2016年01月24日

「終末のフール」伊坂幸太郎

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8年後に小惑星が地球に衝突し、世界は壊滅的な状態になる。

そんな発表があってから5年後。

当時はパニックだった世間もどうにか落ち着きを取り戻しています。

世の中も残り3年という状況の中、仙台北部の団地「ヒルズタウン」の住民たちはどのような日々を送っているのか・・・・。

連作短編集。

設定はバリバリのSFですよね。

どんな内容なんだろうと読み始めてみましたら意外と地味。

伊坂幸太郎ですからね。

さすがにSF小説ではありませんでした。

惑星が地球に衝突するという設定に関してはまったく科学的な説明はなく、8年も先のそれが確実なことなのか、対処の方法はないのかなどの話はありません。

SF小説ならこのあたりをメインに緊迫した話が進んでいくと思うのですけどね。

それよりも世界の終末を前に残された時間を人々はどのように生きるのかというテーマに絞って書かれています。

惑星衝突の発表当初は人々はパニックに陥り、どこに逃げても意味ないのに車でどこかに避難しようとして渋滞を引き起こしたり、当然のことながら開き直って強盗、レイプ、殺人などが行なわれたということも書かれていますが、それらを生々しくリアルタイムで描写しているわけではありません。

登場人物たちは皆ごく普通におとなしく生活しています。(「籠城のビール」はちょっと物騒ですが)

ただやはり終末ということが影を落としており、それが行動に“微妙”な影響を与えているとは思いますが。

「太陽のシール」では妊娠した若夫婦が子供を産むか産まないかを考える内容です。

世界が3年後に滅ぶであろうという状況で子供を産んでも、子供の命は3歳までです。

そんな前提で生まれた子供は幸せなのか。

だからといって授かった命を生まれる前に断ち切っていいのか。

考えさせられる問題ですが、そのあたりはやはり伊坂幸太郎の作風といいますか、重苦しくなく希望のある明るさで描いておられます。

ラベル:小説
posted by たろちゃん at 02:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 『い』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする