2015年12月31日

12月の一冊

今月の読書は15冊でした。
 
・「ワニはいかにして愛を語り合うか」日高敏隆 竹内久美子
・「坊っちゃん」夏目漱石
・「なにたべた? 伊藤比呂美+枝元なほみ往復書簡」伊藤比呂美 枝元なほみ
・「携帯を盗み読む女」さとうさくら
・「消えた魔球 熱血スポーツ漫画はいかにして燃えつきたか」夏目房之介
・「「うまいもん屋」からの大阪論」江弘毅
・「壊れかた指南」筒井康隆
・「世界のホテルで朝食を」村瀬千文
・「海の匂い」芝木好子
・「下ネタの品格」文藝春秋編
・「私を知らないで」白川三兎
・「歴史はグルメ」荻昌弘
・「一の富 並木拍子郎種取帳」松井今朝子
・「春雷」立松和平
・「批評の事情 不良のための論壇案内」永江朗

「ワニはいかにして愛を語り合うか」、動物のコミュニケーションの不思議を紹介しておられます。

やはり人間は言葉を得た代わりに無言のコミュニケーションを失くしてしまったのか。

「坊っちゃん」、夏目漱石の代表作のひとつですね。

漱石作品の中ではいちばん読みやすいんじゃないでしょうか。

「なにたべた? 伊藤比呂美+枝元なほみ往復書簡」、詩人と料理研究家の往復書簡。

プライベートが垣間見れます。

「携帯を盗み読む女」、細かな部分にいろいろとリアリティの無さがあり。

もうひとがんばりしてほしいという印象です。

「消えた魔球 熱血スポーツ漫画はいかにして燃えつきたか」、細かな分析と模写がいい。

「空想科学読本」ぽい雰囲気もあり。

「「うまいもん屋」からの大阪論」、学者的な立場からではなく、大阪という街を書いてこられた編集者ならではの視線でしょうか。

ちょっと理屈に走りすぎている感もありますが。

「壊れかた指南」、収録数が多いだけにイマイチな作品も多数あり。

「天狗の落とし文」もこんな感じでしたかね。

「世界のホテルで朝食を」、海外の高級ホテルでの朝食を紹介した一冊。

自分には縁のない世界ですので、憧れ半分で雰囲気に浸りました。

「海の匂い」、短編集です。

芝木作品の中では可もなく不可もなくといったところじゃないでしょうか。

「下ネタの品格」、下ネタというよりは性愛論といったところ。

どうせならもっと下世話にいってほしかった。

「私を知らないで」、ハリボテのようなクラスやキヨコと高野の描き方にどうも感情移入できませんでした。

最後の持っていきようもなぁ。

「歴史はグルメ」、歴史を縦軸に、国内外のいろんな土地を横軸に。

著者の食に対する幅広い経験と知識を楽しめました。

「一の富 並木拍子郎種取帳」、狂言作者見習いの主人公と師匠の並木五瓶やおあさといった周りのキャラがいい。

ちらっと出てくる料理の描写も。

「春雷」、地味ではありますがじっくりと味わい深く読ませる立松和平の文学。

この作品もしっかりと地に足が着いていました。

「批評の事情 不良のための論壇案内」、多数いる“評論家”を取り上げ、その言動や思想について書いておられます。

こういう本があると一冊でいろんな評論家の活動を知ることができて便利です。(笑)

てなわけで今月の一冊。

迷いなくこれだというのがなかったですねぇ。

筒井康隆の「壊れかた指南」はちょっとムラがありすぎかなと。

でも「耽読者の家」、「店じまい」、「逃げ道」など、実験的な作品を書き続けてきた筒井氏がたどり着いたいくつかある内のひとつの境地なのかもしれません。

「海の匂い」は私の好きないつも楽しみに読む芝木好子氏の作品。

でも今回はフラットな印象。

立松和平「春雷」も華があるとか際立って目を引くような話ではないのですが、しかし地方の庶民の泥臭いともいえる生活をじっくりと描いておられるのが心にしみました。

なので今月の一冊は「春雷」ということで。

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posted by たろちゃん at 03:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 今月の一冊 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年12月29日

「批評の事情 不良のための論壇案内」永江朗

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世の中には“評論家”という人たちがいます。

いろんなジャンルにそういう人たちが生息しているわけですが、例えば戦争が起こると軍事評論家というのが登場します。

飛行機事故があると航空評論家という人たちが出てきます。

身近なところでは映画評論家とか野球評論家とか料理評論家とか。

名乗れば勝ち的な部分もありますが、しかし名乗るからにはそれなりの専門的な知識は必須です。

他人を納得させる説得力や分析力、広い視野もいりましょう。

この本ではサブタイトルからわかるように“論壇”における評論家を取り上げておられます。

その数44人。

基本的には90年代にデビューもしくはブレイクした評論家だとのこと。

一般に名の知られている人では、宮崎哲弥、田中康夫、小林よしのり、森永卓郎・・・・といったところでしょうか。

評論家を評論しておられるわけですが、でも一段高い場所からそれを書いているあなたはどうなの? ということにもなるんですけどね。

批判的に取り上げられた評論家たちにも言い分はあるでしょう。

小林よしのりなんて自身の批判には異常にヒステリックになりますしね。

ま、それぞれいろんな物の見方や言い分があるから“論壇”なんて場所があるわけで。

そういうのに興味がある人はご一読を。

ラベル:書評・作家
posted by たろちゃん at 03:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 『な』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年12月27日

「春雷」立松和平

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農家は皆土地を売り、その跡にマンションが建ったり中古車センターになったりしています。

それでも頑なに農業にこだわり、ビニールハウスでトマトを栽培する満夫。

父親は家を捨て出て行き、嫁のあや子と母との3人暮らしです。

満夫と父との確執、あや子と姑である母とのぎこちない生活。

そんな状況の中で満夫はひたすらトマト作りに打ち込みます。

ある日、出て行った父親がふらりと満夫の前に姿を現すのですが・・・・。

この作品は「遠雷」の続編となります。

やはり地にしっかりと足が着いているという印象が強いですね。

方言による会話や生活感のある描写など、とてもリアリティがあります。

こういうのを読むと他の小説がいかにも作り話に思えてしまう。

いや、小説なんて作り話ですのでそれが悪いというわけではありません。

でもこのようなどっしりと腰を据えた小説を読みますと、味わいと言いますか存在感と言いますか、やはり文学はこうでなくてはなんて思ってしまうのですね。

地味でまさしく土の匂いのするような小説ですが、読み応えのあるいい作品でした。

ラベル:小説
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2015年12月25日

「一の富 並木拍子郎種取帳」松井今朝子

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主人公の並木拍子郎は人気狂言作者・並木五瓶の弟子。

武士でしたが狂言作者になりたいと五瓶に弟子入りし、見習いをやっています。

五瓶から勉強のため町で話の種を拾い集め、面白い話があれば聞かせてくれといわれ、せっせと五瓶に報告する日々です。

そうそう面白い話があるわけもないのですが、中には五瓶が興味を示し、五瓶の妻の小でん、料理茶屋の娘のおあさなどを巻き込んだ事件となっていきます・・・・。

この作品に出てくる並木五瓶というのは「東洲しゃらくさし」に出てくる並木五兵衛なんですね。

気に入った作家の作品を順立てて読んでいきますと、このようなリンクがあったりして楽しいものです。

時代小説なのでミステリーという言葉よりも謎解きという言葉のほうがふさわしいと思いますが、まずその楽しみを本流とし、それぞれのキャラもいいですね。

おあさがいい位置を抑えています。

気風のいい男勝りなおあさがぎこちなく拍子郎と惹かれあうのも支流な読みどころ。

そして連作短編なのですが、各編ごとにおあさが五瓶に作る料理がちらりと紹介されます。

これがまたいい。

京都祇園の割烹「川上」が実家であり、ブログやそれを書籍化したエッセイ本で毎日の食を紹介しておられる作者ですので、やはりそのあたりのこだわりも感じられます。

グルメ小説流行の昨今でもありますしね。(笑)

現時点でシリーズ第4弾まで刊行。

楽しみに追いかけていきたいと思います。

ラベル:時代小説
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2015年12月23日

「歴史はグルメ」荻昌弘

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映画評論家だった著者。

食通としても知られた人でした。

「男のだいどこ」「男のままごと」といった料理エッセイを上梓し、男料理の先駆け的存在でもありました。

さて、この本はそんな著者が歴史や古人から食習慣などを眺め直してみようと試みておられます。

と同時にご自身の日本各地や世界各国の食経験も披露。

縦横に食文化を語っておられます。

やはり“食べる”という行為は人間のもっとも興味あるものなのだなと思えてきますね。

興味といいますか生きていくための源ですから。

そしてその土地や文化でいろんな食習慣があり、歴史によって変化もしていく。

私は食に対する興味は人一倍あると思っていますが、あの店この店のガイドブック的情報はもういい。

写真を撮ってこの店でこんなの食べましたなんてのがネットでも大流行ですが、ウンザリです。

それよりもこの本のように、それぞれの土地、文化、歴史といった観点から食を知りたいと思いますね。

と言いつつ自身はそのような行動力はないんですけども。(笑)

なのでこのような食エッセイが私にとっては貴重なわけです。

ラベル:グルメ本
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