2015年11月29日

11月の一冊

今月読んだのは以下の14冊です。
  
・「告白」町田康
・「赤塚不二夫対談集 これでいいのだ。」赤塚不二夫
・「ニセモノ食品の正体と見分け方」中川基
・「残花繚乱」岡部えつ
・「戦う将棋指し」別冊宝島編集部 編
・「世界ぐるっとほろ酔い紀行」西川治
・「オモロイやつら」竹本浩三
・「二流小説家」デイヴィッド・ゴードン
・「フォーカスな人たち」井田真木子
・「独創短編シリーズ 野崎まど劇場」野崎まど
・「エバーグリーン」豊島ミホ
・「食前食後」池田弥三郎
・「剣客商売 波紋」池波正太郎
・「はじめまして、本棚荘」紺野キリフキ

「告白」、実話をもとにした力作です。

この作者ならではのユーモアが効いており、ボリュームある枚数をするすると読ませます。

「赤塚不二夫対談集 これでいいのだ。」、タイトルどおり対談集。

意外な人がゲストだったりします。

「ニセモノ食品の正体と見分け方」、偽者の食品が溢れている昨今。

このような本で知識を仕入れておく必要もあるのでは。

「残花繚乱」、エゴな女と男の狂い咲き。

まったくいやはやです。

「戦う将棋指し」、棋士のいろいろな裏話など。

やはり個性の強い人が多いようで。

「世界ぐるっとほろ酔い紀行」、世界中の酒を飲み歩いたルポタージュ。

地元の人とのコミュニケーションがいい。

「オモロイやつら」、取り上げている芸人に脈絡がないのが残念。

趣旨はいいのですが構成ミス。

「二流小説家」、アメリカや日本で高く評価された作品。

私はそれほどとは思いませんが、退屈することはなかったです。

「フォーカスな人たち」、写真週刊誌を賑わした人たちを取り上げています。

ただ顔ぶれがちょっと地味か。

「独創短編シリーズ 野崎まど劇場」、いいですねぇ、このバカバカしさ。

文学的にはまったく評価されないでしょうけど。(笑)

「エバーグリーン」、この作者としてはけっこうストレートな青春小説ですね。

それがまた切なく清々しくてよかったです。

「食前食後」、40年以上前の食エッセイ。

当時の食文化がわかります。

「剣客商売 波紋」、シリーズもいよいよ13弾。

小兵衛の老いが気になりますが・・・・。

「はじめまして、本棚荘」、独自のシュールな世界を書く作者の3冊目の作品。

ですがちょっとレベルダウンか。

今月の一冊、候補は「告白」、「独創短編シリーズ 野崎まど劇場」、「エバーグリーン」。

「告白」はさすがの町田康だとは思うのですが、やはり個人的に主人公に同情できないのが頭打ちです。

「独創短編シリーズ 野崎まど劇場」、たしかに面白い。

でも話を拡げっぱなしで尻すぼみな所が次点。

「エバーグリーン」は奇を衒わず真正面に青春を描いているところが好印象。

感動もありました。

今月の一冊は「エバーグリーン」豊島ミホということで。

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2015年11月27日

「はじめまして、本棚荘」紺野キリフキ

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昔は家賃というのは本で払っていたものだと本棚荘の大家さんは言います。

しかし今の若い人は本を読まなくなったのでしかたなく現金で払ってもらっていると。

建物の外も部屋の中も廊下も玄関も本棚だらけという不思議なアパート本棚荘。

住民もやはり不思議な人たちです。

主人公はとげ抜き師ですし、猫使い師や捨てられたサラリーマンなどなど・・・・。

この作者の本はこれで3冊目ですが、過去の2冊に比べるといまいちでした。

相変わらずシュールですがユーモアのある作風です。

しかし『本棚荘』という設定がよくわからない。

必然性がないように思うのですが。

別に本棚荘でなくてもいいんじゃないでしょうか。

タイトルにするくらいですからやはりそれを生かした話にして欲しかった。

とげ抜きやら猫使いやらサラリーマンやら、それぞれのキャラやエピソードはいいんですけどね。

3作目にしてちょっと息切れですか、紺野キリフキさん。

ラベル:小説
posted by たろちゃん at 00:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 『こ』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年11月25日

「剣客商売 波紋」池波正太郎

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父・秋山小兵衛と旧知の間柄である老剣客を見舞った大治郎。

