2015年10月11日

「そんな食べ方では もったいない!」山本益博

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「おいしいものを食べる」ことよりも「いかにおいしくものを食べるか」のほうがよほど大事だと著者は言います。

料理を作るのに技術がいるように、食べるにも技術がいるのだと。

20年以上(この本が出版されたのは06年。なので現在では30年以上)料理評論家という職業をやってこられたのは、何人もの食べることの師匠に出会ったからだそうです。

その多くは作る側の料理人でした。

この本ではそんな5人の師匠を紹介しておられます。

「弁天山美家古寿司」四代目内田榮一、料理研究家辻静雄フランス料理人ジョエル・ロブション、割烹「千花」主人永田基男、「すきやばし次郎」小野二郎。

内田氏は10代で出会った最初の師匠です。

辻氏に著者が影響を受けてフランス料理に興味を持ち、フランスを食べ歩いたのは有名な話。

ロブション氏を初めて日本に招いたのは辻氏です。

3度目の来日のときに日本に向かうロブション氏をロブションの店に向かう著者が乗り換えのアンカレッジで偶然見かけ、声をかけて出会ったなんて話はドラマですね。

永田氏には毎月京都に通い1年間12ヶ月の日本料理を徹底的に教えてもらっておられます。

小野氏に関しましては「次郎」といえばマスヒロ氏というくらい、かなり肩入れしてこられました。

ミシュランの3ッ星獲得も著者の影響が大きいとまで噂されたことがあります。

ですが著者が「次郎」を評価したのは昨日今日の話ではなく、料理評論家としてデビューした82年に出版の「東京味のグランプリ」ですでに最高の評価を与えておられます。

まったく一見の立場で店に飛び込み、お金がないので注文するのは6貫だけ。

最初はそんなことを続けてこられました。

お金がなくともこれはという店(料理人)にはしがみついておられたわけですね。

そして今があるわけで、そのあたりは現在において裕福な経済力と溢れる情報を享受して食べ歩いている人たちや、経費で取材しているライターとは心構えが違いました。

なので単なるミーハーな食べ歩きや取材で訪れる人たちとは店の人の見る目も違いましょう。

しかし最近の著者には当時のような雰囲気がないのは残念です。

タダ飯疑惑なんてのもありますし。

料理評論家の肩書きがある著者ですが、この人の興味の対象は料理そのものではなく、その料理を作っている人への興味です。

料理の向こうに人を見ておられます。

職人仕事への尊敬と敬意ですね。

料理人を職人として取り上げ、惚れ込んで懐に入ってその人を描くということにおいては著者は貴重な存在です。

願わくば、昔の姿勢を取り戻していただきたいと思います。

ラベル:グルメ本
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2015年10月09日

「仮面の告白」三島由紀夫

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子供の頃から女性に興味を持つことができなかった『私』。

初めて“ひりつくような欲望”を感じたのは男性に対してでした。

しかも肥桶をかついで汚れた手ぬぐいで鉢巻をした汚穢屋(糞尿汲取人)です。

その後も軍隊の兵士たちの汗の匂いに惹かれたり、豊穣な腋毛の同級生に恋をしたり。

そしてサディスティックな死に対する憧れも持つようになります。

同性愛者であることを隠しつつカモフラージュ的にある女性と付き合うのですが、相手も周りも結婚を前提と認めるようになり、『私』は追い詰められ逃げ出します。

それでも虚勢を張り続ける『私』・・・・。

作者の自伝的な小説です。

同性愛という自身の性癖を肯定しつつも外部には隠し、世間体もあり女性と交際もするがやはり失敗に終わってしまう。

そんな苦悩を端正な文章で描いています。

その後の三島の言動を見ますと、結果論ですがこの作品にすでに将来を予見させるものが全部含まれていますね。

ボディビルやボクシングでの肉体鍛錬、自衛隊への体験入隊、映画での切腹シーン撮影。

すべてこの作品にその要素があります。

そして最期は軍服(楯の会の制服)を着ての自決。

しかし昔の作家はみんな“真剣”だったんだなぁと思います。

もちろん時代もありますが、三島みたいなことをやる作家なんて今後出てこないでしょ。

やればいいってもんじゃないですけどね。(笑)

ラベル:小説
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2015年10月07日

「食べ物連載 くいいじ」安野モヨコ

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漫画家、安野モヨコによる食エッセイです。

とりたてて何がどうといった目新しい内容ではないのですが。

まえがきにも書いておられるように食通として美食を追及したような内容ではなく、『オーガニックの食品や無農薬野菜を買うように心掛けているけれど、コンビニのおにぎりも食べるしハンバーガーも大好き』、『話題のレストランのディナーはもちろん素敵だと思っているけど、場末のぼんやりした居酒屋で冷奴をつまみにビールを飲む侘しさも嫌いじゃない』という姿勢です。

そう、誰しも体にいいもの、高級な店で美味しいものを食べたいと思っていますが、そんなのばかりで食生活できるわけがない。

というか、息が詰まると思いますね。

読んでいるほうとしましても、食通が書いた食エッセイはたしかに魅力があります。

自分に縁のない世界を紹介してくださるので垂涎します。

でも共感できるのはやはり一般レベルの内容です。

売れっ子漫画家の著者ではありますが、決して食べ物自慢にはなっていません。

そこがいい。

ご自分でも料理しておられますし。

料理もせず(できず)食べるだけであーだこーだ自己顕示している若い女性も多々おられますからね。

あ、若い女性なんて限定すると差別になりますね、老若男女です。(笑)

「くいいじ」というタイトルからわかるように、著者の食べることに対しての愛着(執着?)が感じられる楽しい一冊。

本文挿絵はもちろんご本人です。

ラベル:グルメ本
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2015年10月05日

「編集長を出せ! 『噂の眞相』クレーム対応の舞台裏」岡留安則

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04年3月、黒字のまま休刊したスキャンダル雑誌「噂の眞相」。

それまで25年間にわたり編集発行人を務めてきたのが著者です。

皇室でさえ俎上に乗せる編集内容にはクレームの嵐。

内容証明、民事・刑事告訴、右翼の編集部襲撃なんて事件もありました。

そんな著者が当時の舞台裏を紹介しつつ、どのようにクレームに対応したか、メディア関係だけでなく一般企業にとってもトラブル対処の参考になるだろうと書かれた本です。

私もこの雑誌にはよく目を通していました。

面白かったですねぇ。

まずは巻頭の足立三愛氏のイラストがいつも楽しみでした。

芸能界などの男女のゴシップをヌードイラストで描いたもの。

実在の人物とは関係ありませんと注が添えられていますが、リアルなイラストを見れば実在の人物です。(笑)

柱に掲載されていた一行情報も下世話でよかった。

皇室ポルノ事件なんてのもありましたし、田中康夫と宅八郎のトラブル、筒井康隆の断筆宣言なんてのもありましたね。

読みながら懐かしく思い出すと共に、またぜひ復刊していただきたいとの思いを持ちました。

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2015年10月03日

「大阪「駅名」の謎 日本のルーツが見えてくる」谷川彰英

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駅名や地名というのはやはりなんらかの由来があるわけで。

はっきりしているものもあれば推測の域を出ないものもあります。

この本は地名研究の第一人者が大阪の駅名についてそのルーツを探求しておられます。

例えばなぜ同じ地域に「大阪」と「梅田」という二つの呼び名があるのか。

JRは「大阪」、阪急、阪神、地下鉄は「梅田」。

JRの「天王寺」と近鉄の「阿部野橋」も同じくですね。

大阪にも東京にも「日本橋」がありますが、大阪は「にっぽんばし」、東京は「にほんばし」。

その由来は。

「堺」は三つの国の堺だったとのこと。

なるほど堺市には三国ヶ丘という駅名・地名があります。

近鉄線の「針中野」は江戸時代から開業している「中野」という鍼療院が由来とのこと。

針をやってる中野さんで「針中野」。

いやあ、面白いものですねぇ。

その土地の歴史がわかって勉強になります。

posted by たろちゃん at 03:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 『た』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする