の養護教諭と関係を持っていますし、木綿子は皆から避けられているような存在です。
休学している演劇部部長は自殺愛好会のサイトを主催し、それに関係した他校の女生徒が自殺未遂をおこしたり。
そして学園長の死というXデーがずっと背景に流れており、これがまた重苦しい雰囲気を醸しています。
ですが、う~ん、結局なんなんでしょうね。
映画の「台風クラブ」の雰囲気を感じたりもしましたけど。
タイトルに使われている『パーシモン』という言葉の意味にもけっこう頭を使いました。
まあこれはこれで井上荒野らしい学園小説ではあります。
速水由紀子の解説はある意味あっぱれ。
小宇宙とかコクーンとか、よくぞここまで書けるなと。(笑)
ラベル:小説