その帰り何者かに矢を撃たれます。

かわした大治郎に斬りかかる覆面をしたふたりの曲者。

ひとりが横面を斬られ退散します。

心当たりはありませんが、剣客ゆえにどこで恨み憎しみを持たれているかわかりません。

曲者はどのような理由で大治郎を襲ったのか・・・・。(表題作「波紋」)

大治郎と曲者の関係だけでなく、そこに小兵衛の下で働く傘屋の徳次郎が面倒を見ている繁蔵とその弟の七助のエピソードが絡む構成となっています。

「夕暮れ大川橋」などは、珍しく小兵衛が感情的になるシーンが描かれています。

旧友が急死したことによる悲しさ悔しさを押さえ切れなかったんですね。

しかし旧友の切ない過去を打ち明けられたとはいえ、昔の小兵衛ならしんみりと受け止めたように思えます。

シリーズも13弾になりまして、小兵衛も歳を取ってきたんだなと感じさせる巻でした。

それは作者が意図してそのように書いたのか、作者が年齢を重ねることにより心境が主人公に投影されているのか。

おそらくどちらか片方だけということはなく、その両方が作用しているのでしょうね。

ラベル:時代小説
posted by たろちゃん at 02:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 『い』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年11月23日

「食前食後」池田弥三郎

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国文学者であり大学教授である著者による食エッセイです。

新聞や週刊誌に掲載された文章を一冊にまとめておられます。

北陸は酒とさかなが旨いからと、東京から魚津に移り住んでしまったほどの食道楽。

この本ではいろいろと食べ物について幅広く書いておられますが、第2章の「ひがしの味」ではやけに上方の味を攻撃しておられます。

なにをそんなにムキになっておられるのだろうと思いきや、巻末の解説を読んで「ああ、そういうことか」と。

週刊誌連載の企画で東と西の味を自慢し合うということだったんですね。

なので東の著者は一生懸命東を持ち上げておられたというわけ。

ほっとしました。(笑)

著者の実家は銀座の天ぷら屋だったそうです。

なので店の名前を出すことについては「つい、営業妨害になることには臆病であって」と心配りをされていたようです。

貶すのはもちろん、一軒の店を褒めても他の同業の店のプライドを傷つけてしまうと。

普通はあの店は美味しかった、あの店はたいしたことなかったと店名を出してしまいがちですが、店にとっては大きなお世話かも。

それはそれでひとつの見識だと思います。

そしてただ単に食べ物の話をするだけでなく、その周辺の話という意味で食中ではなく「食前食後」というタイトルなのだとか。

なるほどと思いました。

ラベル:グルメ本
posted by たろちゃん at 03:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 『い』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年11月21日

「エバーグリーン」豊島ミホ

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田舎でミュージシャンを目指すシンと漫画家を目指すアヤコは中学生。

別々の高校に進学することになった2人は、卒業式で10年後のこの日にそれぞれの夢を叶えて再会しようと約束します。

自信満々だったシンはその頃はすでに超有名ミュージシャンになっているので、全国ツアーのスケジュールの合間を縫ってギターしょってアヤコに捧ぐ歌を持ってきてやると。

アヤコはちゃんと本になったマンガを見せると。

そして10年。

シンは自分の才能のなさに気付き音楽に対しての情熱も薄れ、今はリネンの会社に就職し病院にシーツを運ぶ仕事をしています。

10年前の約束をぼんやり懐かしく思い出したりの日々。

約束の日が近付いてきたある日、シンはアヤコが漫画家として成功していることを知ります。

それに比べて今の自分は・・・・。

個人的に「ああ、そうだな・・・・」とじわっときましたね。

10代の頃の夢、そして大人になっての現実。

誰しもが経験することじゃないでしょうか。

「クソ田舎で一生埋もれて暮らせ!」とやる気のないバンド仲間に啖呵を切ったシンも、結局は田舎に埋もれてしまっているわけです。

しかしちょっと下に見ていたアヤコが夢を実現している。

約束の日が迫っている焦燥感。

シンは現状でアヤコと再会することができるのか。

シンとアヤコの交互の視線で語られるのですが、アヤコはこの10年間ずっとシンの動向を気にかけ、つねに音楽雑誌をチェックしてシンの名前がないか確認しています。

そして描いているマンガもシンをモデルにしたような内容です。

このあたりのアヤコの一途さというか健気さが実に切なくも清々しい。

ラストもいいですね。

まさしくエバーグリーン。

青春小説ですが、10代よりもむしろ20代後半あたりの世代が読んでぐっとくるんじゃないですかね。

もちろんそれ以上の世代にも。

ラベル:小説
posted by たろちゃん at 03:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 『と』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする