2015年12月17日

「海の匂い」芝木好子

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短編集です。

四十歳を過ぎている秋子は係長として官庁に勤めています。

夫が戦死し、女手ひとつで育て上げた息子の宏一は大学生。

月に一度か二月に一度、海辺の研究所から秋子のいる資料室にやってくる鹿島。

房総半島の潮の香りのする男です。

仕事のあと秋子は鹿島と逢瀬を楽しんでいます。

いつものように逢瀬のあと、帰宅した秋子に宏一は言います。

「潮風の匂いがする」。(表題作「海の匂い」)

鹿島との逢瀬のときは女であり、息子の宏一の前では母親です。

しかし息子に女としてのひとときを過ごした男の匂いを気付かれて動揺するわけですね。

夫を亡くし一生懸命に育てた子供が手を離れ、女として自身の人生を楽しむ。

結構なことではないですか。

恋人の前では女ですし、息子の前では母親です。

ですがそのあたりを息子に気付かれてしまった後ろめたさといいますか気恥ずかしさといいますか。

そういうことですよね。

現代ならもっとあっけらかんとするんじゃないかと思いますが、でもいまだにこういうのって微妙かなとも思います。

その他の作品では恭子という名前の女性を主人公にしたのが数編あるのですが、それぞれに繋がりがあるようなないような。

解説によりますと作者は自身の分身を作品に登場させるときに恭子と名付けるときがあると。

なるほどそういうことであれば設定に直接的な繋がりはなくとも、作者の中では根本は同一ということですね。

ラベル:小説
posted by たろちゃん at 03:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 『し』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする