短編集です。
表題作2編のほか、3編収録。
「剣ヶ崎」の主人公次郎は朝鮮人の血が4分の1混じっています。
父親は大日本帝国陸軍大尉でしたが姿を消し、行方がわからなかったものの25年ぶりに手紙をよこし、現在は韓国の軍人となって次郎の前に現れます。
そんな25年の歴史の中で、次郎は兄の太郎とともにどのような苦悩を抱えて生きてきたのか・・・・。
「白い罌粟」は他の収録作とはちょっと雰囲気が違います。
高等学校の数学教師寺石が串田という妙な魅力のある男と知り合います。
贅沢な暮らしをしていますが仕事をしている気配はありません。
なにをやっているのか奥さんも知らないというのです。
やがて何度も串田の家に通っているうちに“仕事”を手伝うことになるのですが・・・・。
立原は本書に収録されている「薪能」、「剣ヶ崎」で芥川賞候補になっているのですが、結局は「白い罌粟」で直木賞を受賞しています。
「薪能」や「剣ヶ崎」は純文学なんですけど、「白い罌粟」は大衆文学ということですね。
ミステリーっぽい雰囲気があり、高木彬光の「白昼の死角」を思い起こさせたりもします。
この作品で直木賞を受賞したのはご本人にとって本意なのか不本意なのかわかりませんけども、ご本人は「純文学と大衆文学の両刀使い」と称しておられたようなので本意なのかもしれません。
ただ私の個人的な思いとしましては、やはり「薪能」、「剣ヶ崎」で芥川賞作家というほうが立原らしいという気がします。
ラベル:小説