短編9編収録です。
江戸時代から始まり昭和の戦後あたりまででしょうか、時代をまたいでの短編集です。
どれも主人公はごく普通の庶民です。
桜の新種を作り出す男、万人が幸せになるための黒焼きを造り続ける男、役人を夫に持つ画家の女、その夫は妻に内緒で役人を辞め浪曲の小屋の呼び子をしており、などなど・・・・。
それぞれ独立した話ではあるのですが、さりげなく過去の登場人物が話に出てきます。
この作品集を読みますと、当たり前のことですが人それぞれ人生があるというのを噛み締める思いがします。
自分にとってまったく知らない人物にも人生があり、そのようないろんな人の人生が自分に関わっているということを、そうやって日々を積み重ねて人は生活しているんだということを、さりげなくじんわりと提示しています。
大部分の人は歴史に残るような功績を残すわけでなし、生涯を終えます。
しかし間違いなくその人の存在は誰かに関わり、未来へとつながっているのです。
そんなことを改めて思い知らされる実に味わい深い一冊でした。
ラベル:小説