2015年09月19日

「幻想郵便局」堀川アサコ

Cimg2657

短大を卒業し友人たちが皆就職する中、就職浪人をしているアズサ。

結局のところ人間というのはなりたいものになるのだから、あせって決めなくてもいいと両親は寛容です。

しかしなりたいものがわからない。

ある日、学校の就職課からアズサを名指しで求人の依頼が来ていると連絡を受けます。

履歴書の特技欄に『探し物』と書いたのが目にとまったとのこと。

それは山の上の郵便局からでした。

その『登天郵便局』でアルバイトすることになったアズサですが・・・・。

うん、まあ、ほのぼのとしたファンタジーですね。

いろんな人物との出会いがあり、不思議な体験があり。

作者の得意ジャンルと思われるあの世この世の話です。

個人的には読んでいて郵便局の存在や役割がどうも曖昧で。

アズサの特技が『探し物』という設定もなんだかポテンヒットですし。

この程度のための複線? と思ってしまいました。

いろいろとエピソードは詰め込んでおられるんですけどね。

キャラはけっこうよかったですけど、読み終えて「ああ、そう」という以上のものはありませんでした。

ラベル:小説
posted by たろちゃん at 03:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 『ほ』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年09月17日

「銃」中村文則

Cimg2658

橋の下で拳銃を拾った「私」。

拳銃のそばには頭から血を流した男が倒れていました。

いや、男のそばに拳銃が落ちていたのです。

状況からして男はその拳銃で頭を撃ち抜き自殺したようです。

「私」は拳銃を持ち去ります。

拳銃の魅力に取り憑かれた「私」の生活は、拳銃を中心に回り始めます・・・・。

日常と非日常、現実と妄想、それらが入り混じり、「私」の人生を狂わせてく過程が描かれています。

ついにはその拳銃で人を殺す計画まで立て、実行に移そうとするのです。

拳銃と言う魔物に取り憑かれた狂気ですね。

それは未遂に終わったものの、いつ暴発するともしれない妄想と欲望を抱えた怖さ。

拳銃を手に入れたことにより世界を自由にできるかのように思う「私」の錯覚や、自分でコントロールできなくなるような不安定な精神。

以前に読んだ「土の中の子供」にもそのような重く暗いものを感じました。

この作家の作品はまだ2冊しか読んでいませんが、なんといいますか自分の心の闇を掘り下げようとしているところがいいですね。

かさぶたをひっぺがして曝け出してやろうみたいな。

ラベル:小説
posted by たろちゃん at 03:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 『な』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年09月15日

「タタド」小池昌代

Cimg2659

短編3編収録。

イワモトは地方テレビのプロデューサー。

妻のスズコと3年前に買った海の家でほとんどの土日を過ごしています。

そこにスズコの知り合いでマイペースなオカダ、イワモトが番組で使っている女優のタマヨが集まり、食事をしながら夜を過ごします。

翌朝、イワモトはタマヨと、スズコはオカダと関係を持ちます・・・・。(タタド)

突如サーフィンに目覚めた夫と子供の時雄を連れて海に出かけた亜子。

夫が沖に出たまま帰ってきません。

ほとんどの遊泳客が引き上げる頃になって、ようやく亜子はなにをのんびりしていたのだろうと気付きます。

夫は戻ってくるのか・・・・。(波を待って)

中学時代のクラスメートである横山と偶然再会する無職の緒方。

横山は編集の仕事をしており、仕事を手伝ってほしいといわれます。

横山の自宅に連れられて行ってみると、同じくクラスメートだったサクラダが奥さんでした。

緒方は絵に45文字以内の文章で印象を添える仕事を依頼されます。

外出することもなくひたすら仕事を続ける横山夫婦と緒方・・・・。(45文字)

どれもちょっとシュールで不穏な雰囲気が漂っている作品です。

現実からふっと地すべりをおこしスライドしたような、寝起きで頭がボーッとして現実感がないような、そんな雰囲気を受けました。

名前をカタカナで書くことにより、人物や世界を平面化している感も受けます。

私は表題作よりも他の2編のほうに魅力を感じました。

「波を待って」がよかったか。

ぼんやりと夫を待ちつつ物思いに耽る亜子、砂浜で遊ぶ子供の現実、沖に出たまま帰ってこない夫の希薄ながらも引っかかる存在感。

いい配置だと思いました。

ラベル:小説
posted by たろちゃん at 03:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 『こ』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年09月13日

「味をたずねて」柳原敏雄

Cimg2660

割烹近茶流宗家の著者が日本全国を巡り、四季十二ヶ月の料理を紹介した食エッセイです。

この本は昭和56年に出版された文庫版ですが、単行本として出版されたのは昭和40年。

取材は昭和30年頃からとのこと。

料理だけではなくその土地の伝統や風俗といったものも紹介されているのですが、さすがに文庫版のためのあとがきではそのあいだにずいぶんと変貌したことを嘆いておられます。

漁場が埋め立てられてマンションが建ったり、交通網の発達により便利になったのはいいものの詩情がなくなってしまったり。

食文化自体も廃れてしまったり、今となっては取れなくなってしまった食材もあったりします。

なんとも寂しい話ですね。

この本が出た時点でそうなのですから、現在に至っては・・・・。

なので地方の食文化を記録として残すという意味では貴重な本でありましょう。

白黒ながら各章に写真も添えられています。

紹介されているそれぞれの食材や料理は現在の若者があまり喜んで食べるようなものではありません。

ですが決して失くしてはならないものだと思います。

もう一度昔から伝わる日本の郷土料理を見直したいものです。

ラベル:グルメ本
posted by たろちゃん at 03:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 『や』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年09月11日

「ビブリア古書堂の事件手帖3 ~栞子さんと消えない絆~」三上延

Cimg2661

それぞれの地域にある古書組合が加盟店のあいだで商品取引する市場、古書交換会。

それに出品することにした栞子は大輔を連れて出かけます。

ですがそこで盗難事件があります。

後日聞いた話によると本の束の中からコバルト文庫の「たんぽぽ娘」という本が抜き取られていたというのです。

落札したヒトリ書房という古書店の井上という店主は、大輔と栞子がその本の束の近くに居たことを理由に犯人は栞子だと決め付けます。

束を見て落札したときはあった、しかし手元に届いてみるとなくなっていると。

大輔はヒヤリとします。

なぜかというとその話を聞く前に栞子が「たんぽぽ娘」を店に出したからです。

タイミング的にあまりにも。

この本は栞子が市場から抜き取ったものではないのか。

大輔は疑います。

井上はビブリア古書堂を訪れ、「たんぽぽ娘」を見てやはりお前かと栞子を責めます・・・・。

今回は栞子と家を出て行った母親についてのことに触れられています。

井上はどうも栞子の母親が気にくわなかったらしい。

なので栞子にもきつく当たるんですね。

そして大輔にあの女には気をつけろとアドバイスします。

栞子は母の行方を知らないと言っていますが、実は連絡を取り合っているというのです。

おまえは騙されていると。

疑心暗鬼になる大輔。

しかし・・・・。

栞子の死んだ父への思い、出て行った母への思いがじわじわと描かれています。

posted by たろちゃん at 02:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 『み』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする