2016年02月19日

「白蝶花」宮木あや子

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4編が収録された連作短・中編集です。

大正から平成までの女性が描かれています。

家が貧しいため芸妓として売られ、年老いたやくざの組長である吉岡の妾となった菊代。

しかし吉岡と兄弟盃を交わしている組の跡取りである黒田と関係を持ってしまいます・・・・。(天人菊)

会社を潰し家を潰し、自殺した父親に妾として売られた泉美。

旦那の息子を愛してしまい、身篭ってしまいます・・・・。(凌霄花)

奉公先で和江という気難しいお嬢様に仕える事になった千恵子。

和江の力になりたいと思う日々の中で、住み込みの書生と恋仲になります。

それがきっかけで、いっときは心を開いてくれていた和江が心を閉ざしてしまいます・・・・。(乙女椿)

最後の「雪割草」の舞台は現代。

前3編がたどり着いた“今”があります・・・・。

全体の半分以上の枚数を「乙女椿」が占めています。

この作品集のメインですね。

戦争という愚かな行為が影を落としています。

愛する男が赤い紙切れ1枚で戦地に駆り出されるのです。

自分を残して、お腹の中の子供を残して。

現在では考えられないあまりにも理不尽な時代です。

作中で千恵子は思います。

特攻隊のことをこれは神であり生死を超越しているなどとという栗原大佐に対して、そう思うのならばまずは自分が回天に乗ればいい、敵基地へ散る純白の華になればよいと。

真っ当な主張です。

くだらない幹部連中はどれだけの尊い若者たちの命を犠牲にしたのか。

どれだけの女と子供たちを不幸にしたのか。

そんな主人公(作者)の主張が聞こえてきます。

そのような時代や男尊女卑の時代を懸命に生き、男を愛した女たちの物語です。

ラベル:小説
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2016年02月17日

「そうだったのか! 現代史」池上彰

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歴史もそうですが現代史もやはり知らないことが多すぎます。

知らないというよりは忘れてしまっているんですね。

学校で習っているはずのこと、その当時新聞やニュースで見聞きしていたはずのことなど、「そういえばあれはいったいどういうことだったんだろ」と今になってよくわからなかったりします。

例えばなぜ中東はつねに揉めているのか。

朝鮮半島はなぜ38度線で南北に分かれているのか。

ベトナム戦争の原因はいったいなんだったのか。

ベルリンの壁は東西ドイツの国境にあったのではなかったのか。

などなど。

以前に別の著者ですが日本史の本も読みましたけど、ああそうだったなと思い出したり初めて知ることだったり。

そのようなことを知らなくても日々の生活はできるわけですが、やはりこういうのは知識としてきっちりと持っておきたいですね。

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2016年02月15日

「異邦人の夜(上・下)」梁石日

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フィリピンからダンサーとして日本に来たマリア。

しかし待っていた現実はヤクザにがんじがらめにされた売春婦でした。

そんなマリアを愛した榎本。

マリアも日本で唯一心を許せる相手として榎本を愛するようになります。

榎本は在日韓国人で実業家の木村の下で脱税の手助けをしていたのですが、それをネタに5000万円を強請り取ります。

その金でマリアと逃亡。

しかしヤクザに捕まり木村は殺され、マリアはなんとか逃げ延びます。

整形して顔を変えたマリアは5000万円を元手にしてクラブを開店させるのですが・・・・。

「断層海流」の続編です。

前作が中途半端な終わり方だったのでこれでどうにか納得。(笑)

ですが続編というには前作とかなり内容がダブっており、結局前作の失敗を無理やり塗りなおしたかのような感があります。

内容もフィリピン人のマリアと在日韓国人の木村の2本立てになっており、それらはわずかに接点はあるものの、どうもまとまりが悪い。

やはりこの作家、構成があまり上手くないようで。

差別や偏見などと戦いながら日本で生きる異邦人というわけですが、マリアか木村のどちらかひとつに絞ってじっくり腰を据えたほうがよかったのではないかと思えました。

ラベル:小説
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2016年02月13日

「辻静雄 食文化研究の先駆者、フランス料理の伝道者」文藝別冊

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辻静雄。

辻調理師専門学校の創始者であり、料理研究家であり、自ら包丁を持つ料理人でもありました。

特にフランス料理の研究、そしてそれを日本に伝えた功績はあまりにも大きい。

いまや伝説の人といっても過言ではないでしょう。

そんな辻氏の人物をいろんな人たちのインタビューやエッセイ、対談などで紹介した本です。

現在では本場のフランスから一流のシェフが来日することなど珍しくありませんが、最初にそれを、しかも学校の講義に招聘したのは辻氏です。

ただ単にギャラを支払うから来てくれではなく、氏がフランスの料理人たちといかに心を通わせ信用を得ていたかということですね。

私生活でもダンディで非常に博学であったようです。

サロンにいろんなジャンルの著名人を招き、食事会を催していたのは有名な話。

しかしそれは単に美食を振舞うのが目的ではなく、専門学校の講師たちの修行の場であったんですね。

出される料理については厳しく指摘したといいます。

時代もあるとは思いますが、今後これほどの人は出てこないだろうと思えます。

辻氏亡きあと某料理学校の校長がやたらマスコミに顔を出すようになりました。

なぜか芸名を名乗り、経歴の詐称なども取り沙汰された人です。

よく辻氏と比較されたりもしますが、料理においての功績はもちろん、品性や人物が違います。

辻氏が亡くなられたのは1993年。

まだ60歳というあまりにも早すぎる逝去でした。

この仕事が命を削ったのは間違いないでしょう。

長生きしてもっと功績を残していただいていたならと残念でなりません。

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2016年02月11日

「ひなびたごちそう」島田雅彦

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小説を書いて17年、包丁を握って14年(執筆当時)という著者が書いた食エッセイ。

自身の食経験を語りつつ、それにちなんだレシピを紹介するという内容です。

初級編、中級編、上級編、応用編と4つの章に分かれています。

それぞれの編にさほど違いはないように思いますが。

食に興味ある者としては国内や海外の出かけた先でいろんな料理を賞味するのは当然のこと。

そして料理を作ることにも興味ある人はそれらを自分の内に取り込んで、再現したりアレンジしてみるんですよね。

ということで巻末にはレシピ集が収録されています。

著者は2週間に一度ジャンクフードを食べる日を決めているとのこと。

そうすることによって“味覚を狂わせ”、ひなびた家庭料理がいとおしく思えてくると。

たしかにまずい物を知ってこそ美味しい物の値打ちもわかるわけで。

コンビニ弁当やらファーストフードに比べ、決して贅沢ではない素材ではあるけれども手作りの家庭料理にどれだけ舌も心も安らぐことか。

しかし著者の言うそのジャンクフードというのが“学生街の安くてまずい店”や“学生食堂”のスパゲティのケチャップ炒めやミックスフライ定食、鳥のから揚げと餃子の定食、半チャンラーメンなど。

それらをジャンクフードと言われてもなぁと思いますが。

ま、手作りではなく冷凍食品で賄っているような店ということなんでしょう。

ところでこの本の中で切干大根を著者が偏愛していると紹介されていまして。

いや、私もちょうど別のきっかけがありまして切干大根やらひじきやら高野豆腐やらに興味を持っているところでしたので。

さっそく切干大根を購入して自分なりにいろいろとやってみました。

普通は薄揚げなどと一緒に煮物にしますが、やはりこれが定番でいちばん美味しいかと思います。

ですが他にも使い方はあるわけで、中華風、マヨネーズ和え、ペペロンチーノ、キムチ風、玉子焼き、などなど。

いろいろと楽しんでいます。

なにより安いですしねぇ。

まさしく“ひなびたごちそう”ですね。

ラベル:グルメ本
posted by たろちゃん at 01:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 『し』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする