父・秋山小兵衛と旧知の間柄である老剣客を見舞った大治郎。
その帰り何者かに矢を撃たれます。
かわした大治郎に斬りかかる覆面をしたふたりの曲者。
ひとりが横面を斬られ退散します。
心当たりはありませんが、剣客ゆえにどこで恨み憎しみを持たれているかわかりません。
曲者はどのような理由で大治郎を襲ったのか・・・・。(表題作「波紋」)
大治郎と曲者の関係だけでなく、そこに小兵衛の下で働く傘屋の徳次郎が面倒を見ている繁蔵とその弟の七助のエピソードが絡む構成となっています。
「夕暮れ大川橋」などは、珍しく小兵衛が感情的になるシーンが描かれています。
旧友が急死したことによる悲しさ悔しさを押さえ切れなかったんですね。
しかし旧友の切ない過去を打ち明けられたとはいえ、昔の小兵衛ならしんみりと受け止めたように思えます。
シリーズも13弾になりまして、小兵衛も歳を取ってきたんだなと感じさせる巻でした。
それは作者が意図してそのように書いたのか、作者が年齢を重ねることにより心境が主人公に投影されているのか。
おそらくどちらか片方だけということはなく、その両方が作用しているのでしょうね。
ラベル:時代小説